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効果的な監査方法~予告したものと違うものをこっそり監査して見えたこと~

病院では様々な監査が行われる。
保健所監査、適時調査(施設基準を届出した医療保険機関を対象に各厚生局担当者が施設基準要件(人員、施設、設備、掲示など)を適切に満たしているかを確認する調査)など。
でもそれ以外にも院内の様々な委員会や部署が監査を行い、適切な医療が提供されているか、ルールの逸脱がないかを監査している。
 
4-5年くらい前に、医療安全の担当スタッフ達と配薬手順の監査を行った。
いつ監査に行くかは明らかにしていないが、結局当日に病棟を訪問した際に、「配薬手順を監査するので配薬をする方は見させてください」などというので、どのスタッフも監査の目的をその場で理解する。そうすると、例えば普段は指差し呼称(声に出して指さして“よし”という確認)をしていなかったとしても、監査の場ではしっかり声に出して確認している。もちろん付け焼き刃でできない項目もたくさんあるが、医療安全の場合、この指差し呼称は監査目的を理解していれば仮に普段やっていなくても当日の対応で乗り切れてしまう。
その際にふと気づいたのだが、ナースステーションから患者へ実際に配薬するまでの一連の流れをみているとアルコールジェルを使うタイミング、つまり感染予防策をどのように行っているかが分かる。
 
私たちは感染予防の為、WHO手指衛生ガイドラインを参考に ① 患者に触れる前② 清潔/無菌操作の前③ 体液に曝露された可能性のある場合④ 患者に触れた後の5つのタイミングで手指衛生を行うことになっている。
一般的な点滴をつなぐ前、おむつ交換前などにアルコールジェルを使用するのは身についていても、ついつい患者のカーテンを開ける前などどこかで手指衛生を忘れてしまうこともある。医療安全の監査の場合、スタッフは医療安全を目的に監査しているだろうと思っているため、感染対策について普段のスタッフの行動が見えるのだ。
すべてのタイミングで手指衛生を行う人もいれば、どこかのタイミングがもれているスタッフもいる。つまり、これこそが真実の手指衛生の遵守率だ。
 
これって逆もあるのではないだろうか。
感染対策の監査といって、こっそり指差し呼称をしているか確認すれば真実の指差し呼称の遵守率が分かる。
 
ちなみに、2年前の配薬手順の監査の際は、こっそり監査の手指衛生の遵守率が明らかに上昇していた。
これは、新型コロナウイルス感染症に対する対策をとるなかで、医療従事者の手指衛生のタイミングが正しく身についたからではないだろうか。
 
監査の際に、相手に監査の目的を悟られずに行えれば真実の現場が見えるかもしれない。
 
 

 

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