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まち・らぼ 菅美帆さん《ケアと表現についての事例 第1回》

漫画:古泉智弘 
自作のTシャツ、バッジ、意思表示カードを身に着ける菅さん

《登場人物:菅美帆さん》

1990年生まれ。イヤーマフ(※1)が大きく書かれた、菅さん作のオリジナルTシャツには、イヤーマフとともに自らの障害名(自閉症・強度行動障害)とその特性が書かれている。積極的に自身の障害について知って欲しい気持ちがあり、その背景には家族間や施設内でのコミュニケーションで大変に苦労してきた経験を持つ。時に他害・自傷行為に至ってしまうこともあり、福祉施設を転々と利用してきた。自身のコミュニケーションの苦労から、障害特性について本などで学び[意思表示カード(以下、カード)]や障害特性を描いたTシャツ、バッジを作成し、人とのコミュニケーションを取るために使用している。

2021年より共生型福祉拠点施設まち・らぼで暮らしている(※2)。子どもと接することが好きで、外出先で子どもと出会うと必ず声をかけて、握手やじゃんけんを求めるほど。

菅美帆さんへの質問

意思表示カード

《登場人物:平永ゆうさん》

(漫画ではお一人として描いていますが、実際には以前菅さんが利用していた複数の施設の支援員が関わっています。)

徳永哲朗さん
菅さんがまち・らぼに来る前に利用していた施設(生活サポート そら倶楽部)の当時の担当職員。インターネット上の画像ではなく、自身の絵によって意思表示カードを作るきっかけを作った。意思表示カードを菅さんの表現として捉え、2019年の上越アール・ブリュット公募展に応募した。

徳永さんへの質問:意思表示カードを、菅さんの表現として取り上げようと思った経緯を教えてください。

A「それまでは(菅さんの問題行為への)対応策が一般的なやり方では、やりにくかったんですよね。菅さんの行為の理由がわからないし、その理由も複合過ぎていて。公募展の記入例にあった、五井雅人さんの[髪の毛を結ぶ行為](※3)を知り、これだ!と思い、菅さんのケア会議(※4)で紹介しました。障害のある人のさまざまな表現を立場のちがう専門家へ広めることで、菅さんの行為を見つめなおせると思ったんです。それまで悪い課題しかなく、煮詰まっていた自分の心持ちに作用しました。」

本間友一朗さん
まち・らぼの支援員。菅さんとは12年前に働いていた福祉施設でも関わっていた経験がある。自身も音楽、折り紙などの表現活動を行っており、まちらぼでも積極的に表現活動の機会を作っている。現在の菅さんの印象が以前に関わっていた頃と比べて、大きく変わったと話す。

本間さんへの質問:菅さんの変化について教えてください。

A「まちらぼの施設が新しくてキレイなこと、自分の部屋が持てたのがよかったのか、今のところ穏やかに暮らしています。私たちとの関係もできてきたからか、だんだんと意思表示カードを使うことは少なくなりました。ただ、外出した際に菅さんから子どもへコミュニケーションする際は、握手やじゃんけんにまつわるカードを必ず使っています。」

調査員あとがき
菅さんは、もともと人とコミュニケーションたくさん取りたいと思っている方だそうです。初めての人でも知っている人の紹介なら、恥ずかしがりながらも積極的。漫画の古泉さんとのやりとりも、嬉しくて笑いながら対応してくださいました。初めてのオンライン上での対面の際、重度知的障害のある方たちが支援を受けながら自立して暮らしているドキュメンタリー映画「道草」についての質問が私たちにありました。唐突に「道草って(映画)知ってる?」その後に質問は続きませんでしたが、障害のある人について知ってほしいと思う菅さんからの印象的な一言でした。

※注釈

1.イヤーマフ・・・防音保護具。もともとは騒音がする場所での仕事に携わる人のための道具だが、大きな音が苦手な聴覚過敏の人が利用することも多い。(参考URL)

2.共生型の施設・・・高齢者と障害者が同居するグループホームの機能を持った福祉施設。(参考URL)

3.五井雅人さんの[髪の毛を結ぶ行為]・・・この企画について

4.ケア会議・・・利用者の複合的なニーズを明らかにするため、ケアマネージャーが進行役となり、専門職種(ソーシャルワーカー、医師、保健婦、看護婦、PT、OT、介護福祉士、ピアカウンセラー等)、市町村の担当者等が参加する会議。(参考URL)

共生型福祉拠点施設まち・らぼ(一般社団法人みらいず)↓


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