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スペインタイル講師・アーティスト satomiさんインタビュー

スペインタイルとは、グラナダのアルハンブラ宮殿を代表とする、イスラムから伝わった緻密な幾何学模様やアラベスク模様と、スペインの色鮮やかな色彩がミックスされ、独自に発展した芸術性の高いタイルだ。スペインの街中では、そんな色とりどりタイルが溢れている。普通の主婦だったsatomiさんが、スペインタイルに魅了され、自らもアーティストとして創作活動を始めるまでのお話を聞いた。

 結婚後、夫の転勤で大阪、福井、仙台…と全国各地へ一緒についていった。短いときは半年、長くても2年…慌ただしい日々のなかでもトールペイント、ビーズ、エコクラフト…色々な習い事をやっていた。ものづくりや絵を描くことが幼いころから好きだった。しかし、どれもとことんはまって、すぐ飽きてしまう。慣れるとすぐまた転勤…という環境もあって、長く続けられたものはなかった。

全国を転々として10年…2012年にようやくマイホームのある大阪に帰ることができた。そのころたまたま見ていたテレビで、satomiさんの住む街が紹介され、スペインタイル教室が取材されていた。
「なに?この綺麗なタイル!!」
それからそのタイルのことがずっと気になっていた。何ヵ月か迷った末に、そのスペインタイル体験教室に申し込み、そこでスペインタイルの魅力にはまる。

スペインタイルには、マヨルカタイル、ソカラトタイルなど、いくつかの技法があるが、
satomiさんの習い始めた「クエルダ・セカ タイル」は、表面に凸凹があるのが特徴である。
鉛筆などで縁取りをした中に 釉薬を流し入れて窯にいれて焼く。焼成後は、縁取りの線が消え、モザイクタイルのように見える。
「クエルダ・セカ」とは、乾いた縄を意味し、昔は縁取りを縄(紐)で行っていたため、このように呼ばれている。

スペインタイルとの向き合いかたが変わったのは、ある美容師さんの一言だった。
美容室を変えたsatomiさん、担当になった美容師さんに「趣味は何ですか?」と聞かれた。
「スペインタイルアートっていうのをやってます。」「何年くらい?」「もう‥8年ですかねぇ」「えっ?!それってもう先生じゃないですか??」

飽き性の私がもう8年もやってたんだ‥
これ、私できるかもしれない!
習い事としてではなく、自分で教えたり、好きな作品を自由に作ったりできるかもしれない。許可を出してないのは、自分だったんだ!

 どこにでもある、美容師さんとお客さんの会話。でもsatomiさんには、神の啓示のように
深く大きく心の染み入った。やれる、やりたい!その道はあったはずなのに、見えていなかった。タイルアートの世界で新しい目標ができた。

 当時satomiさんが習っていたスペインタイルの教室は自由に作品を作らせてくれていたものの、「焼き」は講師の先生がやってくれていた。最初から最後まで自分の手でやりたい…
先生にそう伝え、講師の資格が取れる教室に入りなおすことにした。8年間積みあげてきたものをいったんまっさらにして、一から新しい教室での学びが始まった。2020年のことだった。

2020年…satomiさんが再スタートを切ったその年、コロナで教室はストップ。しかしタイル作りができる「キット」を使い、自宅でのタイル作りが始まった。自宅での作業が楽しくて楽しくて…コロナで教室に通えなくなってしまったこの時期に、スペインタイル講師、アーティストとして作品を生み出していく決心をしたのだった。世界がコロナの脅威に怯えるなかで、satomiさんの心は湧き踊っていた。
やりたいことをやれる嬉しさ…そこだけにフォーカスしていた。

 教室が再開し、講師資格を取得したsatomiさんは2021年月に屋号を「なないろタイル工房」に決める。起業するにあたり、話を聞きにいったお店の隣に「なないろスパイス」の看板をみつける。それはカレー屋さんだった。
そのお店に入った瞬間、「こんなお店でワークショップできたらいいなぁ。テーブルの配置も思い描いていた通り!何よりなないろ…これはご縁としか思えない」…名刺代わりに持っていたタイルを見せて、思いを語り、後日再度連絡を取ったところ、「ワークショップ、どうぞやってください」とのお返事が…!!
2021年11月、「なないろスパイス」のお店を借りて、初めてのワークショップを開くことになる。

間借り店舗の「なないろスパイス」はその年いっぱいでお店の契約期間が終わり、satomiさんのワークショップもその1回のみ…となるはずだった。
しかし、次の借り手がキャンセルとなり、そのまま営業を継続できることになったのだ。

その後、satomiさんは第二回、第三回とワークショップを開き、現在も創作活動と、スペインタイルの指導と普及に力を注いでいる。

satomiさんに「自分の道をみつけるために大切なポイントは?」と聞いてみた。

「自分に許可をだすこと」
「完璧を求めすぎないこと」

美容師さんの言葉で、気付きをえたsatomiさん。
それを流さずに、きちんと自分の気持ちに向き合って高みを目指す決心をした。
これは見えない存在からのメッセージといってもいいかもしれない。私たちも時にこんなメッセージを受け取って、でもそれに気づかなかったり、なかったことにしてしまうことはないだろうか?

satomiさんのインタビューをさせていただいて感じたのは、とにかくスペインタイルに携わることが楽しくて仕方がない、作ることが大好きだというエネルギーだ。その大好きのパワーが扉を開き、ミラクルと思える偶然の連続を呼んだのではないだろうか。そんなsatomiさんのこれからの夢は…

「伝統的なスペインタイルのスタイルに拘らず、日本人としての感性を盛り込んだオリジナルの作品を生み出し、それを喜んでくださる方の手に届けること」
「講師として、頭の中で想像したものを形にできる楽しさ、スペイン釉薬の美しさをもっと伝えていくこと」
「姉とのコラボレーション」

satomiさんのお姉様はインスピレーションアーティストのyumiさんなのだ。yumiさんが海外から初めて出展の話が来たときも、satomiさんが背中を押した。お二人はお互い刺激あい、高めあえる、かけがえのない存在だ。
 いつか姉と同じ場所で一緒に出展し、笑いあえる日を楽しみにしている。

 自分はやっていい、大丈夫だ、そう決めてみよう。自分で自分に許可を出してみよう。
腹を決めたら、行動が変わっていく。
その行動が未来を変えていく。

✳️タイトル上部の写真は、satomiさんの新作のスペインタイルです。

✳️satomiさん(なないろタイル)のInstagram
https://instagram.com/la.brisa11?igshid=YmMyMTA2M2Y=

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