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10.連続失踪事件とプラネタリウム

超人気 『プラネタリウム解説者』 フクシン・サブロウ氏 / 聞き手:けさらんぱさらん研究所 所長 にへどん

にへどん:
 本日は、プラネタリウムの解説員として絶大なる人気を誇る、アマチュア天文家の フクシン・サブロウさんにお話を伺いたいと思います。フ
 クシンさん、よろしくお願いします。

フクシン:
 よろしくお願いします。

にへどん:
 フクシンさんはこれまでに複数のプラネタリウムを渡り歩いてきた超人気の 『プラネタリウム解説者』 なんですが、2カ月前に 『K地区』 の 『NoAプラネタリウム』 に移られました。
 ここでも連日大人気で、今も、次回の上演を待っているお客様で会場は超満員のようですね。

フクシン:
 ありがたいことです。
 ボクが若い頃はまだ夜中になれば東京でも星が見えたのですけど、最近では夜中でも街の明かりがまぶしくて星もほとんど見えなくなりましたからねぇ。せめて、プラネタリウムの星空を解説することで、一人でも多くの方に、星の素晴らしさを知ってもらいたいですね。

にへどん:
 フクシンさんはお若い頃から大の天文ファンで、『ご自分の名前の付いた星を持ちたい』 と、ほとんど毎晩、星の観測をしてということですね。

フクシン:
 もう、ほとんどそれ以外、何の楽しみも無かったですからねぇ(笑)。
 おかげで昼間は眠くて眠くて、仕事先の町工場ではよく失敗をしては社長さんから怒られてましたよ。
 でも、そのおかげで一度、宇宙からの侵略計画を事前に探知して、地球防衛の役に立ったことだってあるんですよ。

にへどん:
 もちろん、よく知っていますよ。『星にカモフラージュした円盤を使っての侵略』 ですよね。
 たしかその通報での功績で、フクシンさんは勲章をもらっていますよね。

フクシン:
 よくご存じですねぇ。そうです、『ウルトラ勲章』 をいただきました。それ以来、アマチュア天文家としての名声も上がり、雑誌への連載記事の仕事や、講演会に呼ばれたり、プラネタリウムの解説員をするようになったのです。
 おかげで、町工場の仕事もやめて、天文一筋で生活できるようになりました。それはとてもありがたい事だったのですが、実は問題もあるのですよ。

にへどん:
 え、どういうことですか?

フクシン:
 実は、今日はそのあたりもお話したくてインタビューをお受けしたんです。
 その 『円盤の侵略』 のときにボクに接触してきた宇宙人がいたのです、はじめは 『地球人の子供』 の姿をしていましてねぇ。
 当時のボクは自分の不甲斐ない人生に辟易していましたから 『星の世界に行ってしまいたいよ』って、つい気を許してその宇宙人が変装した子供に愚痴をこぼしたんですよ。
 それでどうやら彼はボクを宇宙へと連れて行こうと考えたみたいなんです。

にへどん:
 その時は、フクシンさんの報告によって地球防衛の組織がその宇宙人の侵略を阻止できたので、フクシンさんは宇宙にさらわれなくて済んだというわけですね。

フクシン:
 確かにボクはさらわれなくて済んだのですが、その後、ボクと関わって、ボクから星の話を聞いた人の中には、行方不明になってしまった人たちがチラホラとでてきたのです。
 当時ボクが住んでいたボロアパートの裏の 『自動車修理工場のおじさん』 も、『近くの食堂の若旦那』 も、ある日突然、いなくなってしまったのですよ。
 二人とも、ボクの星の話の熱心なファンで、ボクの話を聞くことで 『星は汚れていなくてキレイだ』 『星の世界に行ってしまいたい』 っていうのが口癖になっていたのですが、もしかしたら、そんな彼らの脳波を宇宙人が捉えて、連れ去らったのかもしれないんです。

にへどん:
 そんなことってあるんですか?

