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史上初の男の子プリキュアに対しての総評(ひろがるスカイ!プリキュアほか)

サムネは38話「大空を救え!浮き島のひみつ」ラストより。いやーいい顔してますね。ヨッ賢者!


・あのお気持ち表明から幾星霜…

『ひろがるスカイ!プリキュア』が完結した。プリキュアだからこその強くも優しき「ヒーロー」というのをこれでもかと描いたり、小出しする敵幹部方式のおかげで下品な三下カバトンやみみっちい小悪党バッタモンダーの強みを引き立て終盤に判明するアンダーグ帝国の因縁を魅せるように悪役描写に力入れてたり、ちょくちょく挟まれるギャグが歴代でもけっこう容赦なかったり(「聞いたことない高校」というプリキュア史上トップクラスのパワーワード出してきた脚本家なだけある)と今回もなかなかに楽しませてもらった。そんな作品としての総評は軽く済ませ、さっそく本題に移らせてもらう。それは……史上初のレギュラーメンバーに加入した男性プリキュア、キュアウィング/夕凪ツバサについてだ。

流石にもう「ね〜キュアゴリラは〜?」と言ったりする輩はいないと思う。そういう自分の知識ひけらかしがてら揚げ足取りするのはよほど相手側が間違った情報を流してない限り……じわじわ周囲から嫌われるからやめた方がいい!

ウィングの性別が判明した当時、すごい衝撃が走ったのは皆さんも覚えているだろう(別の一部では同じタイミングで彼のプニバード形態がグミ経由でこっそり公開されてグミの鳥と変な祭りが開催された。もう誰もグミ鳥と呼ばない)……そこから様々な意見が生まれた。そして今作が放送開始して2ヶ月くらいプニバのまま背景として粘りつつついに登場した後も様々な意見があった。かくいう自分も彼に対して抱いた気持ちをここnoteにて正直に書いたことだってある。

……まず皆さんに言わねばならないことがある。騙してごめんなさい。「お気持ち表明」なる本来の意図から外れてしまいネガティブな意味になってしまったワードをタイトルに不気味な夕焼けのサムネ(noteで提供されたやつを使わせていただきました)…これはなんか文句あるのかと思わせるという不安を煽り、それを拭うために内容を見るよう誘導する……いわばアクセス数稼ぎの釣り記事の遣り口をあえて用いた。自分は本当はそういう無責任に不安を煽ったりとかするのを嫌う類の人間なのだが、これについては「みんなそんなに賛否いろいろ言うならば……俺も一捻り加えてやってやるよ!」とばかりに手を出したのだ。この場をもって謝らせていただく。本当にごめんなさい……内容自体はともかく子どもも見てるプリキュアの話についてで『ハイパーインフレーション』を出すのはライン超えてるだろとちょいとばかし反省してる。でも変身バンクがその……正直そういうのだったじゃん……

全6巻と揃えやすく、それでいてマジで面白い漫画でございます。でもここでは勧めにくい。なんでかと言われたらこの最終巻の表紙の改造セーラー服を着てる少年を見れば理由を把握できるでしょ!

これはちょいとばかしの愚痴なんですが、とある人がこの自分の記事を「男の子プリキュアの存在はいらない」という文脈でリンク掲載したんですよね。後述しますが自分としてはその受け入れないスタンスはいいんですが……せめて中身を読んでから引用するかどうか判断してくれ。その人は他にも政治とかについても言及タイプだったが「私は情報ソースをよく見ずに怒りたいから怒るだけです」と首から看板をぶら下げてるみたいで、いい歳の大人がそんな体たらくじゃ情けなくて目も当てられないぞ!自分の書いたのなんて別にどう批評されたって構わないとは常に思ってるが、怒りの材料として雑に消費されたのにはほんとムカついた!たぶんここで悪口言っても見ないだろうから言ってやる!

