短編小説 とある朝

とある朝、とある道でトラックが僕たちに向かって走って来た。
立ちすくむ僕を彼は突き飛ばして、彼だけがトラックの下敷きになった。
泣き叫ぶ僕に彼は「忘れないで」と呟き、息を引き取った。
僕は約束を守り、彼を忘れることなく、高校を卒業し、そこそこの大学に入学。卒業後はそこそこの会社に入った。

とある朝、とある道でトラックが歩道に侵入してきた。目の前にいた赤いランドセルを背負った女の子を横に僕は突き飛ばした。

……

激しい痛みと猛烈な息苦しさ。
体から熱い物が流れ出る感覚。
僕はトラックの下敷きになっていた。
女の子が泣いて、パニックになっていた。
僕は微かな声を出すと彼女は大きな声で助けを呼び始めた
人の気配が集まってきた。
女の子は僕の手を泣きながら握っている。
僕はドロドロな顔で笑顔を作った。

視界が白濁している。

彼が残した言葉「忘れないで」
それは単純に忘れないでほしかったのか。
同じ状態になり、何となく言葉の意味が分かったような気がする。
繋がりを忘れないでほしかったのだ。
命の繋がりを。
単純な親から子へ、子から孫へという繋がりだけでない。
人から人への繋がり。

彼女がいなくなり、オレンジの服を来た人が僕に話しかけてくる。

彼が僕を助けてくれたから、僕は彼女を助けることができた。
彼を忘れなかったから、彼からのバトンをしっかり握っていたから。
そして、そのバトンはもう彼女に渡ってしまったのだろう。
僕は彼女と繋がった。
彼女がどんな人生を歩むのか。
それは誰にも分からない。
子供をつくるかも知れない。
人を助けるかもしれない。
でも、
必ず、
どんな形でも、
人と繋がっていくだろう

縦でも横でも人と人はツナ ガッ テ イ ク

でも

キミ

はナガ
イキシ

ほしいな

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