生活とともに生きる(4)人のターニングポイントとして生きる

 サカナクションの新しいアルバムを聴いている。前のアルバムが出てから6年経っているらしい。6年前は自分も小学生かな、と思ったけど違った。23歳の自分、6年前は17歳。立派な高校生だ。20歳を過ぎると人生の体感速度が加速するというが特にここ2年はつくづく実感させられている。新大阪方面に向かう東海道新幹線が、小田原を過ぎた辺りから本気を出し始めるあの感じ。吉田輝星の手元で伸びるストレート。大人になった方が受け取り可能な情報量も多く、人生は充実するはずなのに、なぜ一瞬なんだろうか。子供ができたら、また時間が止まったりするのかな。

 6年前の自分はなんのために生きていただろう。日々野球漬けで、自分の投げられるボールの良し悪しに一喜一憂しては、うまくいかないことの方が多くて落ち込んだ。主戦投手でなかった自分のピッチングは、いつしか "For The Team" ではなくなっていった。ワンマンプレーというわけではなくて、そもそも試合で登板しないため、チームの試合結果には結びつかない。したがって、究極には自分のために野球をやらなければモチベーションを保てなくなっていった。今のストレート回転よかったなとか、変化球手元で曲がったんじゃないか、とか自分のボールの質に固執するようになっていく。今プロ野球を観ていても、投手の変化球であるとかボールの質を中心に観察してしまうのはその名残か。

 自分のために生きるのは虚ろだ。誰かがいるから頑張れるというのは綺麗事でもなんでもなくて、単純に、揺るがない事実。ずっと自分のために生きてきたと思っていた。自分のやりたいことをやって、思うがままにやってきたつもりだった。ところが大学入学後は、高校までの気持ちの持ちようではなくなる。相手があってこそ、ということに次々と向き合うようになっていった。ラジオドラマの執筆やラジオパーソナリティーとして話すことの先にはエンドユーザーたるリスナーがいる。そういう「誰か」を意識することが「自分のやりたいこと」になっただけで、どうも自分のためだけに生きていたわけではないらしい。こういう経験を重ねると、高校時代ですらそうだったんだろうなと思う。僕のボールを捕るキャッチャーがいて、もし僕がいいピッチングをする(つまり、点をやらない、とか)と、「好リード」と彼も褒められる。自分一人のための生業など、そう簡単に存在しないことに気がつく。社会なんてそんなもんだわなあ。

 そんな「人のため」人生だけど、それを最近自覚してから、ある欲求と喜びのパターンに気がついた。どうも、「誰かの人生におけるターニングポイント」であることに絶大な喜びを覚えるようなのだ。欲深いけど、先日あなたはこんな存在です、と告げられ初めて自覚したのだ。

 関わった人の人生に深い爪痕を残したい。これは自分が根本的にもつかなり強い欲求だ。何回も言及してる。こんな人間、付き合うには向かない。重たすぎる。最初に交際した人と結婚するしかない性質である。多くの場合人は忘れたがるけど、僕は忘れることを許さない。サカナクションの「忘れられないの」以上に怖い。

 こんな人間だと自分を規定できたからこそ、作品を書く理由が見つかった。理想の作品像が見つかった。「どうして脚本家とか、そういうのを志すの?」と聞かれて言葉に詰まっていたのだけれど、今ならば言える、「誰かの人生の奥深くに一生残る、優しい傷跡のようなものを残したいから」だと。

 僕は星野源に人生を変えられている。「ただ奔放に自分の好きなように」やるのではなく、「みんなの中心で、自分の好きなように」やることの尊さ。人生は基本いいものではなくて、それでも存在する光明こそが人生を照らすのだ、と。マイナスの中にはプラスがあり、人生は常にヒントに溢れていることを彼に突きつけられたその日から、全ての方向性が変わった気すらする。

 自身の理想像、非常に難しいと思う。そうとうできた人間にならないと、無理。それでも日々、自分を必要としてくれる人々がいるので、できるだけ他者がその人にかけないような言葉をかけるように心がけている。そういう人生を心がけて、命を燃やしつつも、もう一つの目標である「180歳まで生きる」を達成したい。図々しいけど、図々しくないと生きられないし夢は叶わんのでね。

 

 

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gam

文学部の大学生で、英米演劇、主にシェイクスピア演劇を専攻しています。

生活とともに生きる

生活を見直したい、一つ一つのことを大切にしたい、この想いから、日々のことを、多くの人が共感できる文章にしたいと思います。
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