とまぁそんなこんなな当時の雑感から幾星霜、物語も完結したことですし改めてツバサくんについて色々語っていこうと思います。というわけできらめきホップ!さわやかステップ!!はればれジャンプ!!!(ちなみに今回は流石にお下劣にはしません)

……いや、しないからな!(最終回「無限にひろがる私たちの空!」より)

・本編内での総評〜男の子がプリキュアになる必要性について〜


まずはいきなり核心と向き合ってみよう。史上初の男の子プリキュアのレギュラーメンバーとして出されたツバサくん、そんな彼だが登場当初から「これ男の子である必要なくね?」と言われてた。上述のお気持ち表明のやつにおいてもそこに触れているように、ツバサくんの抱える目標だったり変身するキッカケだったりというのは別に彼を女性で置き換えてもなんら問題なかったりする。そして物語が進み続けても……飛びたいという目標で勉強してたのが様々な方向で評価されて(人生あるあるだな)スカイランドの賢者として貢献する着地点というこれも性別そんな関係なく、彼が男性であることが必要な話はエルちゃんと結婚式ごっこする際に婿役を演じた40話「なかよち♡エルちゃん結婚式☆」くらいだった(あげはさんの少年呼びはあくまで呼称なのでちょい違う)。

その40話より。赤ん坊の気まぐれでしょ〜と結婚式ごっこやったら思った以上に“マジ”の可能性が出てきてスカイランド王妃から「責任取る覚悟あるのか」と詰められる妄想してしまうツバサ。情けないぞ賢者。ボクには荷が重すぎます〜!!

案の定これについては納得いかない人もいるだろう……わざわざ男の子のプリキュアという特殊な枠を出しておいて男の子“だからこそ”を全然やらないなんて。具体例を上げるなら『HUGっと!プリキュア』に出てきた若宮アンリはまさに男の子“だからこそ”という個性や葛藤、それらの先に待つ史上初の男性プリキュア・キュアアンフィニに変身したストーリーを形成していたのに。そんな前例があるっちゅうのになんでわざわざこういう形で出したんだという釈然としない気持ちになるのは当然っちゃ当然かもしれない。予め書いておくが自分はこういう彼の存在に対して否定的な意見に対して理解を示しており、よほどのことじゃない限り否定するつもりはない(上の愚痴は「よほどのこと」レベルのバカ相手なので…)

それじゃあお前さんもか!?と思われがちだが、だからといってそんなことなかったりする。自分としては「“あえて”男の子である必要ないようにしたのだろうな」という考えを登場当初から変えてない。アンリくんみたいに“あえて”男子プリキュアを出すことをドラマティックに強調するならば、逆に“あえて”普通に出す手法だってあってもいい。彼がプリキュアに覚醒したキッカケはプリキュアらしい行動したからであって、そこに性別の差の必要性は無い……そこらへんは『映画 プリキュアオールスターズF』で表側だけプリキュアという存在を模倣した超越存在キュアシュプリームことプリムの登場もあって強調された節すらある。

そんな“あえて”男の子である必要ないようにしたのはメンバー全員がひとつ下の屋根で暮らす疑似家族じみた作風にはちょうどよかったと思う。しっかりした弟というべきポジションだろうか。時にエルちゃんに振り回され、時にあげはさんに少年とからかわれ、時にソラちゃんとはしゃぎ合ったりする距離感は微笑ましいものであった……


30話「ひろがる海!ビーチパラダイス」より泳げないソラちゃんに対しレクチャーする丸い鳥。ましろちゃんとこにジャストフィット。あと「お前こそ泳げない体してるだろ〜w」と笑ってたらペンギンみたいに華麗に遊泳して俺は画面に向かって謝るしかできなかった
 37話「ふたりは仲良し 思い出の木!」にてましろんとあげはちゃんが幼馴染としての共有されし回想に浸ってる最中で楽しそうにしてる部外者2人。メイン回じゃないと途端にはしゃぐ犬みたいになるね君たち。
13話「届けて!はじめてのおくりもの」にてエルちゃんの靴選びでナイトに任せなとばかりに自信満々で選ぶツバサ(お気に召さなかった)礼儀を弁えつつもプリンセス専属のナイトとして図に乗った部分も覗かせてたのよかったよね。
48話「守れヒーロー!みんなの街!!」よりカイゼリン・アンダーグこと「力(ちから)」の猛攻をなんとか防ぎきったウィングとバタフライ。疲れたけど体育座りなのが大人としての立場を感じる(そうか?)今後は賢者と呼ばれるだろうが私にとっちゃいつまでも少年だから安心しな。