フクシン:
 ボクもそんなことを考えるようになったのは、ここ1・2年なんです。
 10年ぐらい前からプラネタリウムの解説員を始めたのですが、お客さんがその後、行方不明になってしまうということが何度か起きていたのですよ。
 警察から 「プラネタリウムに行くと言って出掛けたが、その後、帰って来ないが心当たりはありませんか」 と職務質問をされたんですが、当然、心当たりなどあるわけないじゃないですか。
 その後、他のプラネタリウムからちょっと良い条件で引き抜かれたので、そんなことすぐに忘れていたのですが、その新しいプラネタリウムでも行方不明の事件がおきたのです。

にへどん:
 それが、宇宙人による誘拐だと、お考えになっているのですね。

フクシン:
 最初に働いていたプラネタリウムで結構人気がありましたので、引き抜かれた次のプラネタリウムでは、大々的にボクのことを宣伝していただきましたので、嬉しいことに連日、満員での上演だったのです。
 ところが、上演が終わり会場が明るくなると、座席に空席が見えることがたまにありました。
 最初は 「上演途中に帰ったんだなぁ」 と思っていたのですが、ある日、また警察からの連絡があって “プラネタリウムへ行くと言って出かけたが、その後、行方不明になった” ということを知らされたんです。

にへどん:
 先の自動車修理工場のおじさんや食堂の若旦那の例からすると、“フクシンさんの星の話に感動した人の脳波を宇宙人がキャッチして、彼らを連れ去らった” ということなのでしょうか?

フクシン:
 ボクもそう考えるようになったのです。
 それで怖くなって、そのプラネタリウムを辞めたのですが、何しろ、ボクは星以外なにも知らないので、また再びプラネタリウムの解説員になり、そこでも、行方不明事件が起き、そしてプラネタリウムを変える、ということが起きているわけです。
 2カ月前にこの 『K地区』 の 『NoAプラネタリウム』 に来たのもそんな理由からでした。

にへどん:
 以前、フクシンさんの報告で地球侵略を阻止された宇宙人が、今度は、フクシンさんの周りで 『星の世界に行きたい』 と考えている人の脳波をキャッチして、宇宙へと連れ去らっているということでしょうか。

フクシン:
 いや、たぶん別の宇宙人じゃないかと思っています。
 と言いますのは、ボクを宇宙へと連れて行こうとした宇宙人は “円盤を使って連れ去らう” という手段を取ろうとしていたのですが、その後、実際に行方不明になった人たちは、プラネタリウムの会場や街中から、突如として消えてしまったのです。
 つまり、連れ去り方が違うので、別の宇宙人じゃないかと思っています。

にへどん:
 まるで 『電送装置』 を使っての誘拐のようですね。 

フクシン:
 まさにそれです!
 その宇宙人が、地球人を奴隷として使うために “電送誘拐” しているのではないかと考えていたのです。
 しかもその考えは、これから話すある事柄により、事実だと判明しました。

にへどん:
 つまり、彼らは遠く離れた星から、『星の世界に行きたい』 という地球人の脳波を検知して、ピンポイントで電送しているということですね。
 とても恐ろしい話ですが、フクシンさんが事実だと判明したのは、どういう理由からですか。

フクシン:
 実は、その星から逆電送で地球に逃げてきた子供がいるのです。
 その少年は、その星で自転車に乗っていて、ダンプカーにはねられそうになったのですが、そのときに彼が発した脳波を偶然、電送装置がキャッチして、地球に逆電送されたというわけです。
 その少年の話では、彼は、地球から電送された両親からその惑星で生まれたらしく、いわゆる二世ですよね。
 そして、誘拐されているのは日本人だけで、なのでその惑星では 『日本語』 が使われているということも教えてくれました。
 やはり奴隷を選ぶ際に、勤勉な日本人をターゲットにしたのでしょう。

にへどん:
 ちょっと待ってください。今、思い出しましたけど 『電送装置』 と言えば、かつて 『シリウス系第7惑星』 からの宇宙人が地球を侵略してきた際に開発されましたよね。
 その時の宇宙人は、一人の地球人の英雄的な活躍で “他の時空に電送された” と言われていますが、そのときの宇宙人と何か関係があるのでしょうか?

