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仕事とプライベートにオンオフがある人

※こちらのnoteは「noteのcakes」にて2019年2月に投稿されたものです

これを読んでいる人の中にはご存知の方もいると思うが、私は16歳の夏、名古屋パルコの西館と東館の間らへんでモデル事務所からスカウトされた。

当時は、漠然と(頭良くないのに)薬剤師になりたいなーなんて思ったりしながらも、キラキラした世界にはひっそりと憧れを抱いていたので、スカウトされた時、私の歩むべき道がようやく開けたような気持ちになった。

残念ながら高校が厳しく、モデルの仕事は思うようにできなかったが、所属モデルの中で最年少だったので、マネージャーさんからも、年上のモデルからも可愛がられた。

なかでも一際気にかけてくれたのが正田さんというマネージャーだ。私の勘違い個性派パンクスタイルや海苔みたいなおかっぱヘアに物申してくれたり、私にモデルとして自信をつけさせるためにいろんな話をしてくれた。

また、カメラマンとして定期的に事務所の宣材写真を撮ってくれていたのだけど、今見ても愛情たっぷりで暖かい気持ちになる。

この頃はまだフィルムが主流だった。

とはいえ古くて恥ずい

所属して数ヶ月経ったある日、正田さんから真剣な話を聞いたことがあった。モデルとしてのオンオフみたいな話だっただろうか。やる気を前面に出すのが苦手で、むしろ逃げ出しがちだったのでこうして話す機会が多かった。

宣材写真の撮影を終えて、私と同じ車両にこっそり乗り込み、私を観察したこともあったらしく、電車の中で正田さんから貰ったポラ(ライティングなどを見るため試しに撮ったポラロイド)を何度も見ているのを見て、そうゆう子なんだなと思ったと言っていた。要は秘めたやる気があるんだという事が分かったのだそう。それでこれから真剣に話していこうと思ったそうだ。

そんな話をしていくうちに、正田さんの話になった。

「正田さんだって(正田さんはなぜか自分のことをお父さんみたく正田さんと呼んでいた)、仕事とプライベートでは全然違うんだよ、今は仕事モードだからこうしていっぱいしゃべっているけど、外に出た途端、全く喋らなくなるからね」

意外だった。よく喋るおじさんだと思っていたのにプライベートと仕事のギャップがある人なんだ!と。

そこで私もオンオフを切り替えてがんばろうと思ったかは定かでないが、外に出た途端喋らなくなるんだということを素直に受け入れすぎて、外で話しかけてももう無駄だから、一緒に事務所を出た時、一切喋らずに正田さんと別方向へ向かったら、

「二宮〜!おつかれ!気をつけて。」

と言われて、あ、外に出てもこの位は喋るんだと思った記憶がある。

大学に入ってからも、「バイトがあるのでモデルの仕事入れないでください」と言ったり、勝手にスパイラルパーマをかけたり20cm以上急に髪を切ったりやりたい放題だったけど、いつしかプロ意識が芽生え、仕事が楽しくなり、もっと上を目指したくなって上京するまでに至った。

そうなれたのも16歳〜22歳まで所属していた事務所が子どもだった私を育ててくれたおかげだ。たったの6年なのだけど、10代から20代にかけての6年ってすごく長く感じたしすごく貴重な時間だったと思う。

正田さん、社長になったらしいけど元気かな。

ちなみにあれから20年以上経つけどいまだにオンオフの切り替えは出来ていない。

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