VIDEO AVANTURES 第六日


Here is your random fake-giallo:今日のランダムジャッロは…「A Wax Doll in a Frozen Landscape

Directed by Fulvio Lucci

An attractive writer vanishes. An English musician investigates the mystery;and ultimately he discovers the maniac's true identity,but is mistakenly gunned down by the police before he can reveal it. 」


VIDEO AVANTURES 第六日めは…

『ニトラム/NITRAM』(原題『Nitram』/ジャスティン・カーゼル/2021)

NITRAM=MARTIN。
 カーゼルは『アサシンクリード』(原題『Assassin's Creed』/2016)の監督もやった人か。

 死者35人の銃乱射事件の青年の人生、いや半生について。 ジェド・カーゼルの音楽は全肯定/全否定の両方を感じさせるけれど、本作はそれら音楽よりも花火を子供たちに分け与えて厳重注意を受けた後の二トラムが車で鳴らし続けるクラクション、その鳴り止まなさに父親がWhat/is/wrong/with/you? の/ごとにしか発言できない響き(二トラムの激しい抵抗により)、えんえん流れる蜂の響き、二トラムの事故後の激しいだけでない痛々しい響き、ヘレンの死亡後、ヘレンのレコードの遅速プレイ…などの音の響きらがとても強く、音楽を超えて映画の音を支配した。 ラストの銃撃シーンに被害者たちは…という心配を解決するためか人への銃撃シーンは一切ない。
 音たちがあまりに印象的な本作だけれど、観終わっても気になるのはなぜ二トラムは犯罪を犯したのか、について。 1 ヘレンが死ななかったら 2 ヘレンが多額の遺産を残さなかったら 3 二トラムの母親がもしあのような存在でなかったら 4 銃がそんなに簡単に入手できなかったら 5 二トラムにいろいろ話せる友人がいたなら 人によって仮定は違うだろうけれど、わたしは2と5はかなり大きいのではと感じたけれど、それは観た人それぞれが考えているだろう。それについては映画が終わった後も考えてしまうけれど、それと同時に上記の理由なんて映画には何も関係ないじゃないかといううまく言えない感じもかすかに爆発し続けたり。
 ヘレンを演じたエッシー・デイヴィス、母親を演じたジュディ・デイヴィスも見事だが、父親を演じたアンソニー・ラパーリアの演技はさまざまによかった。クラクションを止めるところも含めて。しかし彼の死因はやっぱりよくわからない。 二トラムの母親が映画ではああだけれど、実際にどうだったかはもちろんわからない。そのわからなさも含めて、やはり実際の事件について本作を観て考えるのはあまりに無理がある。 と言っても本作のように実際の事件に基づいた映画を批判をしたいわけではまったくない。というかもっともっと観たいのだ。『アクト・オブ・キリング』(ジョシュア・オッペンハイマー/2013)のような作品も含めて。 ヘレンとの人生が長く長く続いたならとも。 そして何歳になっても花火大好きでいいじゃないかと。 そんなこともフィクションとしての映画に感じたこと。音についてはもちろんのこと。 そしてなぜ二トラムが犯罪をおかしたかについて決して思いつかないことばかりをかなり真面目に考え尽くした映画も観てみたいのだ。上記の理由なんてばかばかし過ぎるみたいな。それはホラー映画でなくてもいいから。

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