昧爽の築地市場
2016年、築地市場が豊洲に移転することが決定した。
移転前に、歴史ある市場で繰り広げられるマグロの競りを見てみたい。そう思った私は真夜中に築地へとおもむいた。
深夜一時の築地周辺は、片づけや搬入作業でまだ多くの人が働いていた。椅子もない待合室で三時間半ほど本を読んで過ごし、ついに競りの見学の時間になった。
競りは一瞬だった。コンクリートに並べられた巨大なマグロが数秒で競り落とされていく。声を張り上げているのは仲卸業者一人だけなのに、ぴりぴりとした緊張感がただよっていた。
競りを見終わると、外では昧爽の中縦横無尽にターレが走り回っていた。東京の真ん中で、夜明けにここまで騒がしくて活気にあふれた場所があるのを、私は今まで知らなかった。
世界最大の規模を誇る築地市場。移転して名前が変わっても、変わらず関東の胃袋を満たし、世界に名を轟かせ続けるだろう。
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