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短編小説 無味

「ねぇ、ねぇ。」
「何?」
彼女は氷を噛み砕きながら返事をする。
「今、やってるゲームでさ、共感覚って出てきてさ」
「あれだろ。数字に色が見えたり、味がしたりするやつ」
「それそれ!それでさなんとなく愛ってどんな味がするのかなって思ったんだよね。」
「発想がおかしい」
彼はニヤリと笑う
「暇つぶしに良いでしょ。それに愛の味がわかったらポテトチップス愛の味とか商品出たりしてさ、面白いじゃん」
「はぁ、愛に味ねぇ〜」

彼は強く頷く。

「何味だと思う?」
彼女は少し考えた後、不機嫌そうに
「………………無味無臭」
「ヘ?」
「味なんかないだろ?愛に」
「え〜夢なーい」
「煩い!バカ!」
「ひどいなぁ、それにこの間の模試、私め、貴方様より上でしたが?」
彼女はそっぽを向いた。
「チッ!」
「オンナノコ シタウチ ヨクナイ」
「……ペッ」
「ウワー ゴキゲン ナナメ」
「もういい。出るぞ!」
「えっ、ああ、ゴメン、言い過ぎた?」
「もういいって言ってるだろ。全く。」
「ゴメンね」
「わかったから。ちょっとトイレ言ってくるから、その間にコーヒー飲んでしまえ」
「了解」
トイレに入って彼女はため息。
「全く!バカ!」
彼女は鏡の自分に呟く。
「何が愛の味だ。」
呟く
「味があったら、飽きちゃうだろ。」
呟く
「私は飽きちゃうのも飽きられるのも嫌なんだよ。」

「無味だから、ずっと…………バカ!」

一方、その頃、彼はコーヒーをガブリと飲んで
「恋が甘酸っぱいのなら、愛は甘苦い……とか?」

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