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英国紳士は夏目漱石?


『月が綺麗ですね』=『あなたのことが好きです』
というのは日本人ならほとんどが知っている有名な言葉ですよね。

我らがMr.日本文学(と、私は思っている)夏目漱石が言ったとされています。

私はこの言葉、すごく好きです。
すごく相手のことを愛しく思っていて、言いたいことがたくさんあるのに、これしか今は言葉にできない、といった感じがとても心に刺さるのです。

ですが、あまりにも遠回しすぎて、夏目漱石の話を知らない人がいきなり言われても「そうだね」としか返せなさそうだな、と友人がロマンのかけらもないことを話してきたので、今日はここで反論したいと思います。

…なんて書いておきながら、私も友人の「遠回しすぎる」という意見、すごくよくわかります。
私もいきなり言われても、「あ〜そうだね〜」と間の抜けた返事しかできないと思います笑

でも、その返しがきっと正解なのではないかとふと考えました。

それは、私の大好きな「ブリジットジョーンズの日記」の3作目「ダメな私の最後のモテ期」を何度目か鑑賞していた時のことです。

私の愛してやまないコリンファース演じるマークダーシーが、ブリジットと久々に再開したシーンで放つ言葉がとても印象的だったのです。

『世界を救おうと思ってきたが、君が僕の世界だ』


一瞬「ん?」と思ってしまいそうではありませんか?
素直に「君が好きだから戻ってきた」「君のことが忘れられなくて気づいたらここにきてしまった」なんて言えばいいのに、なんでストレートに言ってくれないの?なんて一瞬思ってしまいそうです。

そんな考えがナンセンスなのは、私も重々承知です。笑

ただ、あまりにも抽象的すぎて、いきなり言われてもピンとこなさそうではないですか?

ですがこの言葉にはとてつもない愛が詰まっています。自分のことを世界と表現していることに、最初はいまいちピンときませんが、「君しか僕が守るべき人はいない、僕しか君を救えない、そのくらい愛している」と、伝えたいのにそんな言葉では足りないくらいだからこう伝えたのだと思うと、愛おしさ100点満点ではないですか?

このセリフだけではありません。
他にも、私の大好きなイギリス映画『ラブアクチュアリー』でもこんなセリフがあります。

密かに思いを寄せていた女性、ジュリエットが、親友の妻となってしまったマーク。そして秘めていた思いをジュリエット本人に悟られてしまう。
このままでは親友とも、ジュリエットとも気まずいまま、自分の気持ちにも区切りがつかないと考えたマークは、スケッチブックに思いを綴りジュリエットに会いに行き最後にこう書かれた紙を見せます。

『君は完璧』


決して「好き」とストレートには伝えない、ただ僕にとって君以上の人はいないし、君は完璧な女性だよ、と伝える最高の言葉です。

私はこの表現に『好き』というワードに収まりきらない愛と優しさが詰まっていると感じ、毎回涙をこぼしてしまいます。

実はこの『君は完璧』という表現は007の最新作でもジェームズボンドが最後の言葉として発しています。

ラストシーン、自身の娘に対し『彼女に愛してると伝えてくれ』だったり、『父は娘を見守っている』など、伝えたいことはたくさんあったはずです。

でもそこでやはり、『彼女(娘)は完璧だ』と伝えてジェームズは死を迎えます。

私はこの表現、本当に大好きです。
先述しましたが、自分のこの深い思いが好きとか愛してるなんてありきたりな言葉では伝わらないから、『完璧』と伝えている、といった感じがとてつもなく好きです。

と、長々と例を挙げて説明してしまいましたが、英国紳士の表現、夏目漱石の『月が綺麗ですね』に通づるものがあると思いませんか?

伝えたい言葉はたくさんあるし、どれだけ相手のことを愛しいと思っているかと言われれば、気持ちがとめどなく溢れてきますが、ふさわしい言葉が見つからない。

また、英国と日本の国民性にも共通点が見られます。

日本人はよく、寡黙でシャイ、と言われることが多いですが 英国人も寡黙でシャイ。そして素直に気持ちを伝えるのが難しい、と感じる人が多い傾向にあります。

それが両国とも島国だからなのか、大陸国ではないからなのか、理由はわかりません。
ですがまた、邦画もイギリス映画も登場人物の感情の揺れ動きを上手く写し、全てを台詞として表現しない傾向にあります。

そして両国ともに生真面目な性質が見られることが多いため、相手の気持ちを考えすぎて遠回しに発言してしまうことが多いですよね。
(それが回りくどいと言われて仕舞えばそうなのですが。笑)

そう考えていくと、どことなく夏目漱石の言葉と英国紳士たちの台詞にシンパシーを感じてしまうのです。

回りくどい、だから噛み砕かないとわからない。
でも噛み砕いていく過程で、どれほど相手が自分のことを愛おしく思っていたのか考えさせられる。
その過程にドラマがありますよね。
そこが、イギリス映画の良さだと感じます。

恋愛映画に限りませんが、どんなジャンルを見ても、イギリス人の言葉の奥深さには 日本文学を読んだ時のような感覚にさせられます。

一回見ただけでは、読んだだけでは終わらない。
噛み砕いていく過程に楽しさがある。
考える楽しさがある。

だから最初は、そんな風に言われたとしても『あ〜うん』なんて間の抜けた返事でもいいのです。もっと言えば、何も返さなくていいのです。ただ見つめ返すだけで、実は満点なのではないでしょうか。

みなさんも少しそんなことを考えながら、改めてお気に入りのイギリス映画を見ていただけたら嬉しいです🇬🇧🎬

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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