……とまあ本編“内”における彼の扱いに対してはこんなもんか。内?そうだ。次からは本編“外”……現実世界における史上初の男の子プリキュアのレギュラー化について語っていこうと思う。


《余談》

……とその前に。このツバサくんのようにそこまで男性として強調されず扱われたキャラが実は今作にはもう一人いたのは覚えているだろうか?それは………軽井沢あさひ。たぶん名前だけ言われてもピンと来ない人多数だろう。ほら彼だよ!ソラシド中学に通ってるあのメガネくん!!

7話「ドキドキ!転校生はヒーローガール!!」より。この右にいるのが軽井沢あさひ

仲田つむぎ(真ん中)と吉井るい(左)といつも一緒な青年、軽井沢あさひ。弁当も一緒に食ってる仲だし、なんならハレワタールさんと虹ヶ丘さんとも一緒に食ってたりする。

中学2年生男子でこの距離感は歴代シリーズにおいても唯一無二といわんばかりな独特すぎる存在、軽井沢あさひ。話の都合で女子たちと行動することになった星野健太や男女別け隔てなく接する大野壮太とはまた違ったポジションの彼……個人的には(意図的に中性的な見た目にしただろう)ツバサくんよりも浮いてる感がある。彼はいったい何者なのか?彼女たちとはどんな仲なのか?相楽誠司や品田拓海みたいな幼馴染?それとも……今作はそこまで学校の話が描かれなかった(でも体育祭回とか野球回とかすげー良かったよな!)ので当然そこも掘り下げもないまま、別に問題ないとはいえちょいとばかし気になってしまう……案外オフィシャルコンプリートブックでサラッと明かされたりするかもしれないので備えよう。


・現実世界における男の子プリキュアとは〜「流行」から「常識」へ!〜

さて……ここからが本題といえるだろうか。正直なところ作品“内”で彼がどう扱われてるのかうんたらよりこっちが気になってた人がいるだろう、「プリキュアシリーズにおいて男の子プリキュアをレギュラーで出す必要性について」という作品“外”としての評価を。いくら劇中で彼の覚醒要因が男女関係ないものだの家族の一員みたいに扱われようが、作品内に男の子プリキュアがレギュラーで出てくる所そのものに思う所あった人も一定数存在した。それこそ……「プリキュアは女児向けアニメなんだから男がしゃしゃり出るな」という強い声だって聞こえたほどだ。

プリキュアシリーズにおいての男性キャラというのは時代によって様々な形で出された……初代『ふたりはプリキュア』における藤P先輩こと藤村省吾はプリキュアとの使命において全く関与しない、彼女たちの守りたい日常の一部の象徴のような存在だった。その後は『Yes!プリキュア5』にて妖精兼イケメン大人なココが出て直接関わったり、『ハピネスチャージプリキュア!』では相楽誠司が一般人ながらも幼馴染のプリキュア活動に巻き込まれたり、『キラキラ☆プリキュアアラモード』の噂のイケメン黒樹リオ君は闇堕ち妖精からの光を取り戻し姉のようになったりと本当に多種多様だった。そして……