フクシン:
 まさにその通りです。
 ご存知の通り、その時に “他の時空に電送された宇宙人” というのは、当時、『キョウナン大学のニワ教授』 に変装していた『シリウス系第7惑星人』 です。
 逆電送された少年の話によれば、その宇宙人は電送中に肉体にかなりひどいダメージを受けてしまい、それで自らの肉体を機械化させて復活し、その後、数多くのロボットをつくり、ロボットの国家を作ったのだそうです。
 ただ、やはりそれだけでは国家の運営は難しいらしく、得意の 『電送装置』 を使って地球人を誘拐しているというわけです。

にへどん:
 とても恐ろしい話じゃないですか。
 彼らは 『星の世界に行きたい』 という地球人の感情を利用して、自分たちの世界で奴隷として働かせようとしているわけですね。
 私たちはどう対抗したらよいのでしょうか。

フクシン:
 まずは “自暴自棄で他の世界へ憧れる” のではなく、“今、生きている世界で一生懸命生きよう” という心を持つことが大切だと思うのです。
 なので、最近ではボクは 「星も美しいけど、その美しい星を楽しむためにも、この地球で一生懸命生きて、この地球をより素晴らしいものにしていく必要があるんだ」 という趣旨での解説を心がけているんです。

にへどん:
 まずは “我々の心の隙間に宇宙人がつけいる隙を与えない” ということですね。それはとても大切なことだと思います。
 それにしても、逆電送された少年はどうされているのですか?

フクシン:
 実は、知り合いに、地球防衛の某機関で働いてる方がいましてね。先ほど話した 『ウルトラ勲章』をもらったことがきっかけで知り合いになった方ですが、彼らの元でかくまってもらっています。
 そして、その少年の話を元に、その星の位置を割り出しました。まさに今、その星を目指して、地球人奪還の作戦を遂行しようとしているところです。

にへどん:
 一刻も早い解決を期待したいですね。それにしても本日はとても興味深いお話をありがとうございました。


【ご参考までに】
・フクシンさんは、ウルトラセブン第45話「円盤が来た」の登場人物で、地球の少年に変装したペロリンガ星人に「星に行きたい」と愚痴をこぼしたことが原因で宇宙に連れ去られそうになった人物。
・インタビュー中のフクシンさんのセリフは第45話中のセリフの流用もしくはオマージュ。
・『ウルトラ勲章』は第43話の中で、宇宙人の侵略を事前に察知した功績で、実際にフクシンさんが授与されている。
・インタビュー中で登場した「自動車修理工場のおじさん」や「食堂の若旦那」も同上の登場人物。
・ニワ教授は、ウルトラセブン第29話「ひとりぼっちの地球人」の登場人物で、伝送装置を開発し人類を拉致しようとしていた「プロテ星人」。
・ニワ教授とともに伝送装置を開発した助手の「イチノミヤ」へのインタビューも このマガジンに掲載中
・ニワ教授を演じた成瀬昌彦氏は、ウルトラセブン第43話「 第四惑星の悪夢」で人類を奴隷化しているロボット長官も演じている。
・インタビュー中に登場した「ダンプカーにはねられそうになった少年」は上記第43話の登場人物。
・『K地区』 の 『NoAプラネタリウム』は、地球を破壊しよとして地球に送られたが、そのまま地球に置き去りにされた「マゼラン人  マヤ」が地球で営む施設。マヤに対する印旛ビューも このマガジンに掲載中。これは、ウルトラセブン第37話「盗まれたウルトラ・アイ」のオマージュ。


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