読者に得をさせるのが作者の仕事
崖っぷち作家のニジマルカです。
先日、文章作法について書いたのですが、文章作法を守るにせよ、読みやすく書くにせよ、すべては読者の利益のためです。
今回は「読者に得をさせるには」という話です。
読者は得をしたい
人が本を読むときは、必ず、得をしたいと思って読んでいます。
この場合の「得」というのは、たとえば「面白かった」とか「感動した」とか「知識が増えた」などのことですね。
簡単に言えば、読者の「得をしたい」という要望に答えるのが作者の仕事です。
さて、ここで、読者の利益についてもう少し考えておきます。
結論から言うと、本を読むことで読者が得られる純利益は、以下のような式で表せます。
読者の純利益 = 本から得られる利益 ー 読むのにかかるコスト
とうぜん、利益が多い方が読者のためになりますよね。
ですから、作者の仕事とは、この「読者の純利益」を最大化することだと言えるでしょう。
それがわかったところで、この式の各要素を見ていきましょう
本から得られる利益とは
本を読むことで得られる利益は、ざっくりと3種類ほどに分けられると思います。
1.感情的な利益
「面白かった」「泣けた」「癒やされた」「笑った」「感動した」「すっきりした」などの感情的、ハート系の利益
2.学習系の利益
「知識が増えた」「語彙が増えた」「新しいことを知った」「間違えに気づいた」などの学習系、ブレイン系の利益
3.メタ的の利益
「話題の本を読んでいるという優越感」「難しい本を読んでいるという自尊心」などの行動自体がもたらすメタ的な利益
これらを合わせたものが、本から得られる利益です。
読むのにかかるコスト
また、本を読むにはコストがかかります。
コストは、おおまかに4種類ほどに分けられるでしょう。
1.お金
書籍代、本屋への交通費、ダウンロードの通信費など
2.時間
本を選ぶ時間、読書する時間
3.エネルギー
内容を理解するために消費するエネルギー
4.場所
本を置く場所、保管する空間
これらを合わせたものが、読書にかかるコストです。
読者の純利益を上げるには
さて、読書の利益とコストについてはわかったと思います。
ここで、もう一度、読者の純利益について見ておきましょう。
上で書いたとおり、本を読むことで得られる読者の純利益は、以下の式で表せます。
読者の純利益 = 本から得られる利益 ー 読むのにかかるコスト
作者の仕事は「読者の純利益」を最大化することでした。
そのためにはどうすればいいでしょうか。
式を見ればおわかりのとおり、以下の2つですね。
1.本から得られる利益を上げる↑
2.読むのにかかるコストを下げる↓
作者ができることというのは、実はこの2つしかありません。
それぞれ簡単に見ていきましょう。
1.利益を上げる
書いているものが小説だとすると、できることは「感情的に得られる利益」を上げることです。
つまり「面白くする」ことですね。
面白くするにはどうすればいいでしょうか?
小説は大きく4つの要素に分けられますが、それぞれにできることがあります。
おおざっぱに言うと、こんな感じでしょう。↓
・文章
表現力を上げる
(描写力、説明力、セリフ力)
・ストーリー
構築力を上げる
(スムースな導入、適切な盛り上がり、伏線回収、ドンデン返し、ミッドポイントやクライマックスの大きな盛り上がり)
・キャラ
魅力を上げる
(生い立ち、特徴、ギャップ、明確な動機、行動原理など)
・アイデア
今までになかった新しさを提供する
これらの要素のレベルを上げることで、感情的利益を増やせることがわかると思います。
2.コストを下げる
次はコストダウンです。
利益を上げるより、コストを下げる方が簡単です。
これも書いているものが小説だとすると、できることは「理解するためのエネルギー」を下げることでしょう。
つまり「読みやすくする」ことですね。
読みやすさを上げるには、以下の2つのアプローチがあると思います。
1.文章を適切にする
2.情報提示を適切にする
【文章を適切にする】
・最低限の文章作法を守る
・読者層にあった漢字を使う
・1行の長さ、漢字の開き、改行の多さを調整する
・描写、説明、セリフの分量を調整する
・適切な接続詞で行をつなぐ
・行末の表現が続かないように処理する
・言い回しや表現の難易度を調整する
【情報提示を適切にする】
・必要な情報を、必要なタイミングで、必要な量、提示する
・各シーンで開示する情報を調整する
・情報の不整合や矛盾をなくす
これらのアプローチによって、読者の理解に要するエネルギーを下げ、結果的に「読みのコスト」を下げることができるでしょう。
読みのコストを上げるなら
ところで、作品の性質上、難しい漢字や表現を使わなければならない場合もありますよね。
どうしても読みのコストが上がってしまう場合です。
そういう場合はどうすればいいでしょうか?
考え方は簡単です。↓
「読者の利益になるなら、コストを上げてもいい」
難読漢字や難しい言い回し、雑多な知識の披露などは、読みのコストを上げますが、同時に雰囲気を作り出すことができます。
作り出した雰囲気が読者の利益になると思うなら、コストを上げてもいいでしょう。
先日、文章作法について書きましたが、文章作法についても考え方は同じです。
「読者の利益になるなら、文章作法を破ってもいい」
つまり、すべては「読者の利益になるかどうか」なのですね。
今回のまとめ
「読者に得をさせるには」という話でした。
1.人が本を読むのは得したいから
2.読者の純利益 = 本から得られる利益 ー 読みのコスト
3.作者の仕事は「読者の純利益」を最大化すること
4.最大化するには「得られる利益」を上げ、「読みのコスト」を下げる
5.「読みのコスト」を上げるなら、「得られる利益」も上げる
私が今まで書いてきた小説関連のnoteの内容も、最終的には「利益を上げる系」か「コストを下げる系」のどちらかに繋がっていると思います。
それではまたくまー。
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