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ささやかな脱出

私の母は、一人で外に出かけることを「脱出する」と言う。特別家に囚われているわけではない。「今日脱出するの?」は「今日出かけるの?」という意味である。娘の私はこの表現が気に入っている。ワクワク感があるからだ。

こう言っていたのも学生時代の記憶。実家を脱出している私は現在一人暮らし中である。出不精なので休日は人との予定がない限り家にへばりついている。

春の開放的な空気に流されてなんとなく少し遠くに行きたくなり、久しぶりに脱出した。目的地は新江ノ島水族館。海に面する水族館が好きで、行きたいと思っていた水族館の一つだ。

小田急線が発売している、往復券と水族館入場券がセットになっているものを前日夜に購入。何着ていこうかと悩みながら眠る。浮かれぽんちである。

新宿から一時間半ほどで最寄駅の片瀬江ノ島駅に到着。サーファーがいたり、大きな犬を連れた人がいたり、湘南のプチ洗礼を受ける。

まずは腹ごしらえ。Googleマップで「ランチ」と検索。美味しそうな海鮮丼をみつけ、そこに向かう。人気店らしく、平日にも関わらず行列。せっかくだしと思い列に並ぶ。30分ほど待って入店。

江ノ島小屋のまかない丼

期待通りの美味しさで満足。〆の出汁茶漬けが最高。いよいよ水族館へ。

相模湾の生態系、クラゲの成長過程などが内容豊かに展示されていた。リュウグウノツカイの標本を初めて目の当たりにし、まじまじと見入る。白くて美しい。隣にあるチョウチンアンコウの標本はちんまりとしていて可愛らしい。

クラゲ

小さな子ども連れ家族や、高校生くらいの団体などが来ており、平日にしては人が多く賑やかである。ペンギンやアザラシ、カピバラなどお馴染みの生き物たちもいて見物。

ペンギンエリアで、おそらく団体の高校生の子が、一眼レフを首から下げている。写真を撮ったり、ペンギンを観察したり、水槽に近づいたり離れたりしている。きっとペンギンが大好きなんだろうなと微笑ましく思う。心の中でグッドラックと親指を立ててその場を後にする。

水族館側の海辺

館内には2時間ほど滞在したのち、海の近くへ。そばにある段差に腰をかけ眺める。厚い雲が空を覆っており、快晴ではないが風がほどよく吹いていて心地よい。寄せては返す波を目で追いかけてぼーっとする。

最後にカフェで一息ついて帰ろうと思い町並みを楽しみながら歩いていると、江ノ島まで歩いて行けることに気がつく。適度な疲労はあるものの、せっかくなので向かうことにする。

うっすら見える富士山

蜃気楼のようにうっすら見える富士山をみながら橋を渡る。江ノ島自体は雰囲気を楽しむ程度で終える。

江ノ島から帰ってきて、最後にカフェへ。それにしても大型もふもふ犬との遭遇率が高い。飼い主同士が会話をしている傍らで、お犬同士がじゃれている光景が目にいい。

コーヒーとプリンをいただき、移動中のお供でもある小説を開く。一時間ほどゆっくり過ごす。

コーヒーとプリン

日が傾く前に電車に乗る。自宅に帰るころにはすっかり夜だ。何でも事前準したがる私にとってはなかなか突発的な脱出だったが楽しく過ごすことができた。

今後もいい脱出ができたら書き残していきたいと思う。

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