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音楽ビジネスのあらゆる情報を一元管理できるシステムがドイツには存在している

ボクはここ数年にわたり、文化庁をはじめとした各省庁における「著作物の権利を一元管理し、使用された場合の印税をスムーズに分配するための仕組みづくり」に関する委員会に参加しているのですが、その実現はかなり難しく、なかなか出口が見つけられていないのが現状な気がしています。

その原因の一つが「権利が複雑である」ということがあると思うのですが、最初にそれを説明させてください。

例えば「音楽の著作物」に関してだけを見ても、「音楽」には下記のような権利が存在し、それぞれ別の団体にて管理されていたり、個人管理されていたりするわけです。

《音楽における権利とその所在》

1.音楽著作権(作詞や作曲に関する権利):著作権管理団体はJASRACやNexTone、および曲によっては個人管理などがあります。
著作権管理団体ごとに「JASRACコード」や「NexToneコード」などが採番されて管理されています。
2.音楽出版(音楽著作権者が音楽出版社に権利を譲渡し、そこから各著作権管理団体に著作権を信託もしくは委託管理するのが、日本では主流となっています)
音楽出版社経由で著作権管理団体にて信託もしくは委託管理されている場合には、それぞれの管理団体のコードが採番されています。
3.音楽原盤権(法的には著作隣接権というカテゴリーになります):音楽原盤(マスターテープ)の権利を指し、一般的にはレコード会社、もしくは(そのアーティストが所属している)芸能プロダクション、そして、(ボカロPなどの場合は)個人が管理しているます。
メジャー系の楽曲や配信されている楽曲などは「ISRC」という識別コードが採番されている場合がほとんどですが、同じ曲に複数のコードが振られていたり、権利者ではない団体や企業のものとして登録されていたりと、いくつかの問題点があります。
4.実演家の権利(これも著作隣接権の一部です):これを更にわけると
(4-1)フューチャードアーティスト(FA)の権利(メインボーカルなどの中心的なアーティストの権利):アーティスト本人もしくはアーティストが所属する芸能プロダクションが管理し、一部は、実演家団体のDBに登録されています。個人クリエイターの場合、個人で管理している場合も多いです。
(4-2)ノンフューチャードアーティスト(NFA)の権利(バックバンドなどの参加ミュージシャンの権利):マスターテープ制作時にレコード会社へ譲渡されている場合が多いですが、MPNなどの団体が個別に管理し、音楽印税の一部を徴収分配してくれる場合もあります。
FA、NFAともに管理コードを採番しようとする動きはあり、既に実現されているケースもありますが、統一化されたコードはまだ実用化されていません。
(4-3)編曲家(アレンジャー)の権利:公表時のオリジナルの編曲の場合、音楽出版社を通じて著作権管理団体にて管理されている場合もあります。
5.音楽商品の権利:簡単にいうと、CD情報などの商品情報です。一般流通されている商品は「JANコード」が採番されていますが、同人流通などではこの限りではありません。CD情報を管理する「eCATS」というシステムが存在していますが、やはりインディーズ楽曲作品や同人作品などは管理されていないケースがほとんどです。
6.配信専門楽曲の原盤権利:これは上の「3,4,5」と同じ権利なのですが、有体物(CDなど)になっていないデジタル音源の場合には、まだまだ我が国では統一管理ができているとは言えません。

ま、こんな風に一口で「音楽ビジネスにおける権利」と言っても、いろいろな種類のものが存在し、それぞれが別の形で管理されている(もしくは管理されていない)のが現状で、特に、インディーズ系やネット系(ボカロ楽曲や東方系楽曲など)を、テレビ番組で使用したいと番組ディレクターが思った時など、「どうやって権利許諾をもらったらいいのかわからない」というのが実態なのです。

《更にネット楽曲の場合は複雑です》

たとえば超有名なボカロ楽曲「千本桜」を例にとります。

著作者はもちろん「黒うさ」さんですが、音楽著作権は株式会社ドワンゴにて出版社登録されており、著作権の中の「演奏権」はJASRAC信託、「録音権」「配信権」「放送権」などはNexTone委託管理となっています。(「信託」と「委託」の違いはまた今度説明します)

