灰谷魚さんの「7歳の騎士」トリビュート作品(777文字)

この世界は破滅する。私たちはあちこちの土地を知り、人を知り、文化を、物品を、品性を知った。そして、世界の行く末が滅び以外無いことを知った。長い時間をかけて世界は年寄りばかりになり、老人は自分より少しでも年若い者を幼児として扱う習性を持っている。誰もが祖父母で誰もが孫になってしまう。だがその孫たちも次々と死んでいくだろう。病によって。老衰によって。悪意によって。老人の上に老人が折り重なる。その光景はおぞましいものだろう。誰もが老人で屍体に区別など無いのだから。世界の破滅は避けられない事であるのであればその先を考えなければならないので考えた。考え抜いた先の計画を私たちは実行した。

計画の最終段階で秘書が私に質問を投げ掛けた。何故7歳なのですかと。すべての年齢のなかで最も混じり気の無い夢を見るのが7歳なのだ。そして、私たちに足りない三分の一だからと答えると秘書は涙を溢した。彼の孫は昨日、誕生日だったか。何もかも世界を構築するものを7歳に託す計画を始めるスイッチを押す。枯れ枝みたいな指で出きることはこんなことしかないのだから。最初の7歳は誰なのか知るすべはない。しかし、その日を境に次々と7才が失踪する。流星みたいに美しい尾ひれをひいて。6歳は7歳になるが8歳は7歳になることができない。断絶を私は行った。天動説の世界の果ては7歳にしか見ることができない。秘書は未だ泣き続けている。彼を見棄てても私はやらなければならなかった。私たちのするべきことだから。私たちにはなにも残されてはいないのだから。計画を行った私たちは叫ぶことを選んで手を振り上げた。

願わくば
「自分を保て、夢見たままでいろ、適応するな、干渉するな、周りのことなど一顧だにするな、滅びることを恐れるな。君たちは誇り高き7歳なのだから」
誇り亡き77歳が足りなかった三分の一の尾ひれを見送る。

#灰谷魚トリビュート

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