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『裸空間の世界とか』

前回投稿したはじめのあいさつだけでもう2度と更新されないnoteになったらどうしようと、夜に寝床で不安になるのはもう嫌なのでどう書こうか悩んでないでさっさと手を動かすことにしました。

かるま龍狼著/ワニマガジン社出版 『裸空間の世界とか』

※記事内のリンク先は全てR-18になります。

もし、複数冊単行本を出しているエロマンガ家の作品群のうち、どれか1冊を買いたいが、どれを買っていいかわからないとなったときは最新作を買うのがお勧め。単行本のクオリティは基本的に最新作が最も高い。

エロマンガを描いた経験の量が最も多いのは常に現在の作者であり、最新単行本とはその最も経験値の多い状態の作者が描いた作品を収録しているわけなので、当然といえば当然かもしれない。(探せば例外はありそうだけど、基本的な考え方としては間違いないはず)

であれば、大ベテランであるかるま龍狼先生(以下かるま先生)の場合、最新単行本にはどれほどのエロマンガが載っているのか。その答えでもあるのが本作『裸空間の世界とか』なのだ。

エロマンガで活躍するユニークなギミックやアイテムたち。媚薬に催眠術、時間停止、触手、現実改変とエロマンガ上での鉄板ネタとして広く周知されたものから、あまり見かけないような新しいものと千差万別。かるま作品はどちらかといえば後者の方が多く登場するのが特徴であり、それが大きな魅力になっている。

タイトルに使われ表紙でも描かれている着ている衣服がその中にいる間は消失する裸空間。季節によっては隣の家の奥さんの乳を壁越しで揉みしだけるほど柔らかくなる風呂場の壁。屋台で売られる大人から子供まで夏に買って楽しむミルクの入った張形こと冷やしちんぽなど、『裸空間の世界とか』に登場するセックスアイテムは読者の持つエロマンガの観念にイノベーションをもたらす。

個人的にはタイトルでも使われ収録作のうち2編に登場する裸空間が一番印象深い。実はこのアイテムの初出は別のかるま先生の単行本『ふしだら日和』の収録話『となりの裸空間』。補足すると『ふしだら日和』の後に単行本『ないみつ』が作られ、それから今回の『裸空間の世界とか』が刊行されるわけなのだが『ないみつ』にはこの裸空間を使った作品はない。つまり最初に裸空間が登場してから、単行本1冊分の空きが挟まった後で再び今回描かれたわけだ。

裸空間のような新しいエロマンガアイテムの登場だけでも珍しいのだが、期間をおいて再登場するというのは更に珍しい。これは勝手な妄想なのだが、かるま先生としても裸空間のことは気に入っている、あるいは記憶に残るアイテムとして思っているのではないだろうか。

そんな私の個人的印象を抜きにしても、裸空間の持つポテンシャルを考えると今回の再登場はおかしい話ではない。かなり自由に部分露出のシチュエーションを作り出すことができるし、ヌーディストビーチのような公的な野外露出環境の演出との相性もいい。空間から出れば服は元に戻る、自然発生するものなので人々は仕方ないと思いつつ暮らしている、勃起している状態で裸空間から出てもパンツと合体するような痛ましいことは起きない(この危惧は壁の中へ瞬間移動した人間はどうなるか問題の想像をしたときと近い)と大胆な性質を更に引き立てるパワフルな都合の良さ。一編で使用して終わらすには惜しい点は十分挙げられる。

『裸空間の世界とか』のその他の特徴としては、人妻系を中心とした年齢の少し高いヒロインが登場する話と女学生系の若いヒロインが登場する話の割合が1対1ぐらいになっていることだ。過去のかるま先生の単行本だと前者を中心とした単行本が多いので、この比率は意外だった。

新聞の四コママンガの雰囲気に近い柔らかく親しみを感じるキャラクターデザイン。にもかかわらず行為シーンで描かれる裸体や表情はばっちりエロく、矛盾しているようだが、そのアンバランスさがかるま作品の調和を生み出している。もちろんこれは『裸空間の世界とか』でもそうだ。

これからもかるま龍狼先生の大胆な発想とこれまでエロマンガを描いてきた経験という膨大な積み重ねを以て描かれる作品に注目したい。

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