そして「千本桜のオリジナル音源(原盤)」は「黒うさ」さん本人が管理し、ドワンゴがその営業代理をおこなっています。

「千本桜」の実演家の権利は日本ネットクリエイター協会が管理し、音制連にて管理を行っています。

テレビで使う場合は「千本桜の動画」を使う場合がほとんどだと思いますが、その動画の権利は「三重の人」さんが持っており、その動画で使用されている絵の権利は「一斗まる」さんが持っており、使用方法によっては、一斗まるさんが書いた小説 千本桜の出版元である「KADOKAWA」が絡んでくることもあります。(千本桜を中村獅童さんと初音ミクとの共演で歌舞伎にした「超歌舞伎」では、KADOKAWAにも許諾を取っています)

さらに一斗まるさんのイラストには初音ミクが使用されているので、「千本桜の動画」を放送使用する場合などは「クリプトン・フューチャー・メディア株式会社」の許諾も必要となってくるわけです。

さらさらに「千本桜」が収録されているCDはメジャー、インディーズ合わせて複数存在しているということも記載しておきましょう。

こんな感じで超有名な「千本桜」ですら、かなり複雑なわけです。

実はボクは千本桜が世の中に出てきたときから2010年代前半まで、この楽曲の管理を(当時ボクが所属していた)ドワンゴ社で行っており、この楽曲のCM使用や(動画や原作、イラスト、キャラクター含めての)超歌舞伎での使用の権利渉外を行ってきましたので、上記のことを理解しておりますが、一般的なテレビ番組ディレクターがこのような知識を有していることはほとんど稀だと思います。

※現在、動画使用も含めドワンゴ社が窓口業務を行いますので、まずはドワンゴ社に問い合わせてみてください♪

で、長々と書きましたが、これらの複雑な音楽作品の情報を管理する仕組みがドイツには既に存在しているのです!

なにも「日本は遅れている」「ドイツは凄い」ということを言っているのではなく、日本において「音楽作品の権利情報を一元管理し、使用の円滑化を実現すると同時に、使用料の正当な分配を実現するための仕組み」を構築していくにおいて、是非、参考にした方が良いと思いましたので、今回紹介する次第です。

その会社は「ALV DIGITAL Systems 」と言い、上記に書いた「作詞家」「作曲家」「編曲家」「原盤権利者」「作品に参加してるアーティスト(バックバンドのメンバーも含む)」などの権利者情報や、「CD作品」などの商品情報を一元管理しているので、アルバム名からそこに収録されている楽曲のさらにそこに参加しているミュージシャンの情報も引き出せます。

さらに、各権利者がどのような「契約」をしているかを登録できるので、その楽曲の「使用方法(CDに使われたのか、テレビで放送されたのか、ライブで使用されたのかなど)ごとに、各権利者への印税分配を計算」してくれるのです!

なんか凄いでしょ!

先日この「ALV DIGITAL Systems 」のパトリックトーマスCEOと直接面談させてもらったのですが、その時に聞いた話では、このシステムを「書籍出版の管理」にも応用する取り組みが既に行われているのだとか。

つまり「著作物の分野を横断した一元管理」についても、その可能性を示しているということなのです。
このシステムを説明しているサイトがありますので、URLを記載しておきます。

ボクはここで宣伝活動をしているわけではないのですよ。あくまでも「現在、日本で取り組みを模索されている、分野を横断した著作物の一元管理の仕組みづくり」を実現するうえで、とても参考になるんじゃないかな、ということを言っているわけです。

現在の日本の著作物管理においては、UGC作品はどうしても「蚊帳の外」に置かれてしまいますので、こういう新しい仕組みを構築し、メジャー、インディーズ、個人作品に関わらず、正当に管理され、正当な印税をもらえる仕組みを是非構築してもらいたいと思っているのです。



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