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採用活動で感じる自己矛盾について

採用活動、とりわけ応募者の「動機形成」コミュニケーションに関わり始めた頃に僕自身が感じていたことと、それを継続する中で考えるようになったことについて書いてみようと思います。


まず初期に起こる「自己矛盾」

「自己矛盾」と僕はいったん定義していますが、一時期そんな感情にどっぷり浸っていたことがあります。

合同説明会しかり、個社説明会しかり、学生との初期接点のイベントでは、長くても2時間ほどしかアピールタイムがありません。
そこでは自社事業の社会的価値、仕事を通して獲得できる能力やさまざまな体験、仲間との協働と育まれる絆などをめいっぱい話します。
学生に対してまず伝えたいことってこういうプラス(ポジティブ)情報です。

もちろん、学生によってはそれをプラスと捉えてくれないこともあります(最近の言葉で言われる「やりがい搾取」という捉え方になるんだと思います)が、それは自社の採用ターゲット外ということなので問題ありません。

この初期接点でのアピールを始めた頃「自己矛盾」に苛まれます。


良いことばかり言う、良いことしか言わない

話していることは決して嘘ではありません。
自分たちの事業は確かに社会に必要とされていると確信しているし、我々のサービスを高く評価くださるお客様もいます。
仕事を通して、課題抽出力や提案力、論理的思考力が身につきます。
対面でのプレゼンテーションを通して胆力だって磨かれる。

だけど、それは常に感じ続けられるものではないんですよね。しかも、入社早々の新人は、その喜びややりがいを実感するはるか以前に、不慣れなルーティーンに忙殺されてしまうのが日常だからです。
電話をかけることさえも、コピーをとることだって、その手順も知らないわけで、当然それら細かなことも含めて、とにかく覚えなきゃいけないことだらけ。

初期接点の段階ではこういった若手社員が遭遇する「不慣れなルーティーン」やそれによって起こる心的ストレスなどのネガティブ情報はなかなか伝えません(正しくは「伝えられない」のですが)。

その一方で、プラス情報によって就活生を焚きつけて、現実のルーティーンをひた隠しにしてしまっていることの罪悪感みたいなものが「自己矛盾」として現れます。
(実際に「最後までひた隠しにする」ということが罪悪なのは間違いないです。)


ネガ情報をなかなか伝えない(伝えられない)ワケ

放っておいても学生が集まってくる極々一部の企業はともかく、日本の大半は中小企業。
なんとか出会えた就活生たちに、なんとか自社を知ってもらいたいし好きになってもらいたい、願わくばなんとか選考に進んでもらいたいと思っているはずで。

このタイミングでネガティブなことを伝えてしまったら、そこで離脱されてしまいます。だから「伝えられない」というのが本音だと思います。僕はそうでした。
採用担当者の中には、こうした「自己矛盾」を抱えている人も少なくないのではないでしょうか。


この「自己矛盾」を超えていくために、僕自身が踏んだプロセスをご紹介したいと思います。


採用コミュニケーションを恋愛コミュニケーションに置き換えてみる

「求人広告はラブレターだ」とは昔から言われており、それは真理だと僕は思っています。
愛を伝え、その愛を確かに受け取ってくれた人が伴侶となってくれる。

そこで、新卒採用コミュニケーションを恋愛のそれと置き換えて考えてみることにしました。
  ①出会い、
  ②互いを知り、
  ③検討(他者と比較)し、
  ④決意する。
このプロセスは採用も恋愛もほぼ同じです、よね。


コンパでの振る舞い

初めて出会ってから恋愛対象として意識するまでの初期の頃、人は間違いなく自分のことを良く見せようとします。僕も当然そうです(既婚の今では「そうでした」が正解)。
コンパの場では、グラスが空いてる子がいれば「次なに飲む?」と気を利かせるし、いろんな話題を振りまいて楽しい会話で過ごします。

「この人いい人だな」って思ってくれたらそれでOKです。次のアクションが取れる下地ができればいい。コンパでの最終目的は電話番号を聞くこと。最近ならLINEのアカウント交換ぐらいでしょうか。

その場で、まさか「結婚しよう」なんて言いません。

あるいは、本当の自分を知ってもらいたいからと、自分の欠点や悪癖、前の恋人がなぜ自分に愛想尽かしたか、なんて話さないでしょう。
ひょっとしたら「誠実」ゆえにそれを話す人もいるかもしれません。でも、それじゃあ「正直でいい人だとは思うけど、ちょっとリアル過ぎ〜爆」なんて評価をされ、次のデートはありません。

まずは次のデートを取り付けるチャンスを確実に手にする必要があるわけです。


自分のアカンところは徐々に伝えていく

デートに誘えたら、そこから少しずつ距離を詰めていきます。
相手のことを理解するように努め、自分のことを理解してもらえるように努める。「自分はこんな人間だけど、こういう悪いところもあると思う」。「前の恋人にはこんなところが嫌われたんだと思う」。
ネガティブな側面も含めて、少しずつ相互理解が深まっていきます。

ほかの恋人候補と検討しながらも、「あ、自分はこの人のこと好きだなあ。この人とだったら幸せになれそうだし、この人のことを幸せにできるんじゃないかなあ」と、意識変容していく。

もちろんすべての人がこんな恋愛をしてるわけではないことは承知してます。出会って瞬間的にハートに火がついて、その日のうちに……ということもあるでしょうし。
ですが、おおよそこんな手順なら、「まさかこんな人とは!!」というミスマッチを減らすことはできそうです。

ここまでのプロセスを経て、いよいよ「恋人になる(伴侶になる)」ワケです。


こうして僕は「採用コミュニケーションも同じだな」……と結論したのです。

●初期はできるだけポジティブな情報伝達で、次以降の接点づくりに努める
●相手を裏切らないためにも、中後半にかけてネガティブな情報も包み隠さず伝える
●ポジ・ネガ含め、あなたが得たいキャリアがここにあることを伝える。あなたの力が自社にとって必要だと伝える。
●接するときは常に等身大。嘘は絶対NG。


まとめ

この「自己矛盾」を打ち破るのって、結局は「正直であること」なんですね。
なんかこういうこと言うと「最初から正直であれよ」というツッコミを受けそうですが。
もちろんそれが理想だということを念頭に置きつつも“好きになってもらう順番”というのはやはり重要で、それはそれぞれの会社の「格」というか「ブランド」といったものに大きく左右されるのです。

自身の中に「矛盾」を感じている採用担当の方々には、ぜひとも中後半の「ネガティブ情報伝達」まできちんと言語化した上で、それをていねいにサボらず、学生に伝えていっていただければ幸いです。

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