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元俳優のジョブチェンジ系クリエイター林 和哉【そこらへんのゲーム関係者 vol.3】

こんにちは、そめ吉です!「そこらへんのゲーム開発者」今回は元ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンで異色の経歴を持つ林 和哉さんに筆を取っていただきました。2024年3月現在求職中とのことですので、ご興味ある方はsupport@nidan-jump.comまでご連絡ください!


こんにちは、林です。僕は取り組む仕事がコロコロ変わってきたジョブチェンジ系の人間です。でも、根っこにはパソコンとゲームというものがずっと付いてきてました。

ゲームに初めて触れたのはインベーダーゲームで、小学校低学年の時にマイコンが流行り出し、数多の雑誌が創刊、ゲームは自分で作るものだと教えられました。当時は店頭のPC6001、PC8001などさわり放題。大らかな時代でした。5インチのフロッピーディスクにプログラムを残して、あれこれ研究してました。

中学生1年の頃、ソニークリエイティブプロダクツがソニーの独自パソコンSMC777向けにゲーム開発をする人を機材を一式貸し出しで募集していて、自分用のパソコン欲しさに企画書を提出、晴れて機材を獲得したのでした。まさにこれがゲーム業界に入った瞬間と言えるかもですが、中学生に機材一式を貸し出して完成するまで放置してくれるという、すごい時代でした。

ソニーの独自パソコンSMC777

BASICとZ80Aのアセンブラコンストラクション表をにらめっこしながら嬉々としていた自分に、しかし「遊んでないで勉強しなさい!」と親からのお叱りが。受験生の僕はPCを取り上げられ、開発が中断……その間にソニーが独自パソコン事業から撤退、ゲーム開発がクローズ、機材は返却。

ソニーのパソコン事業はVAIOで再度花開くまで長い時間眠りに入り、PCが手元に亡くなった僕にとって高校はまさにダーマの神殿で、インドア派から一転、出会った友人たちと夜な夜な出歩く遊び人にジョブチェンジ。ここからしばらくはPCに全く触らない時期となりました。

テーマ1. あなたはなぜゲーム業界に?

もともと人をエンターテインするのが好きだった自分は俳優を目指すようになりました。いくつかの劇団をレベルアップ毎に渡り歩き、運良く劇団四季に入りました。

ミュージカル俳優現役時代
バレエ公演『眠りの森の美女』より『赤ずきんとオオカミ』

ゲームはいつもそばにあって瞑想の道具。『ドラゴンクエストⅤ』で経験値稼ぎをしながら台本を頭の中でこねくり回し、演技のプランをしてました。全国旅公演の最中に『ファイナルファンタジーⅦ』に衝撃を受け、ゲームの仕事に関わりたいという思いを胸に抱くのですが、まだ自分は人前に出ることの方が重要だったのでその火は種火のままでした。

『ウエスト・サイド・ストーリー』の振り付け練習中
『ルドルフとイッパイアッテナ』のイッパイアッテナ役

毎日歌って踊って演技している最中、ふと、もともとは時代劇ドラマに出たかったんだよね、という思いが湧き上がってきて劇団四季を退団。映像業界の裏方も知っておいた方がよいのでは、と映像制作の勉強をします。

映画を撮り、テレビ番組の仕上げに関わり、東映特撮番組の『仮面ライダー 』『戦隊シリーズ』に映像技術者として関わり、並行してフリーで多岐にわたるジャンルの映像制作をしていきます。

映像制作の傍ら、2012年頃には実に十数年ぶりに『ゾロ ザ・ミュージカル』で商業舞台に立ったりして下降気味の体力を取り戻しました。

『ゾロ ザ・ミュージカル』出演当時

2016年には、株式会社レベルファイブの『スナックワールド』で3DCGアニメ番組を演出し、ゲーム業界とのつながりが生まれました。そしておりしも2019年頃。バーチャルプロダクションというワードがバズり始め、調べているうちにゲームエンジンUnityと出会います。

