短編小説 ぐるぐる

ぐるぐる
お父さんは僕を抱えて廻ってくれた。
僕の笑い声がアクセルになって、
ぐるぐる
ぐるぐる
ぐるぐる
ぐるぐる
あの時の楽しさは大人になると失ってしまう。
その事に気づいたら、
大人になったことに嫌気がさした。
煙草も酒も、
慰めにはなるが、
あの時のお腹から溢れる楽しさを味わうことはできない。
ぐるぐる
ぐるぐる
無邪気にお父さんに自分の全てをゆだねて廻る
もうそんなことはされないのだけど
最近、大きな変化があった。
僕の全てが変わった。

「パパ、ぐるぐるやって!!」

僕の大きな変化が飛び込んできた
僕の喜びは子供には分からない。
自分の子を持つ喜びを
子供が全てをゆだねてくれる喜びを
お腹から溢れる喜びを見せてくれる喜びを
失った幸せは、違う幸せで埋まった。
「よし、きた!!』
ぐるぐる
ぐるぐる
幸せは繋がって、繋がって
世界に流れている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?