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『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』読了

私がオードリー・タンという名前をはじめて聞いたのはいつだったか。5年前?彼女が台湾のデジタル担当大臣に就任した6年前?とにかく、ビジュアルが男性なのに名前がオードリーであること、35歳という若さで大臣になった現役ハッカーということが気になって気になって、メルマガで流れてくる彼女関係の記事をひたすら読み漁っていた。

注:ハッカーというと他人のコンピュータに不正アクセスをするような悪いイメージがあると思うけど、本来はコンピュータやインターネットなどについて高度な知識や技術を持つ人の意味です

なので、この本を手にしたのは必然。彼女のことを知りたいと思ったから。そして、著者の近藤弥生子さんにも興味があったから。

今日読み終えてみて、オードリーさんのこともだけど著者の近藤さんのことも大好きになった。日本でオードリーさんは「天才」だの「IQ180のカリスマ」だの取り沙汰されるけど、近藤さんが丁寧に取材して執筆されたこの本からは、オードリーさんは色んな困難にひとつひとつ向き合い、丁寧に今現在の人格を築いて来られたんだなぁと感じられた。

カリスマとかリーダーというよりは、いつも隣りにひょいと座ってニッコリ微笑んでくれるお姉さん、という感じ。みんなと同じ立ち位置で、温かく応援してくれる。
例えば、勢いよく道を転がっている車輪があって、その車輪が池に落ちてしまいそうな軌道を走ってる。そんな時、オードリーさんならそっと手を伸ばして別の軌道を付け足して、車輪が自らより良い方向へ走ってゆけるように導いてくれる。

あーだこーだ口出しするでもなく、仕事を取り上げてしまうでもなく、あくまでその人の主体性を保ちながら、そっと手を差し伸べて良い結果へと繋げてくれる。上司とか先輩とかが本来あるべき姿、なんじゃないかな?
とにかく彼女から学べることは多いと思った。

著者の近藤さんがまた素敵で、飾らない等身大のままでオードリーさんに質問を投げかけてくれる。そして丁寧に答えてくれるオードリーさん。近藤さんのそんな姿勢が本全体を構成してるから、私たち一般人でも身近に感じて共感できるし、すぐにでも実践できそうなヒントがいっぱい詰まってる。
本のタイトルにあるように、IQがどうこう天才がどうこうよりも、大切なことを教えてくれる。それは仕事だけじゃなく、家庭運営や子育て、自分の人生運営にも活かせるものばかり。

私が常々言ってることで大事にしてること。
「好き」と「楽しい」を大切にすること。
オードリーさんも「まず楽しむこと」が使命感や情熱より大事だと仰っていた。使命感や情熱は一定時間過ぎると終わってしまうけど、楽しさを原動力にすればずっと続けることができる、と。うん納得。

「for〜(〜のために)」ではなく「with〜(〜と共に)」というスタンスを取ること。
社会貢献し続けるため、またインスピレーションを枯らさないために、睡眠は1日8時間以上必ずとること。
受動的な clicktivism からより主体的な hacktivism へ。

誰にでも見えるように、あらゆることに透明性を重視すること。
ひまわり学生運動においては、運動を単なる抗議活動で終わらせないために、現地で起きていることを逐一ライブ配信して誰もが見られるようにしたのだとか。
大臣である彼女の部屋もオープンで、毎週水曜日は誰でも行って彼女と話すことができるんだって。すごいよね。

この本でまた、私は全然知らなかった台湾の文化の一端に触れることもできた。なんだろう、とても寛容で温かいイメージ。羨ましいなと思ってしまうけれど、日本にだってそういうところ、あるんだからね。メディアが視聴率やクリック数を取れるようにスキャンダラスな部分ばかり見せてるだけで、日本人が本来持っている繊細で思いやりのあるところ、隣同士での助け合い精神とか、大切にしてる人はたくさんいる。報道されないだけで。

この本を読み終えて、私の心にも小さなオードリー・タンが生まれた音がした。

この手の本はビジネス書として紹介されることが多いけど、声を大にしていいたいのは、ビジネス書はビジネスマンだけでなく家庭の主婦にも読むべき本だよー!ということ。だって、家族という会社を切り盛りするのは、家庭の主婦でしょ?人生の経営者たる人間(子ども)を育てるのも家庭の主婦でしょ?同じなんだよ。

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