時を遡って2010年頃、当時一緒に仕事をしていたCGクリエイターがUnityを触っていて……、「将来時間を見つけて一人でゲームを完成させるんだ!」と目を輝かせて語ってくれていました。そのときはポカーンと聞いていた自分でしたが、点と点がつながった感覚でした。

「僕自身が演技者として活動していたことが演出に役立ち、映像業界でやってこれた。そこで培った映像技術とゲームテクノロジーの幸せな融合がUnityにあり、ゲーム制作に関わる夢と未来のテクノロジーがすべてある!!」とエントリー。晴れてUnityの社員となり、ゲームエンジンの会社というゲーム業界の一端に混ぜてもらいました。

2020年の9月1日に入社だったのですが、当時の日本担当部長でUnityの顔役だった大前さんとZoomで面談中に大前さんの第一子誕生の報が入り、感動的な瞬間に立ち会えるという幸運のスタートでした。

テーマ2. その後はどんなことを?

Unityをジャパニメーション表現に活用してもらうツール群「Anime ToolBox」の開発に従事しました。沢山の機能を拡張してもらい、デモコンテンツを作るといった仕事です。

Unityでアニメや映像を制作するための数々の機能を提供する包括的なパッケージ「Anime ToolBox」

アニメスタジオさんに使ってもらえるようにあちこちの会社に訪問しにいったのも楽しかったです。それと並行して、実写と3DCG背景をリアルタイム合成するバーチャルプロダクションシステム(以下Vpro)を実現するための開発にも携わりました。

アセットを監督自ら調整
バーチャルプロダクション作品の演出中

まだ右も左もわからないUnityを片手に、2020年の冬からクランクインした『機界戦隊ゼンカイジャー』でVproのシステムを構築して導入、コロナで撮影が不自由だった時期の円滑な撮影を実現。翌年の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』でもトラブルなく稼働しました。

映像機器の展示会

Anime ToolBoxの根幹機能であるVisual Compositorはリアルタイム合成にもってこいで、バーチャルアイドルを実在感を伴って実写と合成することが可能なので、そちら方面の訴求も行いました。ゲームのIPキャラクターと一緒にダンスするとか、めっちゃ楽しいじゃないですか!

VproというともっぱらUnreal Engineが話題に上がりますが、UnityにはUnityの強みがあると確信していたのですが……、道具が揃っていよいよ攻勢に打って出るぞ!という時に、コアであるゲームエンジン開発にリソースを集中するということで、残念ながらVproの開発は停止するとの決定が本社Unity Technologiesから下されました。

海外の映像方面を開発していたメンバーとともに自分もUnityを離れることになりましたが、これからもゲーム業界と映像業界の橋渡し的なことを続けていけたらと思っています。

テーマ3. そこらへんのゲーム関係者として楽しかったこと

映像業界にいると普通はメーカーが作ってくれたものを使わせていただく、という形になることが普通なのですが、Unityはとにかく抜きん出た人が沢山いました。「かくかくしかじか、こんなことに困っている」と相談すると何でも答えが返ってきて、チームのメンバーに「こういう機能が追加で欲しいんですよね」と相談すれば、ものすごいスピードでテスト環境を作ってくれたり。そのスピード感と、どんどんユーザーにとって有意義なツールになっていく仕事に関われたことが本当に楽しかったです。

激論も交わされることがあり、大人になって久しく感じなかった文化祭的なノリを感じました。Unityは同僚に恵まれ開発に集中できる、本当に仕事とオフの境目がない、とにかく恵まれた環境でした。人生のボーナスタイムをもらった感じで、これからの荒波に耐えられる体力が残っているか心配になります。

あらたなジョブチェンジが目前に迫っていますが、各ジョブで学んだことはそれぞれは独立しているようでいて、ジョブチェンジ後にも普通に役に立ってきました。点と点が線としてつながり、それが面を構成したり、立方体になったり。まだその立方体に思い描いているものを詰め込めていませんが、ゆっくりと、でも確実に一歩一歩前に進んでいきたいと思います。

この記事を書いた人

書き手:林 和哉


林さん、ありがとうございました!2024年3月現在求職中とのことですので、ご興味ある方はsupport@nidan-jump.comまでご連絡ください!

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