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フィボナッチリトレースメントとは?【テクニカル分析指標解説】

フィボナッチリトレースメントとは、テクニカル分析指標のひとつで、相場における反発や反落のポイントを見極めるための指標となります。
フィボナッチ比率を用いることで、価格の戻りポイントを特定することができます。
この記事では、フィボナッチリトレースメントの活用方法や注意点について、詳しく説明していきます。

フィボナッチ比率とは

フィボナッチ数列に基づく比率で、トレードにおいては、主に「23.6%」「38.2%」「50%」「61.8%」「78.6%」が使われます。
なんとも中途半端な数字ですが、これらの数字にはどのような意味があるのでしょうか?

まずは、フィボナッチ数列について説明する必要があります。
フィボナッチ数列とは、「1、1、2、3、5、8、13、21、34…」のように、前の数字を足した数が続く法則に従う数列のことです。

フィボナッチ比率は、隣り合う2つの数の比率として計算されます。
数列の隣り合う数の比率は0.618に収束していきます。
この0.618は、黄金比率とも呼ばれています。
黄金比の1:1.618の比率は、「人間が最も美しいと感じる比率」と言われ、自然界の様々な構造や歴史的建造物、アートなどにも取り入れられていることで有名です。

また、フィボナッチ数列の1つ飛ばしの値の比率は、0.382に収束していきます。0.382は、黄金比率の0.618を1から引いた値でもあります。
さらに、フィボナッチ数列の2つ飛ばしの値の比率は、0.236に収束していきます。

フィボナッチリトレースメントのもうひとつの値として、0.782が使われますが、この値は0.618の平方根になっています。
(0.236を1から引いた値である0.764が適切だとする意見もあるようです)

それでは、以下にそれぞれの比率の意味をまとめましょう。
0.618(61.8%):フィボナッチ数列の隣り合う数の比率の収束値
0.382(38.2%):フィボナッチ数列の1つ飛ばしの数の比率の収束値
0.236(23.6%):フィボナッチ数列の2つ飛ばしの数の比率の収束値
0.786(78.6%):0.618の平方根

こちらに半値戻しである0.5(50%)を加えたものがフィボナッチリトレースメントで使用される値になります。

だからなに?

散々、数学の話をしてきましたが、「で?」という感じですよね。
正直、トレードでフィボナッチリトレースメントを活用する上で、上記の知識は一切必要ありません(笑)

では、なぜこれらの数字が相場分析を行う上で重要な節目となるのでしょうか?

フィボナッチ比率が相場の節目となる理由

今回この記事を執筆するにあたって、様々なテクニカルトレードに関する資料を調査してみました。
すると、フィボナッチリトレースメントが相場で効く理由について、明確な結論は出ておらず、筆者によって意見がバラバラであることが判明しました。

下記に私が調査した限りの情報を記載します。

意見①
「フィボナッチは相場の50%付近の値動きを観察するための指標である」

この意見では、相場の大原則として、特に材料が出ない場合、相場は平均の値である半値戻し付近に収束していくと述べられていました。
自然に50%に近づいていく中で、価格が上昇する気配が強い場合は61.8%、下降する気配が強い場合は38.2%前後で押しまたは戻りが来るものとして値動きを予測できるとの意見です。

意見②
「半値戻しを超えて調整する場合、61.8%が心理的節目になりやすい」

この意見では、相場の普遍的ルールとして、50%ラインは多くの投資家の損益分岐点になりやすいとされています。そして、損益分岐点を超えた場合、61.8%が心理的節目となりやすいと述べられていました。
ただし、ランダムな相場の動きの中で61.8%という数字が重視されやすいのかについては記載されていませんでした。

意見③
「自然界に組み込まれた黄金比である0.618に投資家の心理が無意識に引き寄せられる」

この意見では、0.618という数字は世界的なアートや建造物、自然界の構造にも組み込まれていることから、人間が無意識に「美しい」「心地よい」と感じてしまう比率なのだとのことでした。
相場に参加している無数の投資家の無意識によって、自然と0.618などのフィボナッチ比率に相場の節目が引き寄せられるのだとされていました。

意見④
「フィボナッチはデタラメで根拠も優位性もないので活用してはいけない」

この意見では、どんなチャートでもフィボナッチを引くとそれなりにどこかのポイントで反発しており、それっぽく見えるだけで、実際は後付けのインチキであると述べられていました。
また、自然界の構造やアートについても例外は多数あり、神秘性のかけらもないとのことでした。

意見⑤
「フィボナッチに根拠はないが、みんなが機能すると思っているから機能する」

この意見では、フィボナッチ比率のオカルト性に賛同しつつ、多くの投資家が意識するポイントであるなら機能するし、意識されないポイントあれば機能しないと述べられていました。

どの意見も立場がまったく違いますが、どれも一定の肯定ができるものとなっているかと思います。
私は今回この記事を執筆するにあたって、これだけ調査しても明確な根拠が出てこないものに根拠を求めることは難しいと結論付けました。
しかし、意見⑤にもあるようにトレード指標それ自体に明確な根拠がなくとも、フィボナッチリトレースメントはトレード分析において慣用的に活用されています。
フィボナッチリトレースメントが示す値が、多くの投資家が意識するラインとなりえるのであれば、十分に活用できるトレード指標だと考えています。

フィボナッチリトレースメントの活用方法

それでは、具体的にはどのようにフィボナッチリトレースメントの指標を使っていけばよいのでしょうか?

もっとも意識すべきは50%ライン

意見①や意見②にもあるように、相場の戻りと反発を意識する際にまず意識するべきは半値戻しの50%ラインです。
半値戻しをクリアするか、クリアするまでの勢いはどのようになっているか、ここを意識することが大原則となります。
もちろん、0.5(50%)という数字はフィボナッチとは何の関係もありません。
あくまで、フィボナッチ比率は、半値戻しに至る経緯を探る補助的な指標に過ぎないということです。

次に意識すべきは61.8%、38.2%ライン

50%ラインを挟むこの2つのラインが次に意識されるべきポイントとなります。
この水準で反発するのかどうかで今後のトレンドを見極めることができます。
ただし、この具体的な数字で反発が起きる論理的根拠は薄く、あくまで「目安の価格帯」程度の解像度で認識することが大切です。

複数の指標を組み合わせて分析を行う

上述してきたようにフィボナッチリトレースメントの比率に論理的根拠は薄いです。
そのため、フィボナッチリトレースメントだけを相場分析の指標として用いることはおすすめできません。
その他の指標と組み合わせることで、フィボナッチは効果を発揮してきます。
例えば、0.618の水準が重要な水平線とかぶっていたり、移動平均線の収縮と整合性が取れている場合、マルチタイム分析でフィボナッチを引いたときに重要なラインが見て取れるなどです。

テクニカルトレード全般に言えることですが、ひとつの指標に固執せず、複数種類の指標を組み合わせて、大衆の意識しているポイントを探るということが重要になります。

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