このように初代から男性キャラ自体は存在していたプリキュアシリーズ。しかしというか物申す人々が言ってるのはそういうことではないと思う………いわば“どのように関わらせるか”についてだ。上述したキャラで鑑みれば藤P先輩は完全に戦いとは無関係なのでともかく、ココと誠司も洗脳され対峙したことあれど基本的には非戦闘員、リオ君も味方サイドとしての活躍は終盤とフレプリのウエスターサウラーくらいのポジションでそんなに目立たない……女児向けアニメのキャラ・プリキュア達のメインの活躍を食いすぎないキャラであろう。しかしそんなプリキュアシリーズにて今までにない挑戦的なキャラクターが投入された……この話題において避けては通れない『HUGっと!プリキュア』の若宮アンリことキュアアンフィニである。

『HUGっと!プリキュア』42話「エールの交換!これが私の応援だ!!」より。今見るとプリキュアに新しい文化を与えた彼はまるでプリズムの使者(別の女児向けアニメに出てきた概念)みたいだ。

自身の女性的な見た目を愛する彼だが、時の経過による逃れられない男性化での好きな自分を剥奪されてしまう未来に半ば諦観し、そんなのお構いなしに他者から好き勝手な理想像を押し付けられ孤独を抱えてた…そういうお高く止まった思想など関係なく支えてくれる友達や応援してくれるファンの純粋なる気持ちを知り、彼は「なりたい自分」に…プリキュアになれたのだ。

たまに出てくるサブキャラながらも数話に分けてメインキャラに並ぶくらいしっかりとドラマを描かれ、最終的に「史上初の男の子プリキュア」になったのは当時はえらい話題になった(それこそ彼が作中でそう扱われ内心穏やかじゃなった社会的シンボルだの持て囃すほどに。俺は忘れねえからな!)といっても前回の記事でも触れたようにアンリ君が変身したのはこの42話と最終決戦の48話の2回のみ、そりゃ印象には強く残ったとはいえ彼自身が出ない話のほうが多いしプリキュア達5人の活躍を食うまでじゃなかった(なんならプリキュア伝統である徒手空拳しなかったし)ので実のところ今回の本題としてはキッカケを与えた程度だったりする。まぁ初めての扱いだしそういうもんだ。

ほんでもってアンリ君以降は男性陣がそこまで目立った活躍するほどじゃない作品が続いた(イケメンの見た目した邪悪な敵は出てきた)が、ここ最近にて新たなる存在が出てきたのだ…『デリシャスパーティ♡プリキュア』の品田拓海ことブラックペッパーだ。

『デリシャスパーティ♡プリキュア』22話「ブラペ引退!?伝説のクレープを探せ」よりモットウバウゾー相手にペッパーミルスピンキックを叩き込むブラペ。やるじゃないか品田

和実ゆいの幼馴染で父・門平もといシナモンに託されたデリシャストーンでブラックペッパーに変身する品田拓海。見た目から『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面を彷彿させるのだが、完全サポート特化のあちらと違いプリキュアのように徒手空拳を振るいまさかの共に肩を並べ戦うタイプ。これもゆいを守る為の力……

クッキングダムの衛兵クックファイターという異世界由来の力で戦う品田拓海。流石に浄化になるとプリキュアに任せねばならないとはいえ割と肉弾戦をこなせる男子であり、さらには主人公ゆいとの幼馴染なのもあって登場頻度はアンリ君より遥かに増えていた……ここまでくると男でありつつプリキュアの役割も担えるようになってくる(一応は本来ならマリちゃんことローズマリーが戦えた筈なので元々からそういうものと言えばそうなるが)しかしこれまたとはいってもで擬似的なプリキュアとしてのポテンシャルはあったとはいえサブキャラ枠の活躍する新たな手法くらいのポジションだったというのも事実だ。

そんな彼が出てきた翌年に生まれたのが今回のキモである史上初のレギュラー男子プリキュア・キュアウィングになるワケだ。

そして『ひろがるスカイ!プリキュア』9話「勇気の翼!飛べ キュアウィング!!」にて初変身したツバサくん。こう見るとちゃんと男の子なんだな…

さらにさらにだ、そこに追い打ちをかけるがごとく登場したのは2.5次元ミュージカルの全メンバー男子高校生で構成された『Dancing☆Starプリキュア』(通称ぼくプリ。ダンプリは既に別コンテンツで使用されてるのでこうなった)なんてのも出てきたのだ。ここまでくるとターゲット層があからさまだぜ!

