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サッポロ × オフ会 × HILOSHI前

 9月のある日。秋晴れの空を新千歳空港に降り立った。

 目的はただ一つ。人生初のオフ会なるものに参加するためだ。お会いすることになっているのは空条浩さんとそうまさん。noteや小説投稿サイト「カクヨム」で知り合った北海道出身・在住のお二人だ。

 お二人ともかねてからSNS上では交流があったが、「お酒でも飲みながら創作談義でもしたいですね」「いいですね」「そしたら私、写真係やります」といった感じで、気づいたらトントン拍子でその日を迎えていた、そんな感じだ。

 同郷の創作仲間と、故郷の地で、お酒を酌み交わしながら、小説の話をする。好きな人たちと、好きな場所で、好きなものを飲みながら、好きなことの話をする。ワクワクしないわけがない。


故郷とは何なのか

 同郷、と書いたが、今回訪れたのは札幌で、私は北海道・十勝の出身だ。同じ北海道ではあるが、距離にして200kmくらい離れている。仮に東京から中央道に乗ったとすると長野の松本くらいまで行ってしまう。

 これは果たして同郷なのか。東京出身者が名物を訊かれて、松本城や信州そばとは答えないだろう。

 故郷というのは、それを捉える距離感で変わる。海外旅行に行って出身を聞かれれば「日本」と答える。都内で初めて会う人に訊かれれば「北海道」と答える。北海道出身者が相手なら「十勝」や「帯広」だ。

 そういう意味において、札幌(あるいは、帯広以外の北海道の地)というのは私に不思議な感覚をもたらす。外から見れば故郷にほかならないのだが、大通公園でビールを片手に暮れなずむ空を見上げると、どこか見知らぬ地を訪れている気分になるのだ。

 とどのつまり、故郷というのは心の拠り所なのだろうと思う。飛行機が千歳に着けば「帰ってきた」と感じるし、いつかは再び帯広の地で暮らしたいと思うし、物書きとして北海道を舞台にした作品を残したいと思う。

 私にとっての故郷は北海道であり、十勝であり、帯広なのだ。


「角度」の創作家

 しまった。ここまで一人で勝手に感傷に浸って故郷について語ってしまって、一緒にオフ会をしたお二人が完全に置き去りだ。オフ会レポートになっていない。

 ただ、私にとっては、お二人に会うために札幌に行ったこと自体が一つ大きな意味があることだったのだ。これが例えば、都内で行われていたとしたらここまでの感慨はなかっただろう。

 とは言え、オフ会なるものに自分が参加する日が来るとは思っていなかった。参加するとは思っていなかった理由はいくつかあるのだが、話し始めると長くなるので、参加しようと思った理由を述べることにする。

 それはお二人の作品にどこか自分と共通した価値観があるように感じたからだ。執筆をするうえで土台としているものが近いのではないかと感じたのだ。一言で言うと、小説とは「日常をいかに切り取るか」であるということ。その「角度」だとも言える。

 ラノベや異世界モノが繁栄を極めるWEB小説界隈においては、世界観や登場人物のキャラ設定がいかにオリジナルか、あるいはキャッチーかということに重きが置かれすぎている気がしてならない。

 もちろん設定や世界観が平凡であるよりは、ユニークであるに越したことはない。だが、本来、小説というものは素材そのものではなく、素材を「どう書くか」「どう語るか」にその本質があると私は思っている。それが我々が「物書き」であり、我々が生み出しているものが「物」である所以だ。

 そういう意味において、空条さんとそうまさんは「どこをどう語るか」というその角度を重視する創作者であるように感じる。


SNSを飛び出したら、現実が豊かになった

 というわけでぜひお会いしてみたいと思い、オフ会の日を迎えたわけだ。やっとオフ会の話だ。前置きが長すぎる。

 待ち合わせは、この記事のタイトルにもある「HILOSHI前」。最初にお二人からその場所を提案された時は、「いや、ヒロシって誰だよ」と思った。試しにGoogleマップで検索したら出てきた。

 HILOSHIというのは大きなテレビの名前で、「HILOSHI前」というのは「ハチ公前」みたいなものなのだろうと納得した。「HILOSHIって何?」と訊くのは「ハチ公って何?」と訊くのと同じだ。訊くだけ野暮だ。

 緊張の対面を果たした後は、空条さんの案内(通称:空条ナビ)でオシャレなブックカフェで創作の話をし、そうまさんが見つけてくれた「さっぽろオータムフェスト」でビールを飲み、街中のバーで人生の話(?)をした。

 当日の流れや写真はそうまさんがnoteに上げてくれているし、話した内容は空条さんが上手にまとめてくれている。

 写真は楽しそうな様子が伝わってくるし、私が言ったセリフなんかは実際の100倍いい感じに引用されている。

↓当日の流れと写真はこちら

↓話した内容はこちら


 こんなに他力本願でいいのだろうか。私は何を書こうかと迷った結果、オフ会を機に思ったことを書くただの独り言になってしまった。また「そうじゃない」感じの記事(通称:じゃない系note)の完成だ。


 何はともあれ、とても密度の濃い札幌の夜を満喫させてもらった。実際にお二人にお会いしてみて、作品から抱いていたイメージと同じ部分もあったが、思っていたのと違った部分も多かった。(どこがかは内緒)

 それこそが、SNSが越えられない「壁」なのだろう。

 好きな人たちと、好きな場所で、好きなものを飲みながら、好きなことの話をする。そこにワクワクする気持ちがある。実際にしてみて、イメージどおりだったことがある。思っていたのと違う新しい発見がある。会う前と会った後で、自分の人生における登場人物が少し変わる。自分の物語が変わる。

 ネットから一歩踏み出すことで、現実が少し豊かさを増した。そんな札幌の夜だった。



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