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『ジュリアン』家族の絆という呪い

こんにちは。
先日、静岡シネギャラリーにて気になる作品を観てきました(またしても都内と比べ1ヶ月遅れての上映…)

このフライヤー、めっちゃよくないですか?

《あらすじ》
離婚が成立し、母ミリアムと姉の3人で暮らすことになった11才の少年ジュリアン。
しかし離婚調停により父アントワーヌは、ジュリアンの共同親権を獲得。ジュリアンを通じてミリアムの居場所を探し始める。母を守るためジュリアンは一人孤独の中、父に立ち向かう。

監督は本作が長編デビュー作となるグザヴィエ・ルグラン。主人公のジュリアンを演じるのはトーマスジオリア、母親役をレア・ドリュッケール、父親役はドゥニ・メノーシェが演じる。
2017年フランスの作品です。

《以下ネタバレ》

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本作は物事が全て終わったところから始まる構成。

夫婦仲最悪の状態からの別居→離婚→調停など制度上の手続きは全て完了し、すでにミリアムとアントワーヌは夫婦から他人となっている。フライヤーからわかる情報以外は何も知らずに観たので、中々目からウロコなスタートでした。

もうここまでくれば本来新しい生活が始まる…はずですが、そうはいかないんですよね。

離婚調停の結果、なんと父アントワーヌに息子ジュリアンの共同親権が認められてしまいます。

そして隔週ではあるものの、父アントワーヌと息子ジュリアンの恐怖の面談が始まります。

(なぜ、裁判官がそのような判断を下したのか。その理由に関して映画内で語られることはありませんが、恐らく「良い夫ではなかったが、良い父になる可能性はある」というセリフを、裁判官が信じてしまったのでしょう…。えっ、そんなことある?)

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また夫アントワーヌがここまで親権に拘るのは、息子ではなく妻ミリアムを手放したくないから、という厄介すぎる理由。

アントワーヌは息子ジュリアンを通じて新しい連絡先や住所、そして新居の鍵を得ようとするのですが、ここの父と息子のやり取りは、観てるこちらも胃がキリキリ痛む本作で最もバイオレンスなシーン。

静かで血は一滴も出ないけれど、アントワーヌ役のドゥニ・メノーシェによる無言の暴力によって息子ジュリアン、と私の心はズタボロにされました。(私の話になりますが父に愛されているのは間違いないですが、長年生活していく中で暴力性が垣間見えたり、時にはこちらへ向かってきたこともあったので、のほほんと観ることはできなかったですね)

ドゥニ・メノーシェは筋骨粒々な姿ゆえに、粗暴な用心棒役をイメージしていますが、こんな嫌な役も演じられるんですね。やっぱり役者ってスゴいです。


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本来は夫婦関係を完璧に断つ役割をもつ離婚調停によって、継続された夫婦関係。
しかも、それはついに怒りを抑えきれなくなったアントワーヌが猟銃を発砲でもしない限り、最後まで断つことができなかった…と考えるとゾッとします。

ミリアムの泣き顔がどこか笑顔のように見えるのも、ついにアントワーヌから解放された喜びから来るものなんでしょう。

まぁ、アントワーヌは死んだわけではないので、再び出会うこともあるかもしれませんが

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以上、『ジュリアン』の備忘録でした。



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