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アメリカの多言語対応 優良編

                             松井ゆかり

当会のブログでは、度々自治体の謎の英語HPについて問題提起しているので、米国在住の私は最近目にしたアメリカの多言語対応の例を紹介したいと思います。

横綱級! 連邦政府の国勢調査
最近見た中で、「最も気合が入っている!」と感じたのは、米国国勢調査のホームぺージ。対応言語のリストを見ると、一体これはどこの言葉?というものまでの59か国語対応に加え点字、手話バージョンもあります。さすが移民と多様性の国。あっぱれです。

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日本語(リストの下の方なので上記画像には含まれておりません)を選ぶと、一番上に「これは抜粋かつ翻訳版です。ここをクリックすると英語およびスペイン語の完全版に戻ります」と記載されているページに、飛んでゆきます。

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リンクが飛んだ先の日本語抜粋版はなかなか良質。上記ページ以降は国勢調査の意義やデータ利用方が説明され、記入についての詳しい指示が記載されているPDF版も用意されており、英語版を全く読めなくても、これなら記入が可能。

なぜそんなに気合が入っているのか? 戸籍や住民票といった日本ではあたりまえの制度がない米国では、10年に一度のこの調査が、政府予算や各州の予算配賦に直接影響するため「調査に答えない人」がいると非常に困るわけです。移民や外国人は英語での回答が面倒で答えない→カウントされない→予算配賦されない、となりがちです。しかし、実際は各地域で生活しており、公共施設は利用するし、子供達は学校にだって行く。ある小学校の生徒数が予定より増加、ましてや母国語が英語でないとなると、慌てて学級数を増やしたり、ESL(外国語としての英語指導)の先生を雇うために、地元行政が追加費用を捻出するか、それも無理なら、ギューギュー詰め。
このような状況を避けるため「英語が無理なら母国語でいいのでお願い回答だけはして!」となります。

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コミュニティに存在する一人一人をきちんとカウントするためにここまでやるという「気合の入った多言語対応」の例。もちろん連邦政府の潤沢な予算があります。日本語の場合、上記ホームページだけでなく、在米日本人向けの日本語メディアでもCMが流れたり告知が行われていました。多言語に対しても同様と思われます。

ハワイ州観光局
こちらは連邦政府ではなく、州の観光局のものですが、観光客の多い国の言語に絞って、英語、オランダ語、スペイン語、日本語、韓国語、中国語、フランス語の7か国語対応。

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州の経済においての観光依存度が非常に高いゆえ力が入っています。GOHAWAII.COMのホームページで日本語を選ぶとと日本語ページに飛んでゆきます。日本語も自然。

当然ですが、「本当に伝えたい、わかってほしい!」と発信者側が切実に思っている場合、翻訳ソフト丸投げは決して行っておらず、上質な日本語が提供されています。

次回は「あと一息編」をご紹介したいと思います。

                        (2020年11月02日)

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