スマートボーイズ公式サイトより。着ぐるみショーでは難しい激しいブレイクダンスとかしたりするそうな

………ここまで男キャラの歴史を羅列したなら男がしゃしゃり出るなうんたらの物申しする理由も察するだろう。当初は女の子の物語として始まったプリキュアシリーズにおいて、まさか男子がその立場を侵食しつつある…とも感じ取れることを。正直そういう昨今のプリキュアのムーブメントに対してネガティブなものを抱く気持ちは分からなくはないと自分も感じてる。プリキュアシリーズは『女児向けアニメ』なる枠にカテゴライズされてる作品と扱われ、そんな女児の為に作られた筈の作品に男子がサブキャラならともかくメインとしてしゃしゃり出るのはお門違いではないかと。なにより初代『ふたりはプリキュア』はこれまで女児向けアニメで考えられなかった男キャラの如き壮絶な徒手空拳を中学生の女の子が用いて戦う……まさに「女の子だって暴れたい」のコンセプトがありどのシリーズでも大切にしてたのに、その特権を男の子が振るったら本末転倒に過ぎないのではないかと……

ここらへんのセンシティブな気持ちは本当に人それぞれだから簡単に決めつけるのはよくない、あくまで自分なりの推測である。たぶんこの記事に物申されるのここだと思う。とはいってもここは自分の感想や見解を書く所であって今はこの推測を貫かせてもらう。矢面に立たせたならば批評されるのは当然だし(ただし最初に触れたやつみたいな本文読んでないで怒ってるバカは御免だからな!)そんな推測をして自分は昨今の男の子プリキュアについてどう思ってるのかと言われたら………自分も「女の子だって暴れたい」のような“とある言葉”を使わせてもらう。それは………


《「流行」から「常識」へ!》

第一世代は大流行となり、予想以上の成果を収めました。次なる第二世代では、子供たちが「私は二代目が好き」「私は三代目がいいな」「初代もいいよね」などと話し合える「子供たちの常識」を目指します!
「流行」とは「流れ行く」もの、「常識」とは「常に識られる」もの!
「時代のあだ花」として忘れ去られることなく、永遠に子供たちの心に根付いてく作品、それがプリキュアの「受け継がれる意思」です!いつか親子に代で、いや親子三代で「自分たちが見たプリキュア」を語る人々の姿を見る!それこそが番組制作をしていく大いなる意識になると思います。


……いや聞いたことないワード出てきたな!?と思うでしょ。それも仕方ない、だってこれ『ふたりはプリキュアSplash☆Star』の企画提案書に記されてた文章、つまり本来は公に出回らないやつだからだ。昔なんとなく感覚でまんだらけのサイト眺めてたら過去にオークションにかけられてたの見かけてな……そんなん掲げていいのかと言われたらアカンかもしれないが……ともかく自分としてはこの言葉にこそ「プリキュアシリーズがどうしたいのか」が詰まってると思うのだ。

まずこの言葉を掲げてるのがスプラッシュスターの企画書というのが重要だ。プリキュア以前の東映アニメの女児向け作品のヒット作といえば『美少女戦士セーラームーン』や『おジャ魔女どれみ』を挙げられるが双方ともに主人公周りを継続したまま何年も話を描いてた。そして『ふたりはプリキュア!』もヒットし二期のマックスハート、そして従来の流れなら三期へと続くのがセオリーだろう……それをせずキャラクターや世界観を刷新した。当時からしたらせっかくうまくいったキュアブラックキュアホワイトといった知的財産を自ら手放すようなもので無謀じみた行いとも見れる、しかしそれでも新作決行という選択したのだ……ここに掲げられたようにプリキュアを単作としての「流行」ではなくシリーズとしての「常識」にしたいから。セーラームーンもおジャ魔女も一世を風靡したながらもあくまで時代の象徴という「流行」であり(後にリバイバルやスピンオフが出るもそれは当時見たファン向けである)この2004年に起こせたプリキュアという「流行」を同じ東映の戦隊や仮面ライダーみたいに「常識」にしようという確固たる信念なのだ。

