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辺野古に基地を作りたがっているのは誰か?

 昨日、国会で防衛省は軟弱地盤が指摘されている辺野古の土壌改良工事だけで3年8カ月かかるとする報告書を提出する一方、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画について、全体で何年かかるのか、一体いくらの費用がかかるのか、工期や総事業費を示さなかったことが問題になっている。

  「いくらかかるのか、いつ完成するのかも判らないけれど、普天間飛行場の危険性機除去の為には辺野古に基地をつくるしかない」…これが安倍政権の、それこそ県民投票などでも示された沖縄県の民意を無視した意志ということなのだろうが、そもそも辺野古に基地を作りたがっているのは本当は誰なのか?ということを考えてみたい。

 先ず時間軸を辿れば、2006年(平成18年)5月1日、小泉政権の時代に2014年(平成26年)までに辺野古を含む大浦湾周辺に代替施設を建設して、普天間飛行場を移転させるという「再編実施のための日米のロードマップ」が決定された。ここから紆余曲折はあるものの、今の辺野古の海を埋め立てて新基地を作り、普天間飛行場を移転、その後に返還するという計画になった訳だが、実はこのロードマップにはその前の段階があるのだ。

 ソ連崩壊による冷戦終結後、米国は全世界に展開する米軍の再編計画に着手してきたが、2003年4月には米軍再編の全体計画を示す「再編計画指針」というものをまとめた。この中には日本に駐留する在日米軍の再編計画も含まれているのだが、その中には「沖縄に駐留する海兵隊のグアム移転」というものも含まれていたのだ。実際、2004年からは日米政府間で沖縄本島に駐留する海兵隊を削減して、グアムに移転することになり、その費用負担も話し合われて来た。そしてその中で出て来たのが普天間飛行場の移設と返還の話ということ。

   そう、つまり“米国の都合で沖縄の海兵隊をグアムに移転することにしたので、海兵隊が使う普天間飛行場は返還してもいい。その代わりに海兵隊のグアム移転に掛かる費用を日本にも負担しろ”というのが当初の話だったのだ。実際、グアム移転に伴う施設、インフラ整備費103億ドルの内、日本側が半分以上の61億ドルを負担。更に、空き家になる沖縄の海兵隊関連施設の補償費用まで日本が28億ドルを上限に支出する、という項目が2006年のロードマップには盛り込まれている。

    このようにそもそも普天間飛行場返還の代償は「海兵隊のグアム移転の費用負担」だった筈が、日米政府の協議の中でいつの間にかそこに「普天間飛行場の代替施設の建設」というものが紛れ込むようになり、その代替施設として辺野古の海を埋め立てて新基地を作る、という今の計画が出来上がるのだ。

   この経緯を考えて来ると、辺野古に基地を作りたがっているのが米国、米軍ではないことがよく判る筈。日本政府がグアムに移転しようとしている海兵隊に沖縄に少しでも残って貰う為に新しい基地を作って提供しようとしたのだし、それを辺野古に作ることで埋め立てと建設という莫大な工事利権を得ようとした…つまり、辺野古に基地を作りたがっているのは本当は日本政府なのだ。

    言い換えれば、辺野古に新基地を作ることは米国に普天間飛行場を返還して貰う為の唯一の条件などではないし、この二つはリンクしない。普天間飛行場の危険性除去や返還は辺野古に基地を作ることとは全く別の解決策が存在するいうことを意味する。

    昨日、米国のネオコン系シンクタンククで、「ジャパンハンドラー」が巣くうCSISに安倍が3億円もの税金を支出していた問題について書いたが、そのジャパンハンドラーの一人、ジョセフ・ナイは2014年には沖縄の新聞にこんな寄稿をしている。

    彼は“中国のミサイルなどの能力が進歩してきて、沖縄にいる海兵隊などの駐留米軍が危険になって来ているから、グアムやオーストラリアに移転させて、沖縄にはローテーションで時々、来るようにすべきだ”と言っている。これは彼だけの考えではなくて、最初に言った米軍の再編計画の根本になっている考え方。中国のミサイルなどで瞬時に攻撃される沖縄から台湾・フィリピンを結ぶ「第一列島線」ではなく、その外側のグアム・サイパンからオーストラリアを結ぶ「第ニ列島線」に米軍を撤退させ、中国封じ込めにあたるというものなのだ。

   これを考えれば、ますます米軍、米海兵隊が辺野古に新しい基地など必要としていない事が判る筈だし、それこそ辺野古基地建設が本格化した2016年度からナイなどが関連するCSISに寄付するカネを安倍が急増させたのも、こういう「辺野古に基地を作って欲しがってなどいない」という米国、米軍の本音を出さないにように、口封じをする為だったという推察も、個人的にはあながち間違ってはいない気もするのだが…。

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