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【ニュース】新型コロナウイルス海外での影響(16) ~出口戦略と想定される「3つのシナリオ」~

世界中で大きな影響をもたらしている新型コロナウイルス。感染拡大のピークを超えた国も多く、各国で出口戦略が模索されています。今回の記事では、世界各国の販売データと各種消費者調査の分析結果から見えてきた、出口戦略における3つの想定シナリオをご紹介します。


現在、各国の政府は、方法やスピードは異なるもののそれぞれに制限の解除を含む出口戦略を模索しています。各企業とも、今後世界がどのように変化するのか、そして、その変化のただ中でビジネスをいかに展開すべきか、多くの疑問や課題を抱えていることでしょう。

ニールセンでは、新型コロナウイルスがもたらす影響を分析した上で、3つのタイミングにおける想定シナリオを策定しました。これらのシナリオは、前例のない景気後退に直面した際、企業が「再攻勢、再起動、再創造」するための指針となるはずです。

数兆ドルが経済刺激策として注ぎ込まれているにもかかわらず、一方で何千もの人が感染症のため亡くなっており、一部の国では進行中のロックダウンを今後どうすべきか議論が続いています。経済の再構成もまた、今後の消費者の行動パターンとその変化に大きく依存しているのが現状です。

ニールセンのグローバルインテリジェンスチームでは、失業率、救済施策、金利などのグローバルなマクロ条件、日用品の販売データおよび調査結果にもとづく各国の消費者マインドを統合的に分析するプロジェクトを進行中です。これらの分析からは、感染症への対応および健康・財政面での政府支援と連動した消費者の行動パターンが明らかになっています。

最新の分析では、新たな消費者の行動パターン ー「何を・どこで・どのように」購入するのかー を明らかにするタイミング別の「3つのシナリオ」が特定されました。これらのシナリオは、現在の各国の状況にもとづいたもので、時間の経過とともに消費者が示すだろう一連の共通する特性を示しています。

ニールセン グローバルインテリジェンスチーム リーダーのスコット・マッケンジーは 「2008年の世界金融危機との比較が頻繁にされていますが、この状況では正確な比較はできません。当時と現在とでは状況が根本的に異なっています。金融危機では、何千もの人が毎日亡くなったわけでも、何百万もの人が隔離生活をしたわけでもありません。また、企業はオフィスや店舗を閉鎖することもなく、子どもたちも学校に通い続けました。この違いは大きく、新型コロナウイルスの影響は、過去の事例をはるかに超え広範にわたるでしょう。コロナ禍では、変化のペースが非常に速いことも特筆すべき点です」と述べています。

以前ご紹介した消費者の行動パターン「6つのフェーズ」に続く今回の「3つのシナリオ」では、タイミング別のシナリオを想定しています。

1. 反動:2020年第3四半期のある時点で通常の生活条件(学校、職場、店舗、レストランなどの再開)に早期復帰した場合のシナリオ。
2. 再起動:第4四半期に通常の生活に戻る場合のシナリオ。
3. 再創造:2021年前半のある時点で通常の生活に戻る場合のシナリオ。

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マッケンジーは「市場は根底から再調整されています。消費習慣はハイペースで変化し続けており、企業もまた、この変化に適応しビジネスを最適化する必要があるため、これらのシナリオを全体的な文脈において理解することが非常に重要です」としています。

それぞれのシナリオでは、拡大すると予測される一連の行動・習慣が示されています。場合によっては何年もかかる変化が、ほんの数カ月で起こる可能性もあるでしょう。

ニールセンが「コロナ期」に実施した各種調査からは、世界各国で消費者の行動パターンがすでに変化していること、また「コロナ後」特にテクノロジーとデジタルの分野においてさらなる変化が起こるだろうことも明らかになっています。

これらのシナリオは、多くの消費者が影響が長期化すると予想しているヨーロッパでの調査を含む世界各国の消費者マインドをもとに策定され、感染症とその影響への対処において一歩先を進んでいる韓国や中国などの市場データにより仮説検証されています。

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タイミング別・想定シナリオ

①反動:一連の健康指標、政府と企業による対応・対策、市場の反応などにより新たな「正常」が形成され社会情勢が変化する。

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②再起動:社会情勢においていくつかの異なる要因が発生し、年末に向け経済再生を位置づけていく。

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③再創造:この場合は完全な再創造が必要となる。2021年前半までは起こらない可能性が高い。①と②のシナリオと比べ、消費者の行動と特性はより顕著になり、それぞれのパターンが増幅していく。 

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シナリオによって、購買行動も異なります。変化する経済状況に合わせショッパーは購買パターンを変え、健康・衛生・安全に重点を置くようになり、これに応じて、品揃え、サイズ展開、ブランド選択、生産地や製造元などの重要性も変化します。

また消費者の全体も、仕事を維持でき経済的影響から守られる層と、失業や景気後退などコロナ禍がもたらす要因により支出が抑制される層のふたつに大きく分かれることになるでしょう。

やがて訪れるこの二極化により、メーカーおよび小売企業は、製品のレンジと価格帯を至急再調整しなければいけなくなるかもしれません。

ニールセン・カンパニー合同会社では、消費者調査、ショッパー調査、販売予測、マーケティングROI分析、コンシューマーニューロサイエンス分析、海外市場情報提供などを行っています。
お問い合わせ:JPNwebmaster@nielsen.com

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