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#40 - 日記/中塚(Ba.)Vol.1

2020/12/23 (水)_中塚の日記
故郷にて
古典のテスト終わりセカンドストリートで服をいっぱい買った。できることはやれた感じがする。あとは年内に課題を終わらせて帰ること。曲もたくさん作りたいしやりたいことはいっぱいある。細かいことは置いといてやれると思うことはすべて実現する1年にしたい。



2020/12/23の日記へ

中塚さんへ。
新居です。日記を送ってくれてありがとう。他人の枕を借りて自分の夢を見た、とでも言えばいいのか、不思議な気持ちがします。
日記はつけられないタチなのですが、この日の私は卒論を書き、箸休めに手袋を編んでいたようです。この日記からは、あの年末特有のポジティブな巣篭もりの意気込みが伝わってきて、たとえば、精のつくものでも食べたくなりました。かき鍋、とかね。

セカストで買った服は今年も着ていますか。それはどんな服ですか。
冬は嫌いですか。
故郷の冬と東京の冬とは違いましたか。
この頃、よく聴いていた音楽はなんですか。好きだったことはありますか。

当時のぼんやりを、教えてください。

新居



新居さんへ。
連絡ありがとうございます。 日記を書くようになってから、かれこれ6年目になります。まさかこんな形で人に見せるとは思いもしませんでした。日記を読み返し思い出したのですが、この年は上京して1年目の年でした。コロナで人に会えない生活が続いていたので、よく一人で散歩をしながら音楽を聴いていたことをぼんやり覚えています。Frank OceanやJojiやBillie Eilishといったパーソナルなことを歌うアーティストの音楽をよく聴き、自分に重ねて合わせていたような。
 
この年の年末は、よく行っていた古着屋に行くのが気が重く、一人で車に乗り、色々なセカストでアウターを大量に買いました。兵庫から東京にわざわざ持ち帰りましたが、言われてみればほとんど着ることはなくなりましたね。東京の冬も兵庫の冬もそんなに変わらないですが、東京の家で一人で過ごす大晦日ほど冬を感じたことはありません、、。

中塚



2020/12/24 (木)_中塚の日記
たいちと昼焼き肉いちばんに行った。たいちは大学をやめるかもしれないという話をしていてビックリはしたけれど、明日は我が身だなと思った。いつ何時どういう形で自分の状況が変わるかなんて分からないからいつだって想像力を絶やしてはいけないなと思う。関西にいればおのずと何年も前に引き戻される。けれど悪いことばかりじゃない。岸岡君からStrip Jointのベースをたのまれた。本当に何気なく判断したその1つで大きく状況が変わる、その可能性について常に考える必要がある、ストレスはたまるけどその分やりたいことを再確認できる。早く課題を終わらせよう。



2020年12月24日の日記へ。
中塚くん。
お返事をありがとう。でも、私ごとで色々とあって、お返事を書くのが遅れてしまいました。ごめんなさい。

これを書いているのは2月8日で、前は冬の話をしていたのに、春っぽい陽気がここ2、3日続くまでになってしまいました。また寒くなるのかもしれない。
私は、Strip Jointのあなたとして、中塚くんを知っているので、このクリスマスイブの日記には、大きな、重大な瞬間のことが書かれているのだと信じていました。
けれども、ここ二、三日の風変わりな陽気に身をひたし、干豆腐がお湯をぐんぐん吸い取っていくみたいに、心が満ちていくのを感じながら、それは違うのかもしれないと思いました。
何かが変わる瞬間というのは他人が思うほど重大な瞬間ではないのかもしれない、特にそれを目の当たりにしている進行形の本人にとっては。ちょうど、冬の中に春の心地を見つける、そういう感受性くらい、自然で普遍的なものかもしれないと。

どうでしたか? あるいは、どんなふうに振り返っていますか?
それから、この年はどんなクリスマスだった?
感じたことでいいので、覚えていたら教えてください。

新居



新居さんへ。
暖かくなったと思えば、また雪が降ったりと不安定な天候が続いていますね。早く春が来てほしいです。
 
まさしく、この日のことを特別重要な日だというふうには考えていませんでした。例えるならば、旅行の計画を立て、そのことについて想像しているときの高揚感に近いのかなと。あくまでも、日常の中の一つの出来事でしかありませんでした。しかし、今振り返ると何気ない一日や偶然の出会いというものが、自分の人生の方向性を変えていることに気付かされます。そういうことを忘れたくないから日記を書いているのだと思います。
 
この年のクリスマスは、中学の時の旧友と地元で会いました。その旧友が居酒屋の前の喫煙所で寒がりながら、煙草を吸っている景色が何故か頭に焼き付いています。その日のことは「楽しくない訳ではないが感覚が違う」そんな風に日記には書かれていました。その年を境に連絡が取れなくなってしまったのですが、彼もあの日同じことを感じていたのかも知れません。

中塚


続く。


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