熱風ラオス風、冬から春へ、雨が待ち遠しい乾いた日々

 3月、ラオスからのフェーン現象により乾いた熱い風がベトナム北部に届く。井戸水と農業用貯水池のおかげで、僕たちの畑では作物に潅水することができるが、近所の人々は雨が降るのを今か今かと待ちわびている。

 この地域では換金作物としてとうもろこしを雨に合わせて植える。棚田は、とうもろこし畑に一変してしまった。山の斜面も森を燃やして畑にし、とうもろこしが植えられる。木のないはげ山は強い雨が降ると土が流れて少しづつ岩肌がむき出しになる。

 せめて山の上の方の木だけを残しておけば、太陽光線を浴びた木々がすくすくと葉を茂らせ、乾燥と土が流れるのを防ぎ腐葉土を少しづつつくってくれるのに。共同体がしっかりしているモン族の村々では、山の上の方は切らないという掟を守っている。無法なエリアは、次々とはげ山になる。

 この間、バイエルン社(昨年モンサントを買収した)のエージェントがとうもろこしの販売促進にやってきた。
除草剤、化学肥料、農薬、とうもろこしをセットで紹介してくれて大変商売熱心だ。

 バンホーから100km程ハノイ方面に下ったホアビン省にCP 社(世界最大の穀物メジャー)の飼料工場がある。とうもろこしは芯を残して実だけ外し乾燥させ、この飼料工場に運ばれていく。抗生物質を混ぜ、ひよこや豚の飼料がつくられ、養鶏、養豚農家へ販売される。

 ひよこはフランスの卵鶏、イサブラウン種。少ない面積で効率良く卵を産ませるためのゲージ飼いのやり方も指導してももらえる。

 狭いゲージで生活するとストレスが溜まる。コッココッコと啼きながら雌鶏達がうらめしそうにきょろきょろと首を振りつつ、エサをついばんでいる。雄鶏はひよこのときに処分される。肛門の形で見分けるそうだ。オスとメスどちらが幸せなのか。

 肉鶏はひよこから45日から60日でぶくぶくに太らせ2㎏くらいになったところで売られていく。あまりにも太り過ぎてて歩けないので、寝そべりながら飼料をついばんでいる。

 肉鶏にしても卵鶏にしても、病的な環境状態で育てられるので、普通であれば病気になって死んでしまうところを抗生物質で病原菌を殺してなんとか出荷まで生かされる。

 工業鶏(Ga Cong Nghiep)は市場価格で70,000VND /㎏で、それに対して農家で走り回っている放し飼い鶏(Ga taという)は130,000VND/kgで売られている。スーパーではCPの卵がきれいにパックされて消費者の方々が来るのを静かに待っている。

 都市のスーパーに並んでいる鶏肉、卵など消費者の人々を支えている食料はこのように生産され、その養豚業者や養鶏業者の購入する飼料は、除草剤が散布されるとうもろこし山の風景によって支えられている。

 2018年10月に行われた有機農業学会でアメリカ人の宣教師であり正義学の先生から「フードシステムは暴力か?」という質問があった。日本ではあまり感じられないけれど、ここベトナムでは明らかに、YESと思える。

 モン族やムオン族の人たちが両肩に農薬散布機を担いで、せっせと勤勉に除草剤を巻いている。この時期は乾燥しているので、雑草はすぐに枯れていく。この国は枯葉剤には痛い目を見たんだけれどなあ。

 栗の木を植えてみようか。ハノイに住むフランス人のローレンツと話している中で出たアイデア。
ベトナムには栗の原種がある。それにフランスのマロンを接ぎ木したら産業になるのではないか。
桃栗三年柿八年というくらいだから、3年くらいで育つだろう。4月~7月までフランスに帰るので、戻ってくるときにマロンの枝を持ってくる約束をした。

 もう2度と原生林は戻らないだろうけれど、せめて山に木が植わっている状態にしたい。
ハノイにあるW社のOさんが、農場応援ツアーを企画してくれた。
消費者の人といっしょに農場に栗の木を植えてみよう。


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