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鍵をなくして翌日戻ってきたときのこと

上京して18年経つ。
先日初めて自宅の鍵をなくした。

もうすぐ自宅のマンションに着くという時、オートロックのドアの前でもたつきたくないので、少し早めにバッグの中をゴソゴソし出す。早い時は改札あたりでゴソゴソが始まる。

この日は改札あたりからゴソゴソしていてもなかなか鍵が見当たらず、家が近づくにつれてゴソゴソがスマホのライトをつけての大捜索になり、家の近所にある、老人が昼間よく座っているベンチに初めて座り、中の荷物を全部出して、隅から隅まで見て、ようやく無くしたんだと観念した。

元々自分の荷物が入り切らない、キャパオーバーなバッグの日だったので、ジャケットのポッケに小物を入れたり鍵を入れたりして、焼肉屋さんで脱いだ時に落としたのかも。もしくはさっきまでいた居酒屋さんでバッグをテーブル下に落としたので、そこで鍵を拾いそびれたか。

時間は23時を過ぎていたが、まずはさっきまでいた居酒屋さんに電話をかける。

——探してくれたがないとの事。そうだよね。あの時テーブルの下をスマホの電気で確認したけどなかったもんね。

次は焼肉屋さん。電話に出ない。営業時間は22時半までだった。どうやら今日中に無くした鍵を手に入れることは難しそうだ。

同じマンションに住むオーナーさんにダメもとでメールしてみることにした。オーナーさんはご高齢なのでこんな時間に電話やインターフォンを鳴らすのには気が引ける。

少し待ったが残念ながら返信がなく、途方に暮れていると、旅行へ行っている友達に「もしうちに来れそうだったら家の観葉植物にお水をあげてほしい」とフワッと頼まれていたことを思い出した。ポストに鍵を入れておくからそれを使って入ってと言っていたな。

その家は電車と徒歩で30分ぐらい。幸いまだ電車もギリギリ動いている。友達は今日旅立ったのでお水をあげるには早いが、友達のLINEの返信を待たずにマンションへ向かうことにした。

この日からGWで遊びに来ていた両親が都内のホテルにいたのだけど、鍵をなくしたと言ったら心配するというか、何してんの…ってがっかりすると思うから泣きつこうと思ったけど内緒にすることにした。

しばらくして友達からOKの連絡をもらい、家主のいない家に泊まることになった。鍵をゲットして家に入る。何度か遊びに行っている居心地のいい家だが、リビングの電気の付け方が分からない。この家に集まるグループのLINEで聞いてみると、家主じゃない人が教えてくれた。

気分で色を変えていいよとの事だった。せっかくなのでムーディーな薄紫をチョイス。シャワーを浴びても卵を食べてくれてもいいよと言ってくれたので、卵は食べれなさそうだけどシャワーを使わせてもらうことにした。友達のベッドで寝るので髪も洗わせてもらおう。

シャンプーはあったのだけどロングヘアに必須なトリートメントがない。おそらく旅に持って行ったのだろう。ガシガシのままシャワーを終え、棚から洗い流さないトリートメントを見つけたので申し訳ないと思いながらそれを使わせてもらいなんとかなった。

寝る直前までグループLINEでかまってもらい、鍵の心配を内に秘めたまま眠りについた。

ライトをまた別の色にするくらいの余裕はあった

翌日、8時半に目が覚めた。何があるか分からないからワンデーのコンタクトをつけたまま寝たら目ヤニで目が開かなかった。なんとかこじ開け片目でスマホをみると、オーナーさんから夜中に返信があった。

家に入れることが確定したのでお花に水をやり、見えにくくなったコンタクトを捨てて、早々に自宅へ戻ることに。友達にお礼の連絡をして鍵を定位置に戻し、家を後にする(本当に助かったありがとう)。

オーナーさんのお家のインターフォンを鳴らすと、オーナーさんはすぐに空けてくれて、私のミスなだけなのに労ってくれて、気付けなくて申し訳ないと謝られた。これからはどんな時間でもいつだって電話してくれていいし、インターフォンも何回でも鳴らしてくれていいからねと言ってくれて、ここにずっと住みたいと思った。

9時間遅れの我が家は特別に感じた。今日は両親に会うので連絡を取ろうとすると、知らない番号の着信の中に留守電が入っているのに気が付く。

そういえばすっかり忘れていたけど、昨日の夕方知らない番号から電話が来ていて怖くて出るのやめたんだった。恐る恐る留守電を聞いてみると伊勢丹だった。

「二宮様、鍵をお忘れではないでしょうか? お預かりしていますので折り返しいただけますと幸いです」

的な電話だった。昨日のうちに留守電に気づいていたら、なんてことのない夜だったのに!

鍵を店に忘れたのも、バッグを試着する際に、自分の荷物どれくらい入るか試させてもらって、鍵やら財布やらポーチやら入れた時に、鍵だけ入れっぱなしにして店員さんに返してしまったからだ。

そして、別の型のバッグを買ったので、会員登録で名前と番号をお店側に知ってもらえてたというわけだ。

親と合流して「キーフォルダーを伊勢丹に忘れてきたっぽいからどっかのタイミングで忘れ物センターまで行って聞いてくる!」と、鍵にキーフォルダーが付いているのでギリギリ嘘じゃないような嘘をついた。

取り戻した直後の写真

キーフォルダーの特徴が分かりやすいので、忘れ物センターでもスムーズだった。

この日は浅草へ行ったり河童橋へ行ったり東京観光っぽい一日だったので、たくさん歩いた。どれくらい歩いたか両親とアプリを見せあいっこしたら私だけ5000歩ほど多く、「なんでなゆちゃんそんなに歩いているの!?」と驚かれた。そりゃそうだ、友達の家と自宅の往復で40分は歩いているからね。

「し、知らん」

で、なんとかその場をやり過ごすことに成功した。

お店のバッグに鍵を置いたままにしてしまったことと、留守電をすぐ聞かなかったことは悔やまれるが、泊まる家を確保できたことと、なんやかんや鍵が戻ってきたことは、日頃小さな徳を積んだ結果だ。

この不注意は一生治らないから諦め、せめて徳を積もうと強く思った。

鍵を持っていないことも知らずに
アイスに舌鼓を打とうとしている時の写真

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