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鴨川でパン食ってたらトンビに襲われて顔ケガした

 人生において油断は欠かせないものだ。周囲の様々な人から警鐘を鳴らされていても、実際に自分が痛い目にあっていないと、「いや、俺は大丈夫でしょ」とタカをくくってしまうことが、きっと誰にでもあるはずだ。タカをくくる...嗚呼、僕はタカをくくった結果、トンビに襲われたのだ––––

 そもそも、パン屋に入るつもりなんて毛頭なかった。計画外のことを思いついた時というのはすでに危険区域に一歩足を踏み入れていることを自覚しておいた方がいい。後輩と話している最中ふと左側に目をやる。なにやら美味しそうなパン屋さんを見つける。次いつここを見つけるかわからない。僕は「パン屋いこ」といい、後輩も承諾し店に入る。僕はクロワッサンと100%みかんジュースを買った。後輩も会計を終える。左側には空席と椅子と机が「ここでも食べられるよ」と言わんばかりに鎮座していたが僕は目前に鴨川があること、そもそも今回の散歩の目的地が鴨川であることからドアを閉め鴨川へと向かった。

 せめて、鴨川にいくまでのどこかで一口でも食しておけば––––状況は何か変わったのだろうか。変わらないのだろうな。その後僕たちは鴨川デルタに到達。ちょうどいいベンチはないか、と探し岩でできた簡易のベンチに座る。後輩が先にパンを出した。さて、僕も一口––––その刹那、背後から猛烈な勢いでトンビが襲来。後輩のパンは空の彼方へと消え去ってしまった。「えええ...」そういえば鴨川デルタのトンビは噂になっていた。特に川沿いのベンチの被害は数多く報告されていて、中学時代の友人の母(近いような遠いような関係だが)も被害にあったらしい。気をつけないといけない。

 しかし僕がアホなせいで話はこれでは終わらない。僕は後輩を「残念だね〜」と笑いながら、なぜか鴨川デルタのいわゆる三角州(厳密には違う)へ向かう。「あの上はトンビ飛んでへんし耐えてるやろ〜」と(アホ)。三角州へ到達。確かに目の前に、おにぎりを食べながらスマホをいじっている少年がいた。これはいける...クロワッサンを取り出し、一口食べる。めっちゃ美味しい...これを食べられなかった後輩、なんてかわいそうなんだ...「あとで分けてあげるね」とか言いつついざ二口目、クロワッサンは顔の付近へ。

 ––––刹那、顔面に走る衝撃、痛覚。痛い。めっちゃ痛い。体当たりでもかまされたのか.......!!無い。クロワッサンが無い!嗚呼、クロワッサンをくわえ、トンビが再び上空へ飛び立った...またしても人類の敗北である。背後から迫ったトンビは、V字型に滑空し僕のクロワッサンを二度と手の届かない場所へと連れ去ってしまった。

 状況は後輩よりひどかった。顔面を爪で引っ掛かれ、幸い深くは無いものの傷跡が残ってしまった。そして何より、取られたものがクロワッサンだったせいで残りカスが散らばる。落ち込んで座り込んでいたのだが、気がつくと僕らはハトに囲まれていた。僕たちに与えるクロワッサンなど一つもないと言わんばかりにハトがそれらをついばんでいた。切なさすら感じた僕は「もう行こう」と三角州を後にした。

 少し離れて鴨川デルタを眺める。トンビがさらなる餌を求め、上空を漂っている。怖すぎる。「自分に降りかかることなんてありえない」災難などないことを僕は身を以て知った。翌日外科に行くと、念のためと感染症対策として内服薬を処方された。二度と慢心はしない。普通に痛い。顔が。ていうかトンビ一ミリも悪くないなこれ。

 鴨川を去る間際、僕らの目にはギターを教えている彼氏と教わる彼女のカップルが映った。トンビ、スキだらけや。あれやで、あのギター、狙ってまえ。


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gam

文学部の大学生で、英米演劇、主にシェイクスピア演劇を専攻しています。
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