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新型コロナウイルスワクチンのアナフィラキシー事例から思うこと③  死亡診断書に記載された病名は「急性心不全」だった

今回の報道やネットニュースでは、あまり取り上げられていないが、報告書を読み、改めて日本の課題だと感じたことがある。
 
それは、搬送先の病院での死亡確認後の対応だ。
搬送後の医療処置や、死亡診断に至る経緯ではない。
死亡確認後、異常死として届出ず、病名を「急性心不全」その原因を「致死的不整脈」としているところだ。(当時のニュース映像から)
報告書を見ると夫に対し「心肺停止の原因は詳細不明」と伝えているにも関わらずだ。
予期せぬこのような死亡時、原因を明らかにするための選択肢として、Ai(死亡時画像診断 おなくなりになられた後CT撮影を行う)と解剖のどちらか、あるいは併用することがある。
しかし、医療従事者ならば常識であるが、Aiは除外診断にしかならないことが多く(例えば脳出血とかない)、きちんとした結果を得るためには(もちろんわからない場合もあるが)解剖を行う必要がある。体を傷つけることに抵抗があるご家族もいるため慎重に対応すべきであるが、今回のように「詳細が不明」かつ「急変場所がワクチン接種会場と病死か事故かわからない」ことも鑑みれば、通常解剖をすすめる。そもそも、内因死か外因死かわからないのだから、異常死として警察を呼ぶべき事例である。
 
今回の事例では、通夜の席上親族である医療関係者の発言を受けて、ご遺族はアナフィラキ シーショックを疑うことになった、とあった。実は、このような事例は現実多い。急変でお亡くなりになられた場合、その場ではなんとなく医師の説明を聞くしかできず、葬儀の場で家族から死亡に至る過程を質問される中で「それは医療事故ではないのか?」とか「病院の説明はおかしい。」と言われ、あとから疑問点が出てくる場合だ。
私達医療従事者は、だからこそ、急変時の心電図モニターの印刷、きちんと時刻合わせされた時計の情報から記載された時系列の記録をきちんと残しておく必要がある。
 
医療安全管理者として勤務していた頃、「東京都監察医務院の異常死届け出の基準」を当院は遵守することを明文化した。高齢社会の現在、自宅での自然死であろうと思われる事例もある。しかし、CPAやCPAに近い状態で運ばれた初診患者の場合、来院後の画像や採血結果から内因死と判断できないケースも多い一方、ご家族も解剖までを望まない事例も多く、警察が介入するのも仕方ないと思っている。
今回の事例は、解剖を行っていればもっとわかった事実があるのだと思う。
また、今回の事例はどこを当事者とするかで難しい事例ではあったが、もっと早期に医療事故調査制度の対象として届け出るべきでもあったと思う。
 
このような事例が、おそらく他の病院でも起こっている。
この事例をきっかけに、死亡診断書の記載のあり方、内因死か外因死かわからない場合の対応について、もっと意見が活発になればいいなと思う。

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