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タクシー の CX デザイン とリ・ブランディングについて。

noteで初めての投稿になります。私は、都内のあるブランディングのコンサルテーションを生業とする企業でプランナーとして働いております。日々、大量のインプットを求められる中で、溜め込むだけではなくしっかりとアウトプットも活性化していくべきと考え、noteを立ち上げました。

1社員ですので、具体的なノウハウや実績などはこの場で記載できませんが、世の中にある数多くの事例を私なりに整理・分析してストックしていきます。初回は、CXデザインの実例をタクシー業界の最大手 日本交通さんを参照に整理してみます。

業界の変遷を探る

みなさんは、タクシー乗りますか?
仕事での移動や、終電後の帰宅、地方への出張などで利用する機会も多いと思います。よく利用する方は、実感しているかもしれませんが、今、タクシー業界は大転換が進んでいます。まずは、業界の変遷を辿ります。

日本に自動車のタクシーが誕生したのは今から約100年前と言われています。その歴史の中で、約30年ほど前 タクシー業界は絶頂にありました。

バブル時代。
私は、この時代を経験したことがありませんが、本当にこんなこともあったのでしょうね。乗車するため、タクシーに向かって一万円札を振る人々。言わば、「タクシーがお客様を選ぶ時代」

全く余談ですが、私は、休日にゲームをします。
その中でも好きなゲームの一つが「龍がごとくシリーズ」です。その中の作品に、バブル期を描いた作品があるのですがとても面白いです。(笑)(上記画像がその画像です)

さて、本題に戻りますが、タクシー業界の絶頂はそう長く続きません。バブル崩壊後、「たかが数キロの移動」に数千円がかかるタクシーの利用者数は右肩下がり。

年々、減少していく利用者。
一方で、事業者は、リーマンショックなどの影響を受け横ばいまたは増加していきます。メディアでも「利用者の減少問題」「決して良いとは言えない職場環境問題」「ドライバーの高齢化問題」など多数のマイナス記事が日常的に露出しました。

強烈な逆風が吹き抜ける中、
潮目を変えたのが。初乗り料金 「730円」→「410円」への値下げ でした(東京に限る)。利用者の金銭的・心理的負担の軽減に加え、訪日外国人増加、オリンピック開催などの追い風も重なり、タクシー利用者数は若干の回復傾向へ向かいます。

しかし、バブル時代に比べると決して順風満帆とは言えません。いかに、多くのお客様にタクシーに乗ってもらうか。「価格」も「移動スピード」も独自性を出せない制限の多い市場の中で、いかに、自社のタクシーに乗ってもらうか。
果たして、「お客様がタクシーを選ぶ時代」 で勝ち抜くための戦術とは?

CX - (Customer Experience)についておさらい

CXとは、カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)の略語です。日本語では顧客体験と略されます。言葉のごとく、「顧客が企業との接触で体験することすべて」であり、商品やサービスの物理的価値だけでなく、それらを通じた一連の体験を視野に入れた考え方を指しています。混同しやすい言葉に、「UI」「UX」などがありますが、「CX」はその2つも包括していると考えていただければと思います。

また、CXという言葉はアメリカの経営学者であるバーンド・H・シュミットが1999年に出版した書籍の中で提唱されたのが始まりだとされています。
バーンド・H・シュミットはCXを以下の5つの要素に分けて説明しています。

良質なCXデザインには、正確に顧客の潜在的なインサイトを掴むことが欠かせません。顧客のインサイトを正確に把握できなれば、いくら優秀なサービスを提供しても空回りします。そこで、今回は以下のフレームでCXデザインをまとめます。

日本交通の CX デザイン

それでは、業界大手の日本交通とそのグループ企業 Japan taxiを参照にまとめて参ります。会社概要は以下をご参照ください。

タクシーのCXデザインの代表的なタッチポイントは3つあります。「配車(タクシーに乗る前)」「乗車(タクシーに乗っている最中)「降車(タクシーを降りるとき)」です。

【配車】

配車におけるインサイトは、「自分でタクシーを止めるのが面倒」「タクシーがどこにいるのか分からない」「急いでいるときに乗れない(間に合わない)」「(事前に値段がわからない)」などがあります。これらのインサイトは、非常にネガティブでストレスフルな意見であることが分かります。そこで、日本交通は/Japan Taxiはアプリを開発。スマートフォン上で効率的よくスムーズに乗車ができるサービスを開始しています。アプリでは、地図上に周辺のタクシーの現在地が表示されるなどUIも秀逸です。その結果、心理的なストレスが大きく軽減され、CXの向上に繋がっています。

【乗車】

続きまして、乗車です。乗車のインサイトは人ぞれぞれ。顧客ごとに異なるインサイトに応じて、対応していく柔軟性が必要です。日本交通では、ユーザー(年齢/性別や目的地)に応じて配信する内容を変動させるデジタルサイネージ「Tokyo Prime」を搭載。さらに、ヒーターがついたシートやTVモニターを搭載して車種なども導入しています。その結果、顧客の状態に応じた「適切」で「快適」な体験を提供。

【降車】

最後は、降車です。インサイトを見ると、配車同様、スマートさが求められています。そこで、こちらでもJapan Taxiのテクノロジーを活用し、スマートな顧客体験を提供しています。
このように、タクシー業界(日本交通)のCXは、大きく3つのタッチポイントをデザインすることで成功に繋がっています。

まとめ - 成功要因は何か

今回のケースから見ても分かるように、CXデザインを効果的に作用させるには、部分最適ではなく、俯瞰的な視点で接点を向上させていく全体最適が大切です。ただ、日常の業務を遂行する現場レベルだけでは、意識はあっても先導(浸透/運用)することは難しいケースが多いと感じています。うまくCXデザインを稼働させるためには、前提となる共通の考え方(コンセプトやバリューと言われるもの)を明確に提示することが有効です。実際、今回のケースでも「移動で人を幸せにする」という明確なコンセプトがあったり、日本交通のJapan Taxiの代表を兼任し、業界や政界への発言力もある川鍋氏が指揮をとったりしています。

地道な取り組みこそCXの真骨頂??

今回のケースではどうしても、Japan Taxiのようなテクノロジーのデザインが目立ちがちです。しかし、本当はドライバーの接客態度や運転技術・知識、アプリ開発やコールセンターなど本社スタッフの意思統一などアナログな部分のデザインとの両輪走行で進められています。(日本交通のWEBサイトを見れば良くわかります。)

この両輪のCXデザインは、インナーブランディングにも繋がっており、乗務員側の手間や負担を減らすことによる業務改善・仕事効率化、人手不足解消問題にも貢献しました。

CXデザインは、テクノロジーの開発など膨大な開発投資が必要できないかと言うとそうではありませんし、これだけテクノロジーの発展がめまぐるしい世の中で、テクノロジー頼りのCXデザインは、短期的かつ競合に埋没してしまう可能性も秘めています。

この事例から効率的なCXの向上のためにまず取り組むことは、「①ゴール共有〜コンセプト抽出(どこを目指すのか)」。そして、「②EX(Employee Experience-従業員体験)の向上」だと考えます。

CXデザインは言葉の通り、顧客の方に意識が集中しがちですが、その顧客に体験を提供するのはどんな形であれ従業員です。継続的な従業員への意識浸透施策を繰り返した結果が、上質な顧客体験の提供に繋がっていくのはないでしょうか。

引き続き勉強していきます。ここまでお読みいただきましてありがとうございました。これからも継続的に更新していきます。それでは。


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