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髙橋工房で本物の職人指導による浮世絵制作体験

髙橋工房で本物の職人指導による浮世絵制作体験をしてきたので、報告させていただきます。髙橋工房は創業160年以上の日本最古の浮世絵工房です。その歴史ある高橋工房で本物の職人指導による浮世絵制作体験は今後忘れることがないであろう素晴らしい体験となりました。

まず、高橋工房において、浮世絵制作ビデオを視聴しながら、職人の解説を聞きます。この解説が素晴らしかった。浮世絵制作の役割分担である版元、絵師、彫師、摺師の仕事を詳細に解説してくれます。

版元は浮世絵の企画から制作資金の調達、職人との交渉、工程管理、さらに販売、版木の管理までの全プロセスを担っていました。

版元に指示を受けた絵師はまず墨で輪郭だけの下絵を作成します。この墨絵はいったん彫師の手に渡り、彫師が輪郭線だけを彫った「主版」(しゅはん、墨版:すみはん、とも言います)という版木を彫り、これを使って「校合」(きょうごう)と呼ばれる輪郭線だけの単色の墨摺絵(すみずりえ)を作成。絵師はこの校合に彩色を施し、ようやく「色版」と呼ばれる下絵の完成です。

彫師は「主版」(墨版)を彫り、「色版」を彫ります。決められた版数でどのように色を表現するかが彫師の腕の見せ所でした。1枚の浮世絵で最低で5枚、多い作品では20枚もの版を作成していました。

最後に和紙の四隅に摺ったとき、線がずれないようにするための「見当」を刻みます。現代において、物の大まかな位置や量を推測するときに「見当を付ける」と言ったり、判断が間違っていることを「見当違い」などと言ったりしますが、浮世絵がルーツになっている言葉です。

次は摺師が「越前奉書」と呼ばれる最高級の和紙に、にじみを防止する「礬砂」(どうさ:膠とミョウバンの混合液)を塗布します。「どうさ引き」と言います。

次に版木の表面をハケで軽く湿らせ、調色した顔料と膠(にかわ:牛の皮や魚の浮袋から作る糊)を混ぜた絵具を素早く全体に塗り広げます。見当に合わせて和紙を版木に乗せ、裏からバレンで押さえて絵具の色を和紙に移していきます。

高橋工房では体験者が「色版」に顔料と膠を塗り、バレンで色を和紙に載せていきます。図柄は参加者が決めます。指導の際に同じ図柄でないと指導しにくいため、参加者全員が同じ図柄とする必要があります。今回は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を選びました。なお、「神奈川沖浪裏」は2024年7月3日に発行開始予定の新1,000円札にも採用されます。

同じ版木でも参加者によって大きく完成度が異なるため、皆、必死になってバレンを動かしました。完成した「神奈川沖浪裏」はハサミで切り、団扇とブックカバーに仕上げ、お土産として持って帰ることができます。

また、職人が摺った浮世絵 約200種類から自分好みの浮世絵もお土産として持って帰ることができます。「神奈川沖浪裏」が含まれる「富嶽三十六景」を始め、「東海道五十三次」など今まで見たこともないような浮世絵から選ぶため、時間がかかりますが、その選ぶ時間も非常に楽しい体験でした。

このような素晴らしい浮世絵制作体験を多くの人々に知っていただき、実際に体験していただきたいです。この浮世絵制作体験は一生の思い出になることは間違いないでしょう。

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