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東日本大震災 開かない踏み切り

明日は3月11日。あの大地震とそれに続く福島原発事故が日本の全てを変えた…いや、今まで気がついていなかった日本の矛盾・破綻・腐食・劣化といった全てのマイナス面を白日にさらしたような気がする。

そんな中で、色々な出来事や色々な言葉にも出逢ってきたが、個人的には、ある中高年女性の言った言葉が今でも一番の衝撃として殘っている。

それは、大地震の際、被災地で鉄道の踏み切りが電車も来ないのに閉まってしまい、避難の妨げになったという問題を取り上げていたテレビのニュースのひとこまだった。

ある被災地の踏み切りでは閉まった踏み切りのせいでクルマの大渋滞が起こり、そこへ大津波が来襲。渋滞の中にいた何十台ものクルマが流され、何十人もの人が亡くなったという。

その渋滞の先頭、閉まった踏み切りの前でクルマを停めていた女性は、何十分も踏み切りが開くのを待っていたのだが、その横をたまたま歩いて避難しようとしている知り合いの女性が通り掛かり、
『何でこんな所にいるの!すぐ逃げないとそこまで津波が来てるのよ!』
と言われ、クルマを乗り捨てて踏み切りの向こうの高台に逃げ、一命を取り留めたという。

テレビ番組の記者は、この女性を探し出し、
『何で何十分も踏み切りが開くのをずっと待っていたのですか?』と問うた。

すると、この女性は…

『だって、踏み切りってそういうもんでしょ…』

と平気な顔で答えた。

この女性が開かない踏み切りで何十分も待っていたせいで大渋滞が起こり、後ろに並んでいた何十人ものクルマが津波で流され、何十人もの人が命を落としたのだ…。

もしこの女性が無理にでもクルマで踏み切りを突破していたら…
(※そもそも踏み切りの遮断機は安全の為、クルマで押して通れるようになっている)

もしこの女性が、あんな大地震の後に電車が動く事などない事を知っていたら…

いや、もしこの女性が「電車は本当に来るのかしら?」と少しでも疑っていたら…

「このまま待っていたら渋滞して大変な事になるかも」と少しでも想像していたら…

私はこの女性だけを責めているのではない。

この女性の後ろにも、同じように踏み切りが開くのを待っていたクルマがいた筈だ。そのドライバーがもし私が上に書いたような事を考えていたら、この女性を叱り飛ばしてもクルマで踏み切りを突破させた筈だ。

そう、この女性の後ろにいたドライバーも、この女性と全く同じく、何も考えず、ただ踏み切りが開くのを待っていたのだ。

そして、その後ろのドライバーも

…そのまた後ろのドライバーも

…そのまたまた後ろのドライバーも

…全員が何も知らず、何も考えず、何も想像せず、開かない踏み切りが開くのを待っていたのだ。

そして、終わってみれば何十台ものクルマが流され、何十人もの命が失われた。

もちろん、これには大地震による「正常性バイアス」といった、危機状態特有の心理メカニズムも影響はしているだろう。

しかし、それ以上に、「踏み切りが閉まっていたら開くのを待つのが当然」という、単なるルールを覚え、守るだけで「思考停止」をしてしまい、「一体なぜ踏み切りが閉まっていたら開くのを待たなければいけないのか?」という、ルールのそもそもの理由を考えようともしない「日本人の愚かさ」が見てとれる気がするのだ。

この「思考停止」は、この問題に留まらない。

原発事故でも、TPPでも、消費増税でも、モリカケや財務省の文書改竄、不正統計の問題でも、『政府がそう言ってるんだから…』とか、『テレビや新聞にそう書いてあるんだから…』という所…言わば政府、官僚やマスコミが自分たちの都合で閉めた「踏み切り」の前で停まってしまい、それ以上は何も考えようとしない「思考停止」の国民が日本の大多数なのだ。

彼等は政府やマスコミに言われた通り、踏み切りが開くのをただ待っているだけで、自分たちをどんなに危険な大津波が襲おうとしているのかも気づかないし、考えようともしない…

開かない踏み切りの前で何も考えない、何も考えようとしない愚かな国民はもう滅んでいくしかないのかも知れない。

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