見出し画像

“人生100年時代”はいつ始まったのか?

“人生100年時代”という言葉、いつからこんなに当たり前に使われるようになったのでしょうか?
一般的には、イギリスの経営学者、組織理論のリンダ・グラットンさんの著書『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの共著、東洋経済新報社)がきっかけかもしれませんね。この本が日本で出版されたのは2016年10月ですが、サブタイトルに「100年時代の人生戦略」が使われています。グラットンさんは政府の会議などに参加したりして、その後の「100年時代構想会議」などにつながっていきます。

  では、政治的な発火点となったのは?
10月7日(月)、一般社団法人の公的保険アドバイザー協会が開催した「公的保険アドバイザーフォーラム」というシンポジウムの取材をしてきました。基調講演した衆議院議員、村井英樹さんの話が大変興味深かったので、その一部分のエッセンスをご紹介します。村井さんは財務省を経て衆議院議員。当選3回の39歳。若手きっての政策通です。自民党年金委員会の事務局長などを務めています。

「今後より一層進展する少子高齢化社会においては」みたいな文章を書いていたら、進次郎氏が「村井さん少子高齢化という言葉はもう止めた方がいい。いつも通りの問題設定からはいつも通りの結論しか出ない」というんですね。――それで1週間くらいこの新しい問題設定について1週間ほど、こればかり考えて出てきた言葉が“人生100年時代”だ。あまり知られていないけれど、日本で一番最初に人生100年時代と言い出したのは小泉進次郎氏だ――。

 不勉強ながら「へーっ」と思いました。現在は環境大臣を務めている小泉進次郎さんら、自民党の若手議員が2016年2月から取り組んだ「2020年以降の経済財政構想小委員会」。通称「小泉小委員会」での若手議員の政策提言の中で出てきたコンセプトだということです。例えば、「75歳以上を高齢者とすると、景色が変わる」――。今のシニアは昔のシニアよりもはるかに元気。働けるうちはなるべく働いて、社会保障の支え手を増やしていこうといった動きが、このあたりから本格化したようです。

 さて、みなさんはこうした動き(できるだけ働こう。個人も年金財政もその方が幸せ)をどうお感じになるでしょう?
 ちなみに私直居は現在(サザエさんの)磯野波平さんと同じ54歳です。定年とか再雇用などはものすごくリアルな現実です。で、その現実が近づいてきたと思ったら“人生100年時代”と言われているような気分もあります。個人的には割と長く働きたい方だと思います。ただ、社会がこれを選ぶかどうかというのはまた別の話。

 それでも、ここで出てきたような「第3の道」の発想は大事だと思います。これまでは①給付カット(年金など減)か②負担増(税金や社会保険料増)のどちらか――。なかなか痛みを伴う改革を進めることができずに国の借金ばかりが膨れ上がり、将来に対する閉塞感、不安感につながっていたように思います。「第3の道」は、「国があるいは企業が老後の面倒もみますよ」から「個人の行動の変化を促す方向」への発想の転換です。

 もちろん、個人によって歳の重ね方にはさまざまな違いがあります。何歳まで働きたいか?そもそも元気か?資産はどれくらいあるか?働きたくても体や気力がままならなく時期は人によって違うはず。一律にはいきません。社会がある種の寛容さを失ってしまうようでは辛いです。公助、共助と、がんばる個人を応援する自助のバランスをどうとるのか――。政治家任せ、行政任せではなく、私たちみんなが考えていくべきテーマだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?