七夕

星は、自慢だった。
皆から綺麗だと誉め称えられることが。

だから、星は許せなかった。
自分より美しく輝く他の星が。


私の方が美しい。
その星は、ふんと軽く鼻をならした。

いつしか、傲慢な星の周りには、誰もいなくなっていった。

 

緩やかな優しい風が流れていく。
それは、人々の想いを乗せて、夕暮れの街をたゆたう。


 
 

願い事で重くなった笹の葉が、夏の夜風によって、サラサラと揺れている。
その様子を、僕は縁側から眺めている。

見上げた夜空には、星屑が優しく輝いている。
まるで、真っ黒な紙に、金箔や銀箔をちりばめたかのように。

 

今、僕が住んでいる町は、七夕祭りがわりと有名だ。
引っ越しして5年ぐらいになる。


家から駅までの道のり。
風にあわせて、さらさらと音がする。
そこには、点々と続いていく、七夕飾りがあった。

駅の東側から出て、少し歩くと商店街が見えてくる。
そこは寂れてしまっているけど、その時期は1年で最もにぎわう。
 
 

ささの葉さらさら のきばにゆれる
お星さまきらきら きんぎんすなご
ごしきのたんざく わたしがかいた 
おほしさまきらきら そらからみてる

近くを歩いている、母親と子供が唄う。
近くを歩いている、僕はそっと耳をすます。
 
 
 
 

願い事で重くなった笹の葉が、夏の夜風によって、サラサラと揺れている。
その様子を、僕は縁側から眺めている。

見上げた夜空には、星屑が優しく輝いている。
まるで、真っ黒な紙に、金箔や銀箔をちりばめたかのように。


その時、星は遠い空から、ちっぽけな人々の、ちっぽけな願いを、いつものように傍観していた。

燃え尽きていく自分の命。
その傲慢な星は、遠い青き星を見る。


青、赤、黄、白、紫。

 

最近になって、気付いてしまった。
ひょっとすると、ちっぽけな人々が想う5色の願いは、自分なんかより美しかったのではないか。

 

しかし、それに気付くには、もう手遅れだった。
  


最期に見たのは、退屈な男の、退屈な願いだった。
でもそれは、誰にも叶えられないことを、その傲慢な星は知っていた。
 
 


傲慢な星は、ふんと軽く鼻をならした。

 
 
 

僕は、毎年青い願いを書いている。
どうせ書くなら、絶対に叶わない願いを書くことにしている。

傲慢な優しさと、少しの寂しさを添えて。
傲慢なその男は、ふんと軽く鼻をならした。

 
 

 

世界が平和でありますように。

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入道雲を見ると、昔を思い出して、鼻の奥がツンとします。
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ニチニチ

ゆるゆるゆる。 何となく、何気なく、さりげなく。 子供のころに感じた空気感を、大人になった今では感じることが少なくなってしまった。 今でもふと、お日さまのにおいを感じることがある。 そんなとき、子供の自分に触れた気がして、嬉しくなってしまう。
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