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短編怪談2 喫茶店

だいにわ

学校の帰り道。
山田と別れ、僕は家の近くの潰れた駄菓子屋の角を曲がる。
するとレインコートを着た女性が立っていた。
通り過ぎようとすると声をかけられた。
「ちょっと、悪いんだけどその制服、西藍高校の人だよね?」
「ぇ、あ、はい、そうですけど…?」
近くでよく見るとこの人、耳や鼻がピアスだらけだ。
「それなら、8月に冨田にある空き家に忍び混んだ人たち知ってる?」
嫌な気持ちになる。忘れられない思い出。
「いや?わかんないですね……」
立ち去りたい
すると、女性は僕に顔を近づけ、微かに顔をしかめた。
「ん、あ~、おかしいな、君が入ったみたいなのにね、空き家に……」
「え?」
「違った?」
「え、なんで?」
「まぁ、いろいろ張ってたの。悪いけどちょっと話したいから、少し座ろう」
そう言ってレインコートの女性はすぐ後ろにある喫茶店を指差した。
好奇心と猜疑心。そして大きな不安を抱えて一緒に入る。
すると彼女は迷わず、窓際の一番奥の席に近づく。席には小柄で大きな黒縁メガネをかけた男性がいた。
「連れてきたよ。この人みたい。」
「ん、有難う。どうぞ座って?怪しいと思うけど、まぁ何かの縁ということで、ね」
なんとなく、嫌な予感がしつつ座ると男性が話し始めた。
「ん、まずは有難うね、来てくれて。すごく怪しいと思うんだけど、さ。ちょっとこちらの事情もあってね。こんな変な感じになったのね。えっーと、そうだ。まずは自己紹介として、私はちょっと特殊ななんでも屋をしている山本といいます。で、こっちがスタッフの郷灘さん。」
「さとなださん?」
「そう、郷灘さん。で繰り返すと僕は山本。よろしくね」
「はぁ」
「それで本題。」
「はぁ。」
「この喫茶店には秘密がある。」
「はぁ?」
彼はくすりと笑って今にわかるよと小さくいった。
するとウェイトレスが水を持ってきた。
ぱっと顔を見る。
怖い
怖い
怖い
怖い
怖い
大きな疼きと共に目が開く。
彼女の顔が分からなかった。
おびただしい手、手、手、手、手
しがみつく男たち。
鬼のような形相。
「ひっ!!」
「どうかしましたか?」
僕は彼女を無視して座り直して、下を向く。
「すいません!彼ちょっと人見知りで……」
山本がとりなす。
郷灘さんは僕の手を握り、小さな声でごめんねと言った。
ウェイトレスが離れると山本がにやりと僕に笑いかける。
「決まりだ。彼女は殺人鬼で君は視える人」

これが出会い。


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