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北神弓子で3万字の小説を書いた話

わざわざお読みいただき感謝申し上げます。
同志社大学文学研究会→https://doshisha-bunken.com/
作品→同志社文研 - BOOTH 『スクランブル神戸』24年2月23日掲載
※この記事は23年11月上旬ごろから12月下旬に作成

日記がルーツでした

筆者はなぜか漠然と文が好きでいつか何かしらの形で小説を書いてみたいとはかねてから思っていた。とはいえ、今に至るまで本格的な創作活動をしていたわけでもなく、完全なる素人である。
本作のきっかけは、今から3年前、2020年の9月ごろにさかのぼる。当時筆者は大学1回生だった。まだまだステイホームだったころ。家にいるなら何か新しいことをしたいと思い、それまでやってこなかった料理や語学等をたしなむようになった。その流れで、日記を兼ねた小説でも適当に書こうかと思い立った。当時の舞台は神戸ではなく京都。最初は割と真面目に、表現も文学っぽく凝って書いていたのだが、1カ月を過ぎると単にキャラクターの行動とセリフを数行ほど書いて、次のシーンへ行く、という五月雨式なものになっていった(今もそうだが)。NHKでやっていた番組「LIFE!」に出てくるコントみたいなものを目指していた。当時は本の包み紙を破いた裏に鉛筆で書いていた。この「京都編」が約30ページ続く。その間、2回生の始めに文学研究会(文研)に加入。その頃は、まさか3年近くも続いて今のような展開になるなど思ってもいなかった。

舞台を神戸へ

変化があったのは21年、2回生の夏ごろ。京都を舞台に書くことに限界を感じた。まず京都出身でもなければ、京都の町中を歩くことも全くなかった(京都の大学に通っているにもかかわらず)。
地元神戸ならニッチなところも含めて地図読んだりしているし、その方が書きやすいと思い、方針を転換。地元愛が強かったというのもあるのかもしれない。キャラクターも変更。
キャラクターは執筆中に何度も変更を繰り返している。当時のルーズリーフを読んでいると、一回登場しただけで以降ほとんど出ていないキャラもいる。一時期10-20人いたこともある。同じような性格を持つキャラが複数人いたりした。のちに会報誌向けに編集する際、それでは収拾がつかないというので、本作のように数人体制に再編された。
ちなみにこの「神戸編」から、チラシ裏や何かを印刷後の紙の裏、使用済みレポート用紙の裏やルーズリーフに書くようになった。ページ数も増え、将来的に26孔のバインダーに綴じようと考えていた(綴じるまでは紙片をまとめて2つ折りにした状態でデスクの隅に置いていた)。
このころも相変わらず五月雨式な書き方をしていた。当時は今回のように誰かに見せる予定もなかったので、筋書きだの構成だのは全く考えずに、思いつくまま書いていた。小説の書き方など調べようと思ったこともない。その日あったことを登場人物に仮託して書くだけ。
そのせいなのか、似たような議論を何度も繰り返したりしている。成長していないと言われればその通りである。当時の自分がそういう心情だったのだろう。自分なりに「正義VS正義」を適当に考えて(普段からそんな考え事ばかりする)、それに対する自分なりの結論を出して、そんな感じで書いていた。こうなると、「ダイアリー」というより、「自分の考えを記録する場」になっていった。ページを繰るにつれ内容が何やら抽象的になっている。
3回生が始まる時点で紙片は70ページに達していた。4回生の4月末で110ページ、最近10月末で130ページになった。4回生の春に就職活動が一段落し、一連の紙片をバインダーに綴じた。その後も時間を見つけては書いている。

北神弓子との出会い

現在の本作のように山本や弓子を核とするのは日記の40ページ以降である。書いていくにつれて、徐々に彼らはモブキャラから主役級になっていった、といった方が正しいかもしれない。当初は別のキャラを主役に設定していた。
そもそもなぜ神戸市営地下鉄のキャラクター「北神弓子」を作品に登場させたのか、これは偶然に近い。筆者はもともと鉄道系の話題が好きで、そういう系のニュースによく触れていた。2020年6月、地元神戸の北神急行が市営化され、運賃の引き下げ等がなされたが、そのニュースで偶然「北神弓子」を見かけた。最初は「ふぅんそんなキャラがいるのか」という程度に思っていたのだが、SNSでも彼女のファンアートが描かれ、盛り上がりを見せる中、「このキャラクターで何か書いたら面白いんちゃうか? 今自分神戸舞台に作品っぽいの書いてるし」と考え始めた。
それから書いていくうちに、彼女は「どこにでもいるただの2次元としてのキャラクター」から「性格や価値観を持ったキャラクター」へと作品内で変化していった気がする(自分が勝手にそう仕立てているだけなのだが)。

