母と漫画の話

漫画を教えてくれたのは、母だった。以下漫画の話。漫画あんま分からないよ!という方、すいません。我慢してください。以下たくさん固有名詞出てきます。

幼少時分。毎晩、母は絵本の代わりに「シティハンター」と「ドラゴンボール」のセル編を読み聞かせてくれた。「シティハンター」は中期から後半前までの、人情話がメインになる話をチョイスしてくれていた。エンジェルダストは省いた。

「ドラゴンボール」に関しては、そもそもその前を知らないので大変だった。悟空は心臓病で居ないし、知らない、訳わかんない脳みそ見えてるおじさんとかどんどん出てくるし。正直聞いてらんなかった。後半になると、結構グロい描写が多かったため、その後からは、急に悟飯がサタンシティで高校生活を送る。ブゥ編の間に差し込まれた平和な話をずっと読んでくれた。普通の子供は楽しみのはずの母の絵本読み聞かせの時間は、俺は何も楽しくなかった。

自分で漫画を読めるようになると、「こち亀」に似ていると言って「美味しんぼ」「まんだら屋の良太」「ブラックジャック」「クッキングパパ」「じゃりん子チエ」「ゴルゴ13」を買ってくれた。そもそも「こち亀」を知らないのに。

その頃、フランスの幼稚園に通っていたので、日本の漫画の情報は遮断されていた。なので、その渋漫画達が、流行なのだと思う外なかった。「まんだら屋の良太」を日本で一番人気漫画だと思って幼少期を過ごした。

フランスの漫画を要求すると「タンタンの冒険」と「アステリックスとオベリックス」を与えられた。知らないだろう。「アステリックスとオベリックス」。薬飲んでハルクみたいな力得た大味ヴァイキング漫画。

ある日、「こち亀」が読みたいと母に言ったら、似てる漫画と言って「少年アシベ」を渡された。母は、基本こち亀をベースにした漫画選びをしてきた。それなのに、「こち亀」は読ませてもらえなかった。反発からなのか、結果高校生くらいまで「こち亀」を読まなかったな。何を何と捉えてこの漫画達に相互性を見なしていたのだろうか。殺し屋だし、料理漫画だし、東北のスケベ旅館の息子、関西下町の人情話。まあでも、「こち亀」に全部あるな。似てるっちゃ似てるのか。

ある日、母が「スラムダンク」にハマった。こっそり読んだ「スラムダンク」は身震いするほど面白かった。「アステリックスとオベリックス」「まんだら屋の良太」で育ってしまったから、考えられない衝撃の面白さだった。読んでる時ずっと大きな叫び声出してた。それくらい衝撃だった。

だが、これは母の悪癖なのだが、おそらく漫画=こち亀と捉えているので、母は恐ろしい漫画の買い方をした。1〜5巻の後、23巻、31巻が家にあった。意味がわからなかった。陵南戦の後、桜木がもう坊主なのだ。意地でも31は読まなかったが、母の中で、最終巻を読んだ時点でスラムダンクは終わっていたので、続きは買ってもらえなかった。駄々をこねたらネタバレされて、大泣きした。だから「ドラゴンボール」もセル編までしかなかったのだ。「ドラゴンボール」の続きを要求したら「ドクタースランプアラレちゃん」を買ってこられてしまう。何も上手くいかなかった。その時から薄々気づき始めたのだが、母の言う、「こち亀」みたいな漫画とは、1話完結の漫画を指すのではないかと気づき始めた。

ある日、母に「こち亀ってどんな漫画?」と聞いたことがある。すると母は「どっから読んでも良い漫画。」と答えた。確信に変わった瞬間でもあった。多分母は、「こち亀」すら読んだことないのではないだろうか。どっから読んでも良い漫画として「こち亀」を捉えてしまっていた。それはもう概念だ。

こうなると頼るのは父なのだが、父はもっと話が通じなかった。日本とフランスを行ったり来たりするのは父なので、そういうお土産的なのは父に頼むしかないのだが、こいつはマジで話が通らなかった。「スーパードンキーコング3」を頼んでも、ゲームボーイの「テトリス」買ってくるし、違うといえば今度は「風来のシレン」を買ってくる。

無理なのだ。ゲームはゲームとしてしか捉えてない。ガチャガチャだってもうちょっと確率高い。そんなやつが「スラムダンク」の6巻から先を買ってこれるわけがなかった。そもそも、俺はその頃の父を、夜になると女の裸の絵をたくさん書いてる働かないおじさん程度にしか思ってなかった。

小学校高学年で、生まれて初めてお小遣いを貯め、自分で買った漫画は「ドラベース」の1巻。別に買うなとは言われてないが、勝手に買ってしまったので、すごくドキドキしながら、ドラベースをトイレの戸棚に隠して、トイレに行くたびずっとこっそり読んでいた。おそらく母にバレたら怒られると思って、ずっと隠していた。

トイレの戸棚。子供が隠す場所なんて大人が2秒で見つけれる場所なのだ。

中学生の時、隠してた「ふたりエッチ」1、2巻を、葬式に参列するため数珠探してた母にみつかり、大泣きした話はまた後日にします。

ドラベースの2巻が出た時、読みたかったが、お小遣いもなかったし、買えずにいて、仕方なくずっとドラベースの1巻を読んでたら、ある日トイレの戸棚に2巻が置いてあった。なんだかんだ優しい母と漫画の話。

後日、母が入院して、父が家に来た時、汚いと言う理由でトイレにあった漫画は全部捨てられて、大喧嘩した。本当に話にならない父親の話でもありました。

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