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透明なゆりかご、ふたたび

テレビ番組を録画して観たあとは消去するものだが、『透明なゆりかご』にいたっては、消せないでいる。でも、再度視聴する勇気(と表現でいいか迷う)は、ないかもしれない。

「死」とともに「生」に関わるときもドラマが存在する。かけめぐる感情は様々だが、すべて軽く扱われるものではない。

生きるって、命ってなんだろう─「わからない」と答え、また考え続けるのだろうなと思う。たとえモヤモヤとしても、向き合って考える機会を失わないようにしようとガラにもなく真剣にさせられるドラマだった。

深刻に陥らせるのではなくて、真剣に真摯に。主人公のアオイを演じる清原果耶ちゃんは、振り幅のある演技を自然にこなす、注目の若手俳優だ。

オロナミンCのCMよろしくコミカルな場面もあるが、ADHD(注意欠陥多動性障害:不注意や衝動性のある行動が目立つ症状)と診断された過去から、快活な表情は意外と少ない。それでも彼女が画面に現れると、さわやかな風が吹く。温度と潤いを漂わせて。

脇をかためる俳優群もすばらしい。アオイがアルバイトをする婦人科の院長・瀬戸康史さんは「これが本当にやさしい人なんだ」と実感させてくれるし、アオイの母・酒井若菜さんは不安定さをコントロールできるようになった様子をリアルに表現し、水川あさみさんは多くの人が彼女に期待するキビキビとした看護師を演じている。

再放送ホヤホヤの第9回で印象に残った一つが、休み明け早々、性被害の訴えに立ち会った水川さんに対して看護師長・原田美枝子さんがねぎらいの言葉をかけるシーン。「つらかったわね」という原田さんに「つらいです」と絶妙な空気で答え、「でもこれが私たちの仕事なんですよね」と続けた水川さんが良かった。

別のところで耳にした「私たちは、たまたま生きている」という言葉が、いますごく響いている。

8/9(金)が最終回の再放送。同じように録画して、いつかまた、フッと観られる日が来るといい。

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