くも膜下出血発症③

救急車に乗るとすぐにまた嘔吐した。
頭痛はそれほど感じなかったが、気持ち悪さなんとも表現しようのない不快感、倦怠感、動悸が、自分の体に何かとんでもない事が起こっていることを知らせて来る。
血圧を測ると200を超えていた。心拍数も100をはるかに超えていたように記憶している。
救急隊の質問に答えながら血圧高いなーと思えるだけの意識はあった。
救急隊員が旦那さんに連絡取れますか?と聞いて来たのであー、スマホどこだと思う間も無く、救急隊員は私のカバンからスマホを取り出し、あ、ロック外さなくちゃと思う間も無く私の顔にスマホを突きつけ顔認証でロック解除しようとしてくれた。
でもガーグルベースを抱えて吐き気と戦う私の顔をスマホが認識しなかったのかロックは開かず、すると救急隊員は私の指を掴みスマホに押し付け今度は指紋認証をしようとした。
それでもスマホは開かず結局私がロックナンバーを伝えてロックを解除したが、これはいつ意識をなくしても必ず家族と連絡を取ってもらえると頼もしく心強かったのを覚えている。
スマホのロックが無事に解除され、夫の電話番号を伝えようと思ったが、そんな必要もなくスマホの着信履歴を開き、私と同じ苗字の男性をすぐに探し当て、これ旦那さん?と聞かれた。
私がはいと答えるか答えないかで、すでに夫に電話をかけてくれて、私の今の状況を的確に伝えてくれている。
救急隊員からは頭を疑っているので脳外科のある病院に行きますがいいですか?と聞かれた。私もまさに、頭を疑っていた。そしてそれが一番怖かった。
迷わずはいと答えた。

救急車は走り出し、その時子供達がどうしていたかは考える余裕がなかった。
救急車の中からドアが閉まる瞬間に見た不安そうに見上げる次男の顔は覚えている。
後で次男に聞いた話では、近所の女性が出て来てくれて、次男の携帯番号を救急隊に伝えておくように助言してくれたり、今夜の晩御飯はあるのかと気遣ってくれたらしい。
そして救急車を見送った後次男が家に戻ると、長男はシャワーを済ませて部屋でスマホゲームをしていたと、そしてその事で後から夫からしこたま叱られたとのれことだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?