過ぎてほしいような、ほしくないような

もう数十分したら、今日がおわる。

今日は自分にとって特別な日だ。
それも、わるい意味での。

一年前、十年来の付き合いとなる親友が亡くなった。
交通事故だった。

亡くなるまでの、一年間彼女と自分は、言葉にするのは難しいほどの複雑な日々を過ごした。
最後に言葉をかわしたときも。
自分は、彼女に嘘しか喋らなかった。喋れなかった。

人間、あたまがまっしろになればなるほど、心で思っていることと反対のことを口にしがちなもので。

通話の切れた画面を眺めながら

「次、いまの言葉を嘘だよって言えるかな」

って。

でも想像しても、彼女にそう言える自分がいつまで経っても想像できなかった。

数週間後。
ケンカ別れとも言い難い、けれどもやもやしたあの終わりからの次の電話。

また、彼女と言葉をかわす機会がやってきた、と。
そわそわしながら、電話をかけ直す(最初電話に出られなかった)

けれど、電話に出てきた人はちがう人。しかも、自分がかけたことに若干驚いてる、ような…

その時、少しだけ胸の中がざわっとした。
すごく嫌な感じが、胸の奥にこびりついたような感じだった。

わかったのは、誰も自分に電話なんてしていなかったこと。
彼女がその日の朝に、亡くなったことだけだった。

今日までの一年、いろいろと彼女との思い出が自分の傍らに有り続けた。
生活の節々で、覚えていなかった記憶も蘇ってきた。
今でも、急に涙が溢れることがある。

あの日最期に交わした、電話での後悔が自分からなくならない。
きっと、一生この後悔と生き続けるのだろう。

今日で、彼女が亡くなって、一年だ。

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