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家庭用真空パック機 活用の手引き

2019年2月に家庭用真空パック機(フードシーラー)を導入して早半年。もうこれ無しの生活に戻れないくらい日々の生活に溶け込むアイテムとなりました。

なぜそんなに重宝しているかというと、シーラーを活用することによって、常温・チルド・冷凍の全ての保存環境において、食品の保存期間と保存品質が劇的に改善されるからです。

生の塊肉の腐敗を大幅に遅れせることができ、冷凍した食品が冷凍焼けや霜を食らうことも無くなりました。乾物の酸化劣化ともおさらばです。

保存が効かせられると分かったため、1度の調理で仕込める量も増やすことができ、1食あたりの調理時間とコストの引き下げに成功。時間が浮かせることができました。

調理シーンでの出番は限定的ですが、保存シーンでの威力は計り知れないものがあります。たとえるなら、冷蔵庫のスペックが大幅に上がるようなイメージです。頻繁に自炊をする人であれば、まず持っておいて損はないでしょう。

そんな極めて有用なシーラーですが、残念ながら魔法の道具ではありません。

保存目的に合わせて「正しく」使って初めて威力を発揮します。使う人間の理解が要求されるアイテムです。

ただシーリングすれば何でも良い感じに保存できる、というほど単純ではありません。が、この点を誤解している方が多い印象を受けます。この点を解説したコンパクトな情報源がないから無理もないと言えばそうなのかもしれません。

そこで本稿の出番です。潜在的に膨大なパック機の用途を家庭目線に特化してまとめました。
使い方についての大まかな結論を書くと

・シーラー本体の見かけのスペックよりも袋等の周辺アイテムの選択が致命的に重要
・保存環境や保存目的に応じて使用する周辺アイテムを選ぶ必要がある

ということになります。

どんなシーラー本機を選ぼうとも、実現される保存品質は上記2点の制約を必ず受けます。その意味で、シーリング保存の本質はこの2点にあると言っても過言ではありません。

本稿を読むことで、保存環境や保存目的に応じて具体的にどのアイテム(商品)を使えば良く、そのアイテムをどう入手すればよいか分かるようになり、すぐに実践に移れるようになります。

ぜひ快適なシーリングライフを手に入れてください!

ノズル式とチャンバー式の違い

真空パック機の特徴を理解するのにまず必要なのは脱気方法です。これにはノズル式とチャンバー式があり、主に前者が家庭用、後者が業務用として使われています。

包装袋とシーラーの専門店テンポアップにコンパクトな記述があるので引用します。

ノズル式真空脱気シーラー

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比較的お手頃な価格で手に入れることができるのが、こちらのノズル式のシーラーです。

真空する際に袋の開口部にノズルを差込み、スポンジで袋の開口部を押さえ、 ノズルと配管した真空ポンプで袋内の空気を脱気し、最後にシールする方法です。真空の際に、ノズルの先端部分のフィルムがくっついてしまうとうまく脱気できないこともありますが、コツをつかめば短時間でしっかり真空できます。

家庭用の真空パック器や業務用としても幅広く利用されています。

チャンバー式

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チャンバー式は、真空にできるボックス(チャンバー)内に食品などを入れた袋をセットし、ふたを閉め、ボックス内部を真空にした状態でシールする方法です。

ボックス内全体を真空にし、空間全体で空気を抜く、といったイメージです。かなりの高真空が得られます。また、液体物の入った袋を真空する場合に最適です。大きいポンプを用い、非常に高い真空度で真空しますが、その分ノズル式に比べて時間がかかります。

シール部はボックス内に設置されています。なお、袋のサイズはボックス内に入る大きさをお選びいただく必要があります。

ノズル式の記述について2点ほど補足します。

真空の程度は限定的
ノズル式でも「しっかり真空できます」との記述がありますが、これはかなり限定的な効果しかないと思いましょう。

空間ごと脱気して気圧を下げるチャンバー式と異なり、ノズル式は袋の中身から無理やり空気を吸い出しているだけで、脱気方法としてはかなり不完全です。

エンボス加工など、空気を抜きやすい補助的加工が袋に付いていればまだマシですが、非常に多くのケースにおいて、袋の柔軟性や食材の厚みや形状・袋に対する大きさなどの様々な要因から、肉眼で確認できるレベルでも脱気は完全ではありません。

(そのため、ノズル式は「真空パック機」というよりも「脱気シーラー」という名前の方が実態に近いです。以下では、ノズル式に対して後者の呼び名を使うことがあります。)

吸引力≠真空度合い
個々の商品によって吸引力に差があり、それはkpaという数字で表現されます。ノズル式の脱気方法を考えると、この数字が実現される真空度合いを規定すると思いがちですが、そうではありません。

というのも、前述の通り、脱気の程度は(脱気シーラー本機の性能以外にも)袋の性能や食材形状などに強く依存するためです。

たとえば、200gの珈琲豆をシーリングしようとしても球状の豆同士の隙間の空気は抜けきりませんし、厚みのある直方体状の肉をシーリングする場合は袋内面の摩擦で袋が食材に密着するまでに至らず食材周りに大きな空胞が残ることも多々あります(そういう場合は食材の位置を変えたり空気を手で追い出したりする)。

ハードの性能と同じくらい袋と食材の組み合わせ、それらを上手に補助するアドリブが重要に感じます。私は家庭用ノズル式としては強力な吸引力を持つモデル(80kpa)を使っていますが、吸引力に関してはオーバースペックではないか?というのが正直な感想です。スペック上の吸引力を重視するよりも次に述べる利用可能な袋の選択肢を重視する方がよいかと思います。

袋の選択肢:抑えるべき特徴3つ

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