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生成AIに対する偏見と既得権者のエゴ

ボクが委員として参加している「文化審議会 著作権分科会」が、昨日2024年3月19日に開催された「第69回分科会」をもって「第23期」が終了しました。そして当日の分科会における最大のテーマが「AI と著作権について」だったのです。

正式な議事録が後日発表される予定ですので、今回は「発言者の氏名」や「詳細の発言内容」は伏せ、「ザックリとした内容」と、それに対するボクの「これまたザックリとした感想」を書きたいと思います♪

《音楽関係者からのご発言》
1.ChatGPTなどは、文章作成の補助として「業務の効率化」に役立つが、
2.AIを使った楽曲制作や美術製作には「意味を見出せない」。
3.AIを使った楽曲制作は「制作能力がないシロウト」が悪戯に意味のないものを作るだけの行為だ。そうした作品を市場に出すことは、音楽文化に悪影響しか与えない。
4.こうした生成AIによる音楽作品が出てくることで、音楽家の職業を奪うことにもなる。

《これに対して、ボクはどう感じたかというと》
1.文章作成にAIを活用することが「業務の効率化」になるのと同様に、“放送番組や配信番組を作っている方が、雰囲気にあったBGMを簡単に作ると” という行為も「業務の効率化」そのものなのではないか?
2.楽曲制作も他の創作活動と同様に、決して「プロフェッショナルの先生方」のみが行う行為ではない。そもそも人間は「誰でも創作を楽しむ存在」なんじゃないのか?
3.この方の考え方だと「ChatGPTでの文章作成機能は文筆家やライターの仕事を奪う」ことになると思うのだが、この先生は「ChatGPTは業務の効率化に役立つ」とだけ言及しているのは、視野が狭いのではないか?
4.これは単に「AI活用は便利だが、自分の専門分野におけるAIの活用は許さん」というお考えなのか?

特にボクはUGCを応援する仕事を長年続けてきたこともあり、「創作はプロフェッショナルの先生だけのもの」とでも言っているような考え方には、かなり違和感を感じるのです。

《会議では珍しくボクは黙っていました》
普段はこの会議体においてかなり調子こいたことを発言するボクなのですが、今回は、前述の委員の方のご意見があまりにも強烈であったため、発言をするのを辞めました。
なんか、ここでボクが発言すると、結構「ケンカ腰」になってしまいそうだったので・・・。

《もちろん創作者の権利は守るべきです!》
ボクは20年近くに渡り、ボカロPさんなどの個人クリエイター(前述の先生が言われるような「シロウト」という表現は使いたくないです)の権利を守る活動をしてきましたので、創作者の権利は心から大切だと思っています。

《とても素晴らしいご発言をされたので紹介します》
1.生成AIに関しては、その問題点が具現化されていないものが多い。にもかかわらず必要以上に大騒ぎをしている感がある。
2.なので「今回のレポート(今期の文化審議会の意見をまとめたレポート:別途、文化庁サイトに掲載されると思います)」にあるような、生成AIの課題や問題点に関しては十分意識をしながらも、性急な結論を出すのではなく「様子を見よう」というスタンスは、現時点では正しいと思う。
3.一言で生成AIと言っても、様々な種類のものがあるし、様々な使い方がある。なので「ジャンルごとに(使用する分野や、使用方法ごとに)」その問題点や課題などを分析していくべきである。

この方の発言のおかげで、ボクはだいぶ落ち着きましたねぇ♪ 至極まっとうなご意見でした。この方のご発言で、これまでの「何が何でもAIケシカラン」という「ヒステリックな雰囲気」が会議室から消え去った感じがしました。

こういう大人の意見を言える方は素晴らしいですねぇ。どなたのご発言だったかは別途、議事録をご覧になってください♪

《AIを使った創作活動をされているクリエイターからのご発言》
1.生成AIは、アート業界に新たな可能性と物語とをつくってくれている。
2.生成AIの活用によって、アシスタント的な作業をしている人は、確かに仕事を奪われるかもしれない、
3.しかし、アート分野の人にとっては AIは面白いツールだと思う。

特に「新たな可能性と物語とをつくってくれる」という部分、実に素晴らしいです! この方、実に素晴らしいご意見をお持ちの方で、是非、次の「ボクが主催する生放送」にもご出演いただきたいですねぇ。

《生成AI反対者には法律改正を求める声もありました》
1.現行の「著作権30条の4」の通常の解釈では、「AI学習」や「作風の模倣」は著作権利用にあたらないとされているが、この法律自体が創作文化を奪うものである。

このご意見には、いろいろと感じる部分が多いです。

繰り返しますが、ボクは創作者の権利は大事だと思っていますし、それを守る活動を続けてきています。しかし同時に「技術の発達により、人間の意識や、社会や文化も変わっていく」のは当然だと思うのです。

《慎重さは必要だが、これまでの状況に固執したくない》
1.新しい技術の誕生にともない、「新しい考え方」や「新しい法規制や法解釈」が必要になってくるので、過去の風習や法規制に固執してはいけない
2.新しい技術の誕生により、「既存の仕事の喪失」や「新しい職業の誕生」は当たり前のように起こる。このことをキチンと認識したい
3.しかしそのうえで「救済処置」は必要だと思う
4.しかしなによりイノベーションに対するアレルギーは払しょくさせたい

ボクの考えは上のような感じです。

人間というのは一方で「外の世界を探求し、新しいことにチャレンジする存在」ですが、その一方で「過去にこだわり、変化を避ける存在」でもあるわけです。

この「生成AI問題」には「これからの人類はどう進んで行くのか」のエッセンスが含まれているようで、そういう意味でも目が離せないんですよねぇ。

ボク自身の「生成AIに対する考え」も、日々、変化しているような気がして、そうした「自分自身の変化」にも興味があるんですよ♪


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