それから紆余曲折あった……「ふたり」と銘打ったシリーズが5人チームになったり、キャラデザを大胆に替えたり、お姫様や魔法使いにパティシエとテーマやモチーフを強調したり……そしてシリーズがこれまで歩いてきた道のりを映画にした『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア プリキュアオールスターズ』の感想で書いた「プリキュアだって普通の女の子から、普通の女の子だってプリキュアに」のように……そのくらいプリキュアそのものが「ヒーロー」として憧れる象徴に成った。そこからさらに5年後の2023年…プリキュア20周年を記念し各地で開催された「全プリキュア展」に自分も一番最初の東京へ行ったのだが……そこには長蛇の列が、そしてプリキュアを見て育ったような若き人々がめちゃくちゃ来てた。自分のような男一人で来た人間が浮く程度に。それを見て自分は痛感したのだ……「常識」に、常に識られるものになったんだなと


その「常識」と男の子プリキュアがどう関係あるかと言われたら……常に識られるようになったプリキュアシリーズは女児だけでなく様々な層に見てもらいたいから、「女児向けアニメだから」と否定せず好きになってもらいたいからと考えてる。そりゃたしかにプリキュアは日曜朝8時半から続いた伝統ある「女児向けアニメ」の枠から始まったシリーズだしメイン視聴ターゲット層は変わらないだろう、しかし自分が全プリキュア展で直接見たように女児以外の人々もファンでいてくれる……それこそ(オトナプリキュアみたいな当時見てた人向けに特化したスピンオフはともかく)本流の聖あげは/キュアバタフライなる成人女性プリキュアに歳が近い人も多数いるだろう。そんな彼女だってツバサくんが男うんたら関係なく変身したと同じように成人うんたら関係なくプリキュアになれた……昔見てたからの出戻りでもいい、ずっと見続けてもいい、大人になってもプリキュアに対する気持ちを変えなくていいように……(ちなみに自分の職場には「そろそろ成人になる娘は今でもキュアレモネードが好き」という人がいる。もうそのくらいになっているのだ)

『ひろがるスカイ!プリキュア』36話「あげは、最強の保育士失格!?」より。キュアムーンライトやキュアマカロンのような大人なお姉さんキュアはメイン視聴ターゲット層の未就学〜小学校低学年女児にも人気が高い実績があるが、それを保育士実習生なる身近なヒーローとして直接出すというのは成人レギュラープリキュアだからこそ。まさに双方の需要を満たす大胆な名案だと思う。

途中に挟むがそれを考えるとぼくプリこと『Dancing☆Starプリキュア』は後述する男の子プリキュアの存在理由よりこちらの方が…プリキュアが「常識」として育った現在なら当時プリキュア見てたり今も見てる2.5次元ミュージカルのファンがプリキュアで演目しても受け入れてくれる(そして逆にこれをキッカケで2.5次元ミュージカルに興味を持つ人もいるだろう)という挑戦なる部分もあったと思う。それでいて全員男子と奇抜な設定ながらも内容はちゃんと『プリキュア』だったそうな。自分は見逃しちゃったんだけどなんかまたそういう機会に恵まれないかなぁ……