また、山陽バス様の公式キャラクター「垂水しみず」も、同様の経緯で知り、本作で使用させていただいた。

筆者と神戸、地下鉄市バス

本作を読んでいただければわかるように、市内の地名が多々登場する。これは自身の地元愛と街歩きによるものが大きい。本作の山本のように、高校生時代は地図を読むことしか趣味がなかった。大学に入ったらあちこち歩いてみたいと思っていたものの、新型コロナの影響で自粛を余儀なくされた。
実現したのは21年10月、2回生の秋の事。記念すべき一回目は名谷から須磨駅まで歩いた。そこから時間を見つけて市内のあちこちへ行った。目的地は基本的に、筆者が地図やバス路線図を読んでいて気になったところを中心に選んでいる。雑誌に載るような有名なところではなく、普段はあまり降りないような駅周辺や、「あそこ何もないよ」と言われるような住宅街、商店街が多い(なので本作でも、中央区のシーンはあまり出ていない)。

本作には地下鉄や市バスが登場する。これは、交通局のキャラクター利用ガイドラインで沿線に関する描写を出すよう努めている、というのもあるのだが、幼いころから市バス地下鉄には興味があった。何故か市バスの路線図(かつて配られていた、新聞紙くらいのサイズのもの)を広げて、この辺りには何があるのだろうか等と想像してニヤニヤしていたし(今でもそう)、中学の卒業論文は地下鉄海岸線に関するテーマだった。筆者は地下鉄沿線ではないのだが、たまの街歩きで地下鉄を利用させていただいている。
ヘッダーの写真は、23年10月に開催された地下鉄のイベントの様子。

執筆と会誌への掲載

日記を今回のように作品として公開しようと動き出したのは、23年4回生の春。所属する文学研究会では月1で会報誌を発行しており、会員たちが作品を書いてそこへ掲載していた。その頃から時間に余裕ができたので、日記を作品化して掲載しようと考えた。
上述した「京都編」の一部を、神戸を舞台にして改造しワードへ。キャラクターも変更し、神戸編と同様、弓子を登場させていた。
6、7月にはおおむね出来上がっていたのだが、当時の会報誌は有料で発行していた。作品はキャラクターを利用した「二次創作」のため、営利目的に当たり、掲載は難しいと判断。計画は頓挫し、いったんはあきらめる。

再度動き出したのが8月末(公務員試験に合格後)。放置していた上記のものを、弓子としみずの部分を全て別キャラへ変更したうえで、9、10月号の会誌に掲載した。しかし想定通りのものではなくなったため、正直あれでよかったのかと心残りがあった(あと読んでいただいたらお分かりのように、殴り書きに近いので出来がかなりひどい)。
その後、会報誌を無料公開にしようという話になり、二次創作も可能になるというので、10月から12月にかけて新造したのが今回の11,12月の作品である。
今回のキャラクター利用にあたって神戸市交通局様に申請したところ、快諾してくださった。あらためて感謝申し上げます。

本作を書くにあたり意識したのは(いろいろあるが)、「二項対立」「正義VS正義」と、それでも何故かうまく回る世界。世の中にはどちらが正解かわからない問いがたくさんある。正解がない場合もある。

自分の強み活かす  VS 目標志向
挑む追い込む  VS ほどほどぼちぼち
努力第一主義 意志は強く高く持つ  VS がんばったら負け 怠惰は美徳 
勝ち組たれ生き残れ  VS  自分は自分のままで自己肯定
みたいな

これは友人同士でもどちらの考えか割れるだろうし、NET記事や書籍を読んでいても、どっち派かは論者によってばらばらである。そのうえで、「どちらかのみ正しい」のではなく、「どちらの意見もあり」として、対立軸から降り、共存を図るのが作中の人物の世界観らしい。

イメージとしては市バスと地下鉄に近い。市バスは市バスでこまめに乗客を拾うことができる。地下鉄は地下鉄で速達輸送ができるが止まる駅は限られている。しかし両者は決して対立しているわけではない。そんな神戸の世界観を感じていただければ幸いである。

執筆は、当時のルーズリーフを参考にしつつ、新しい物語を書いている。9,10月号のようにかつてはルーズリーフの引き写しや焼き直しみたいな感じで書いていたのだが、それだと思うようなものが書けないと気づいた。次のテーマは何にしようか、舞台はどこで、誰に何を論じさせて……みたいなのを漠然と決めて、あとは書くだけ。筆が進まない時はルーズリーフをめくりつつアイデアを得る。ネタ帳みたいな感じで参照している。

今後続編も執筆し、機会があれば公開したいと考えている。

西山友子

この11,12月号を執筆中に、交通局様が「西山友子」という新キャラクターを発表した。交通局への申請の際にお伺いしたところ、職員様が作成なさったのだそう。今のところこのキャラに関しては申請は不要とのことで、本作でも使用させていただいた。今後の展開が楽しみである。

冊子を自費出版(24年2月追加)

先日、本作を自費出版し、交通局様に贈呈した。今後、機会があればサークルでも配布しようかと考えている。

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