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がいなおかあ(6)不満を人の風貌にぶつける母

「もしもし?」
電話での
第一声は大概の人がそれだろう。

しかしうちの母はそうではない。

「おっそいなぁー、
急ぐ間に合わんやないか!」


遠方に住むおかあ(母)が、わたしに電話をかけてきた。ひとこと目がコレ。

まずそれを言わないと本題に入らない。もしもしカメよ、なんて日本語はどっかに忘れてきた。

時には
「寝てんのか!早よ電話にでろ!」
とか
「アタシに何かあったらどうすんの!」
って言葉ってが続く。

「老婆の暴言。」
映画のタイトル…ではない。
うちの日常。

ため息まじりに
「何?」と聞くわたしに、ようやく話しはじめる内容は、まったく急ぎの内容ではない。

今回は訪問者の愚痴だった。

四国地方の方言で「気が強い」という意味で使われる
「がいな」
おかあ(母)は現在81歳。
このおかあ、とにかくジコチュー。
自分肯定ハンパなく、自分は間違っちゃいないと言い放つ。この人の灰汁(アク)と棘を、嫌味と少しの愛で書いてます。


何ヶ月も前の話しだが、わたしは
おかあ(母)にインターホンを新しくするよう提案した。

提案理由は、こうだ。

家の中に設置する受話器型のインターホンがダイニングに1台しかない。2階にも部屋がいくつかある家に、1階に1台だけ。

ピンポーンって鳴った時、2階いたらどうだろう。
「はーーい!」と、どえらい声を張り上げても、玄関の外まで届きゃしない。
している作業をほっぽり出し、階段を駆け降り、

転げ落ちる。


そんな光景が安易に想像できたからだ。

もう81だ。

そしてインターホンの取り付け作業に来た若いお兄さんの話しをはじめた。

まず最初に何を言うかと思いきや、

「マスクとったらのぉ、
あの人きっとブサイク。」


いや、想像でものを言うなよ。

こんな感じ?

取り付けたインターホンはカメラ付き。
今まであったものより大きいので
門柱に取り付けたら違和感がある。
母は取り付けたインターホンの出来上がりが雑で気に入らず

「ブサイクな仕上がりで気にいらん」
という。

門柱のインターホンがブサイクなせいでお兄さんの顔までブサイクになった。

この世のありとあらゆる悪態を集めてきたかのようにしゃべる。
わたしがなだめ、落ち着くようにと、

「作業のお兄さんも一緒懸命なんやから…」
と口を滑らせ、お兄さんの肩を持とうもんなら、その途端、

「お前、アタシの話しをよう聞けよ!寝とんのか!目を見開いてよう聞けよ!」

というありさま。

こうなったらもうあかん、

おかあはお兄さんの靴下の匂いが残っている!臭い!とか、あの人、髪の毛洗ってるんやろか、なんか白いもんがついていた、とか言いだすから、

お兄さんの風貌がどんどん悪くなっていくのだ。

これはまずいとわたしが口を挟もうとすると、

電話が切れた。

言いたい事だけ言ってバシンっと切る。

「………………。」


誰か、わたしの開いた口をなんとかして。

こういう場合は、
じっと我慢し、
「うん、うん」

「へぇー」

「なるほど」
を、組み合わせ、

絶妙なタイミングで

「せやな、作業のお兄さん、
マスク取ったら絶対ブサイクやで」
と言っとけば、

穏やかに電話を切っただろう。


#寝とんのか
#マスクのなかはどんな顔
#インターホンカメラ付き
#サイコパですかって思っちゃう


To be continued

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