そして男子……人によってはもはさんざん擦られた陳腐な表現に聞こえるかもしれないが「男の子だってプリキュア見たっていい、好きになっていい」というのもある。それも特別な趣味だの一風変わった趣向とかじゃなくて「常識」いわば“当たり前”として……そりゃ「女の子だって暴れたい」なる今までにない斬新なコンセプトから始まった今作なのは事実、けれどそれが十数年も続けば斬新ではなく当然になる……そしてプリキュアはその徒手空拳コンセプトもあってか純粋なるバトルアニメの側面もある。こういう男子うんたらの話題になるとやれ「女の子が興味持つかわいいホビーやおもちゃも男子が興味持っていい」ばかりの話になるし勿論そういう受容性もある、けれど「彼女たちが戦う姿はシンプルにかっこいいから」という形で興味を持てる部分だってあるじゃないかと言いたい。少なくとも成人男性である自分はそういうヒーローものの延長として見てる部分があるし。特異的部分が純粋たる魅力へと裏返ったというか。

『トロピカル〜ジュ!プリキュア』45話「やる気大決戦!輝け!トロピカルパラダイス!」にて破壊の魔女散りし後でも諦めきれないバトラーと戦うキュアサマー
『デリシャスパーティ♡プリキュア』44話「シェアリンエナジー!ありがとうを重ねて」よりゴーダッツことフェンネルにありったけの想いこめて一撃かますキュアプレシャス

そもそも今作プリキュアシリーズが放送してる日曜朝8時半は通称ニチアサ枠、20数年前からスーパー戦隊や仮面ライダーが連なって放送している時間帯である。そうなると「ライダーのついでで見ようかな」という形の導入口は案外すぐ近くにあるのだ。自分も見始めたキッカケがそうであったように…

そんな興味を持つキッカケは人それぞれとはいえ男の子がプリキュアを好きでいてもいいと許容する“場”を与える部分もあるのがキュアウィングの描き方……作中でも“あえて”男の子である必要ないようにしてたんだろうと繋がる。この“場”というのが重要で、そりゃある程度の年齢ならば周囲から趣味を隠しつつ他の共通する話題でコミュニティを形成できる社交性を身につけたり、それこそ現在はSNS等で趣味を公にできる別の交流に加わることだってできる(この記事を見てる人もそういうタイプに含まれるだろう。俺もだ)しかしプリキュアのメイン視聴ターゲット層である未就学〜小学校低学年の年齢層だとそうもいかない……前述した器用な社交性をその歳で持つのはごく少数だろうし、となると純然たる気持ちをプリキュアごっこに一緒に加わる等で発散できる“場”を公式から提供してくれるのが救いになる人もいよう。ささやかな優しさが大いなる助けになることだってある……(ゴレンジャー当初から女性メンバーがいる戦隊はともかく)仮面ライダーだって初期から女性キャラがライダーに変身するように、そんな問題にならないならば人の趣味趣向を否定するものでないのだ…

『ひろがるスカイ!プリキュア』18話「アゲアゲ!最強の保育士 キュアバタフライ!!」にて長内たける君を助けるキュアウィング。この後あげは先生の秘密も知ったりと印象深い園児である。

……このテの話題で思い出すのがキュアウィングのプリチュームの1件だろうか。プリチューム着て撮影するイベントにてウィング好きの少年が大泣きしたアレ。それについてやいのやいの言われてたが……自分としてはプレバン受注生産販売予定してたのもあって(発売告知がだいぶ早くなったのは本来なら企業側としては喜ばしくないことだが事情が事情であるので)後イベントで用意できた形で報われたのは本当に良かったと思うし、それでも店頭販売しろよと言う輩にはちゃんと出るからいいだろと5gogoのキュアルージュのが出なかった古傷を疼かせつつキツめに言っておきたい。俺は未だに許してねえからな当時のグッズ冷遇をよ……

