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【日本遺産認定地域インタビュー】鎌倉は観光客にも住民にも優しい街

執筆:日本遺産普及協会インターン 高瀬

はじめに
今回は鎌倉市観光課のお二方にお話を伺いました。観光に対する想いや工夫など、魅力がたくさん感じられました。

鎌倉駅西口から徒歩5分の鎌倉市役所を訪問しました

日本遺産に認定される前から「鎌倉」は認知度が高いと思いますが、日本遺産に認定されたことで変化はありましたか?また、どのように活用していますか?
鎌倉市の観光の課題として、「オーバーツーリズム(キャパシティ以上の観光客が押し寄せること)」、観光の消費額の頭打ちがあります。
その中で、住民や観光客の方々の満足度を向上させ、観光客にはより長く滞在いただくなど、ただ観光客数を増加させるよりも、質の高い観光を目指していきたい、という現状があります。
日本遺産に認定されることによる情報発信によって、これまではそこまで注目されていなかったスポットも注目されるようになります。
観光客の方の分散化が起こることにより、滞在時間の増加による消費額拡大や観光客、住民の方々の双方の満足度向上が期待できます。
すでに知られているスポットでも今まではあまり知られていなかった面も日本遺産認定により知られるようになることで、鎌倉の新たな魅力の周知に繋げていきたいと考えています。

住民の満足度というお話がありましたが、鎌倉市民の方々であるという誇りというものは強いのでしょうか?
実感として住民の方々とお話をする際に、鎌倉の街並みを大切にしているのだなということを感じます。
市民協働事業という、市民団体等の方々と協力して動いていく取り組みもありますので、いろいろな面で市民の方と一緒に観光を盛り上げていきたいと考えています。

市役所がある鎌倉駅西口。のどなかな雰囲気

小中学生に見てほしいスポットはありますか?
日本遺産ガイドブックで鎌倉のストーリーを学ぶことができます。
鎌倉時代が一番有名だと思うのですが、鎌倉時代だけではなく近代の建築や、鎌倉にいらっしゃった文人の方々が考えた行事や文化も今も鎌倉に残っています。
そういったいろいろな要素がモザイク画のように組み合わさっているストーリーが鎌倉の日本遺産です。
文化や行事が今も残っているのはこれまでの住民の皆様が守ろうとしてくださったからです。
鎌倉文士などの著名人だけでなく、住民の方々によって守られてきた鎌倉の街並みや行事を見ていただいて、いろいろな方が保存や保護に関わってきたんだなということを学んでいっていただけたらと思います。

鎌倉市を観光する時のパンレットやポスターがたくさんあると思うのですが、こだわりポイントなどはありますか?
鎌倉にいらっしゃる方は幅広い年齢層ですので電子だけでなく紙媒体でも情報を発信していく必要があると思っています。
また、様々な国籍の方や特性の方もいらっしゃいますので、外国語版のパンフレットや、点字のパンフレットなども作っています。市民団体の方々と連携しながら作っているものもあります。

鎌倉市民の方々の観光客に対する理解度が高い印象がありますが、実際どうでしょうか?
鎌倉市では、公共の場におけるマナーの向上に関する条例を制定しています。
マナー条例に関するリーフレットを作成し、学校や観光客からのパンフレット等の資料請求があった際に同封したり、マナー周知の看板を立てたりして、マナーについての周知を図っています。
市民の方も観光客の方もどちらの満足度も大切だと考えています。

私自身、観光で鎌倉に伺った際、さまざまな看板や声がけを目にしました。一つ一つの声がけや取り組みが、マナーの向上につながっているのではないかと感じます。

江ノ電と親和性があると思いますが、どのように協力をしていますか?
GW中に江ノ電がとても混むので住民や鎌倉市内にお勤めの方などが優先的に電車に乗れる実証実験を行なっています。
そういった取り組みを鎌倉市と江ノ電で協力しながら行っています。

ここでも住民の方も大切にしているのが感じられますね

GWは特に江ノ電に乗車するまでに並んでしまうので、中々自宅に辿り着けないという状況になりかねません。
このため、事前にチケットを希望者に発行してそれを持っている人は優先的に江ノ電に入れるというものです。

住民の方への観光に対する理解度というのはそのようなところからでも大切になってくるのですね。

江ノ電は無人駅の駅が多いと思いますが、トラブルが少ないように思います。実際どのような対策をしているのですか?
無人駅でのトラブルはあまり聞かないですね。
観光課では先ほど挙げた、マナー条例などで観光客のマナーに対しては周知を図っています。
また、江ノ電と市の交通の部局とで、協議会を作り、混雑している鎌倉高校前駅の踏切付近に交通誘導員を配置してトラブル防止や安全管理、交通整理に努めています。

日本遺産に登録された際の補助金はどのように活用されましたか?
日本遺産鎌倉ガイドブックと動画の作成に活用しました。
(詳しくは以下を参照)

鎌倉の文化財を守るためにどのような取り組みを行なっていますか?
指定文化財の保存修理等については教育委員会文化財課で相談を受け付けています。
日本遺産の構成文化財の中でも多くが重要文化財等の指定を受けています。修理にはとてもコストがかかってしまうことがあるため、国や県、鎌倉市で支援を行っています。
さらにふるさと納税は、使途別で寄付ができるのですが、一番多いのが「歴史的遺産や文化財を守るため」という項目です。
市民の方も、もちろん今あるものを守っていくという想いがあります。
それに加えて市外の方々も鎌倉の文化財を保護しようということで寄付や支援をしていただいている状況です。

鎌倉市の魅力が国民全体に伝わっているという状況ですね

歴史を見るという観点ではどのような巡り方がありますか?
4つのテーマに分けてルートを選定して、日本遺産周遊マップとして情報を発信しています。
歴史を学ぶという観点であれば、鎌倉に「歴史文化交流館」という施設があります。
鎌倉時代がメインではありますが、古代から近世まで幅広く展示を行っていて、鎌倉の通史を学ぶことができます。
また、2024/4/1に 日本遺産「いざ、鎌倉」 観光案内所 を開設しました。
そこに行っていただくとマップや構成文化財の施設のパンフレットもあるので、日本遺産を知りたいという方がは、ぜひ訪れてみてください。

日本遺産「いざ、鎌倉」観光案内所
マップや構成文化財のパンフレットが揃う

観光案内所へのアクセス
JR鎌倉駅西口時計台広場横。西口を出て右に進んだ先の「鎌倉茶々 御成店」さんの隣です。
「鎌倉歴史文化交流館」と同じ方面ですので、併せて寄ってみてはいかがでしょうか?

終わりに
鎌倉は日本人であれば知らない人がいないくらい認知度のある街です。観光の街でもあり、住民の大切な住処でもあります。そんな街で観光客と住民の両方の満足度を上げるために工夫がされていました。私も取材させていただいて、より鎌倉の実態を知り、鎌倉の街がもっと魅力的に感じるようになりました。

日本遺産「いざ、鎌倉」~歴史と文化が描くモザイクの街へ~(#25)
鎌倉市の様々な取り組みをふまえ、ぜひ日本遺産「いざ、鎌倉」をめぐってみてください。

運営:日本遺産普及協会


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