プレゼンテーション1

「逆○○」「非○○」をわかりやすく解説

本日の日経新聞朝刊1面に「ホンダがタイでHV生産」という記事が載っています。主力のハイブリッド車の国内生産をやめ、タイで生産するという話です。これまで日本で生産し、海外に輸出していましたが、今後は逆になるため、「逆輸入」という言葉が見出しに入っていますね。

ながら日経でも一番手で扱っています。

日経電子版にこんな記事も。海外から人気のラーメンが逆輸入?

「逆輸入」って、なんでしょう。


90年代以降、自動車や家電といった製造業を中心に生産拠点を海外に移転する動きが広がりました。日本の工場労働者の人件費が向上したため、安い海外で生産したほうが、世界の競合企業との価格競争力で優位になるためです。これにより国内産業の空洞化も招きました。
従来は国内で製造されていた製品が海外で製造され、日本が輸入するのが増えてきました。ここで出てきたのが「逆輸入」という言葉です。経済実態でいうと海外からは輸出、日本は輸入という単純な話ですが、今までとは流れが逆転しているので「逆輸入」という言葉を使います。

では「逆輸出」という言葉はないの?


ジャスティン・ビーバーが日本のキングレコードから新作アルバムを出せば、日本から見ると「逆輸出」になりますし、アメリカからみると「逆輸入」になりますかね。アメリカの電気自動車テスラが日本生産となり、アメリカに輸出されるようになっても同様です。経済的なメリットがなさそうですね。あんまり使われていない言葉かぁと思いましたが、

「逆輸出」もありました!

日経の記事でも!!

記事より
ちなみに民主、自由、科学といった見慣れた単語は、西欧由来の概念を日本人が漢字に訳し、中国に逆輸出した和製漢語である。

記事より
そうした中の一社がIHIだ。同社は米企業からライセンスを受け、自衛隊の戦闘機に搭載するエンジンを生産している。これを一歩進め、米軍機など他国軍向けに戦闘機エンジンを生産し、ライセンス元に逆輸出できないか検討し始めた。

「逆有償」知ってますか?


似たような事例として、資源リサイクルの話で使う「逆有償」という言葉があります。「有償の逆なら、無償? タダでいいじゃん」と思いますね。実際はちょっと違っています。
新聞や雑誌の古紙、ペットボトルはリサイクルして再び資源として活用されます。回収業者は自治体などにお金を払って資源を回収(回収業者にとって仕入れになります)し、加工会社に販売するビジネスです。
分かりやすく例えてみます。聴かなくなったCDや読まなくなった古本をブックオフに持ち込めば少なくてもお金がもらえます。なかにはゼロ円の査定がつくのもあるかもしれません。
この逆で、売りにいった側がお金を払って引き取ってもらう、これが「逆有償」です。買ってもらえると思って期待していたら、逆にお金を払わないといけない。びっくりですね。通常の流れとは違うので「逆 有償」という言葉が使われるのです。
実際に過去、古紙やペットボトルは回収量が増えすぎて、ペットボトルに加工する会社があまり買わなくなってしまいました。当然、値段も下がります。自治体はお金を払って回収してもらわなければならなくなりました。過去にこういう事態は何度も起きています。

ここからは超難問です。


金融政策でよく使われる「非不胎化」。日経の為替介入の記事でも結構出てきます。言葉の中に「非」と「不」、否定語が2つも入っています。いったい、どういうことでしょう。

「そもそも、為替介入って何?」という質問が飛んできました。為替といえば最近はこんなニュースもありましたね。

まずは為替介入から説明します。急激に円高が進むと日本の輸出産業にとって大きな打撃になります。為替が1ドル100円のときに海外に1個100ドルで売っていた製品は日本円で100ドル×100円=1万円の売上金が入ってきます。
それが1ドル90円まで円高が進む(円の価値が上がる)と100ドル×90円=9000円となり、入ってくる売上金が目減りします。
逆に急激に円安が進むと輸入品の価格が上がります。1ドル100円の時は100ドルの海外ブランドバッグは日本の百貨店に並ぶ際、100ドル×100円=1万円の値札がついています。1ドル110円まで円安が進む(円の価値が下げる)と、百貨店の値札は100ドル×110円=1万1000円となってしまいます。
円高、円安、どちらの場合も急激な為替レートの変動は景気や家計への影響が大きく、好ましいことではありません。急激な変動を防ぐため、政府、日本銀行は「為替介入」で、急激な変動を抑えようとします。

円高を抑える場合に使うのが「円売り、ドル買い」という介入です。日本の為替介入は財務省が指示し日銀が代理で行います。まず、外国為替市場で売るための「円」を用意しなければなりません。財務省は「政府短期証券(FBと呼びます)」という証券を発行して、市中の銀行から資金を調達します。
実際は介入情報が市場に漏れないようにするため、もっと手の込んだやり方をしています。
さあ、円が集まり、お金の準備ができました。政府は調達した円を外為市場で売り、代わりに外貨(この場合はドル)を買います。購入するのは米国債などの外貨建て資産です。
円が売られることで、市場への供給が増えて円安になります。一方、需要が増えるドルはドル高になります。「円売り介入」が成功しました。
これが為替介入の仕組みです。ちなみに日本は東日本大震災後、急激に円高が進んだ2011年の11月を最後に為替介入をしていません。

話を「非不胎化介入」に戻します。

言葉がとても分かりにくいですね。分解してみましょう。
まず「不胎化とは」。英語でsterilization。殺菌・消毒や子供を作らない、といった意味です。「円売り介入」の場合ですと、「為替介入で市場に放出した円を再び市場から吸収する」ということです。子供の人数を増やさず、家計に影響を与えないという意味からできた言葉でしょうか。あまりよくないたとえかもしれませんね。
急激な円高の進行を食い止めようと、日銀が円資金を市場で売って為替介入すると円安になります。当然ですが、介入する前よりも市場に出回る円の量(マネタリーベース=MB=と呼びます)が増えてしまいます。円の出回りが増えれば、円の価値が下がりますから、金利が下がります。円の価値が下がりますから相対的に物価が上がってきます。
そこでMBを一定に保つことを目的に、市場で増えた分のお金を再度日銀が回収します。具体的には日銀は市中銀行に国債を売り、円を回収します。銀行の金庫には円に代わって国債が増えていきます。売りオペとよばれるものです。円の価値を下げるために、為替介入しましたが、事後に再び調整するなら、効果は限られてしまいます。
そこで「不胎化」せずに、そのまま放置するやり方もあります。これが「非不胎化」です。
「非不胎化介入」は為替介入によって増えたMBはほったらかしにします。「円売り、ドル買い介入」だった場合、実質的な金融緩和の効果につながります。

どうでしょう。わかりましたか。これからも分かりにくい言葉を順次、解説していこうと思います。わかりやすいといえば、なんかお伝えしておくニュースがあったような……


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