……さて、こうも最近のプリキュアについて肯定的に言ったが同時に気になってる部分がある。上で記した男の子プリキュアに否定的な捉え方してる人たちがいるように昨今のプリキュアシリーズに対して「変わってしまったことへの悲しみ・怒り」を抱いてる人がいるのも事実だ。20年も続く長期シリーズであり見始めたキッカケは人それぞれ…そしてキッカケになった瞬間…“あの頃”には強く惹かれたワクワクや感動があり、そんな心揺さぶったからこそ見続けてるものが常識とか何やらで自分の抱えてる「好きだったプリキュアのイメージ像」から変わってしまったことを受け付けない人だっている。男の子プリキュアなんてセンセーショナルな具体的要因があるならコイツの活躍を描くせいで省かれたと怒りの矛先を向ける人も(アンリ君の頃からそこらへん快く思ってない人は多数いた)……前回の記事でも触れたが自分だって最近のプリキュアは夏木りんちゃんや日野あかねちゃんみたいな娘が出てこなくて内心恋しい気持ちを抱いてたくらいだ(なおそれについては10周年記念で配信されたプリティーリズムレインボーライブの涼野いとで補填できた。なんじゃそりゃ)別の人から見ればンな些細なこと引き摺るなよとは思うかもしれないが、人間は周囲の変化によって当たり前だと思ってたものが失われることに対して想像以上に強いストレスを受けたりするものである……ちなみに自分はそれを勝手に「薬師寺れいら現象」と呼んでる。

Goプリのみなみさんとは似ていながらも違う展開になるのは作品ごとの大人の描き方が違うからこそだな〜と当時は関心したりした

『HUGっと!プリキュア』44話「夢と決断の旅へ!さあやの大冒険!」にて娘・さあやが子役の流れで抱えてた女優から彼女なりの体験で医者になりたいと夢が変遷したのに対し表向きは喜ぶ大女優・薬師寺れいら。しかし内心では「娘が自分と同じ女優としての夢を持ってくれてたのから変わってしまったことへの悲しみ」というエゴと言い切ってしまえばそれまでの、それでいて人ならどうしても愛してる対象に抱えてしまう気持ちがそこにはあった……彼女には愛してくれてありがとうと感謝してくれる娘がいたから救われた。培った親子の絆は変わらず残り続けていた……


自分としてはそういう悲しむ人たちをよほど害悪存在でない限り……それこそ特撮間借りおじさんのような他者を攻撃する“怪物”みたいに成り果てたならともかく(アイツの発言の根本には昨今のフィクション作品の社会的配慮のくどさに嫌気が差してあんなこと言った部分もあったりする。みんなもいくらそういうのに気に喰わないと感じてもそこまではならないでくれよ…)なんかしらの方法で救われてほしいとは密かに思ってたりする。具体的に言えば…なんかこう……“あの頃”のプリキュアの雰囲気を残した作品とか出てきたりでの公式からの供給が。個人的には今年2024年に放送予定している『魔法つかいプリキュア!2(仮)』にそういう期待してたりするんですよね。ほらまほプリってこう世界がどうとか混沌とかそんなん知らねー!と日常でぶん殴る作品だし。最近はそういう昔愛してくれた人たち向けのリバイバルやスピンオフが満足度高いパターンが散見されるしそういうパターンじゃないかなーって。ともかくいちファンの自分としては祈り願うことしかできない……報われることを……


・あとがき

いかがだったろうか?今回はツバサくんの総評と称して自分なりに男の子プリキュアの捉え方を書いてみた。不満を抱いてる人に書いてる部分は哀れんでるだので却って怒らせるかもしれないとは正直思ってる部分もあるが……それでも自分としては満たされてほしいとは心から思ってることだけは言いたい。自分だってそういう経験したことあるので……

さて、ひろプリが終わり次は『わんだふるぷりきゅあ!』が始まる。異世界の妖精ではなく現実の犬がプリキュアになるというこれまた斬新な手法を取り入れてるが……そんな今作にも“いかにも”な男子キャラ・兎山悟とやま さとるがキービジュアルの時点で公開されてる。彼はどう物語に関わってくるのだろうか………(一方で自分はしょーもない妄想をしていた。なんなら彼の飼ってるウサギの大福くんがプリキュアになったら食○するプリキュアが誕生するやんなんて最低なのも考えちゃったりする)ともかく自分としては緩く楽しもうと思ってる。それではまた。

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