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「作家の時間」実践記録(R4・2学期)

2学期も「作家の時間」に取り組みました。なかなか時間の確保が難しく、反省が多かったですが、新たな気付きもありました。今後のより良い実践に向けて記録に残しておきたいと思います。

「作家の時間」とはどういったものか、1学期の実践の様子はこちら↓↓↓

2学期の取り組み

2学期に新たに行った取り組みは以下の3つです。順に説明していきます。

①個別のフィードバック

1学期に作品を提出してくれた子にフィードバックの文章を書いて渡しました。石川晋さんの実践を参考にし、批評文のような形で完成した作品の魅力を1人1人に伝えました。批評とは言ってもプラスのフィードバックです。みんなの前でフィードバックをしてもらいたい子には、そのようにしました。

これは子どもたちの自己肯定感や創作意欲を高めることにつながったと思います。夏休み前に出した作品を読み返し、どんな良さがあったか改めて受け止めていたようでした。そして、同時に2学期の創作へのモチベーションにもつながりました。作品を1学期仕上げられなかった子も、2学期は頑張るぞ!と決意を新たにしていました。

子どもの作品の批評文を書く時間は、自分の語彙力の不足を感じる時間でもあり、また鍛える時間にもなりました。自分自身が書いて伝えることで、その大切さや意味を実感できました。

2学期は全員が作品を提出することができたので、全員に個別フィードバックを書きました。1学期の記録も読み返しながら書きましたが、様々な成長があったことに気づく大切な機会になりました。

②サイレントルーム

静かに書きたい子と相談しながらやりたい子が混在する教室。集中するために場を分けた方がよいと思っていましたが、今までなかなかできずにいました。

そこで、2学期のはじめは、教室横のウッドデッキ(屋根付きで、広さは教室2つ分くらい)をサイレントルームにしました。静かにやりたい子は、机と椅子をウッドデッキに移動させて書きます。クラスの半分くらいの子が移動して静かに書いていました。

「集中しやすかった」と子どもたちに好評でした。また、外の空気を吸ったり学校の隣にある公園の緑を見たりしながらお話を考えたことで発想が刺激された子もいました。

ただ、寒くなってくるとウッドデッキで書くことができなくなり、廊下をサイレントルームにしました。(廊下と言っても、うちの学校はオープンスペースなので、教室とつながっており、仕切りを工夫してスペースを分けることができます。)この方法でも、サイレントルームの効果は十分発揮されました。

③全員提出

1学期との大きな違いは、全員に提出を課したことです。理由は、教科書に物語創作の単元があったからです。1学期は可能な限り提出するということにしましたが、十分な授業時数確保ができなかったため、無理はさせないことにしていました。

2学期も終わりに近づいてくると作品を完成させられる子とそうでない子が出てきました。1学期に完成できなかった子は2学期もなかなか完成に至りません。サボっているわけではありません。一生懸命やっているのに終わらせる馬力が足りないのです。ダラダラと書き続けてしまい、見通しが立たないといった状況に陥りやすい感じがしました。

2学期はそこにとことん付き合うことにしました。「ただ書けばいい」というところに甘んじず、より良い作品にするための指摘をしました。その子固有の書く力の向上のためアドバイスを精選する。指摘する部分を絞る。これこそ、書くことの指導の大事な部分だと感じました。

指摘したい部分がたくさんある場合も、1つに絞ることで子どもには理解しやすくなるし、心に残ります。自分で直したり、考えたりできます。逆に、たくさん指摘して先生が赤で書き入れてしまうと、言われた通りにやるだけになってしまいます。

少し話は逸れましたが、とにかく1人1人にアドバイスするポイントを絞り、作品完成に至るまで、励ましながら付き合いました。そして、全員が提出できました。最後までかかった子たちもとても満足そうでした。私自身も達成感があり、子どもたちと喜び合いました。

お話を終わらせる大切さ

今回、子どもたちが苦労していたのは、お話を終わらせること。1学期は着想や書き始めに苦労している感じがありましたが、2学期の作品は書き出しのレベルが明らかに上がっていました。

一方、書き終わりについては、前述のように困難を感じていた子が多かったようでした。理由は、ミニレッスンでうまく扱えなかったこと(時間の確保とタイミング)でした。楽しく書いていると、いくらでも続けられる感じになってしまうようです。

起承転結についてのミニレッスンが理解できた子や、普段から読書している子はうまく物語を終わりに導くことができていました。3学期は、お話全体の見通しをもって書くようにステップアップを促してみようと思います。(子どもによって異なるアプローチを取ります。)

夏に、毎日小学生新聞が主催する辻村深月さんの物語創作ワークショップに我が子と一緒に参加しました。その中で、創作している物語を1度終わらせることには大きな意味があるという話題が出てきました。この話題はワークショップで印象に残ったことの一つです。

また、はやみねかおるさんの『めんどくさがりなきみのための文章教室』(2020,飛鳥新社)という本でも、お話を終わらせることについてこう書かれていました。

書きかけの物語を、未完のまま放り出すと、癖になる。何がなんでも、書き上げる習慣を身につけよう。

p.225

なかなか物語を終わらせることができない子の中には「つづく」にして、とにかく終わらせる子がいたのですが、もう続きを書く気力なんてないのに「つづく」にするのもやっぱり違う…と葛藤しました。

読書の指導で「読み始めた本は必ず最後まで読む」という指導はしません。でも、どれも読みかけで手放すのではダメで、なんとか読み切る経験も大切にしたい。
同様に、文章を書き始めたら必ず書き上げなくてはならないとは思いません。でも、そのどれかを書き上げること、作品として創り上げることはやはり大事にしたいものです。

そのために教師がいて、子どもたちと毎日過ごし、個性や能力を把握しながらサポートするのだと思っています。

終わりに

今年度、作家の時間を9ヶ月やってきて、「文章を書くとはどういうことなのか」子どもたち1人1人の中に経験が蓄積されてきているはずです。3学期は、その経験を土台として、更なる「書く力」を積み重ねていけたらと思います。

3学期は文集作成を目標としています。子どもたちが文章表現に楽しく取り組めるように、冬休み中に計画を立てたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。