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瀬戸美夜子、桜凛月、神田笑一のAPEXチーム『NJ夜神月』を見て感じたRPの先にあるものの話

 唐突ですが皆様、ディズニーランドに行った事はありますか?

 僕はこれまで2回ほど行った事があるんですがまあ別に特別好きなわけではなくて、むしろ遊園地とか嫌いなので中学校の卒業旅行で行った時には乗り物に乗りたくなさすぎて入口付近で終わり時間まで延々友達とトランプしてました(笑)

 とはいえ別にバカにしたいわけではなくて、最近むしろディズニーランドすげえなと思うようになってきたんですよね。

 というのもディズニーランドってあそこほどRPが完璧な場所ないじゃないですか。RPというのはロールプレイの略称でして、つまりミッキーマウスならミッキーマウスとして、ディズニーランドにいるすべての人間がまるで本当に夢の国があるかのように振る舞い楽しませている。

 子供の頃は「キグルミのなかに人間がいるんだろ?」とバカにしてた類いの男だったのですが、社会人になって黙々と生きてきて、ディズニーランドに行くのが生き甲斐みたいな人にも出会っていくうちに、自分が今までバカにしていたようなものでも誰かにとっての希望になっている、その希望というものがRPという作り物の中に存在していても良いんだという風に思えるようになってきたんです。

 思えば僕の趣味もRP要素のあるものばかりで、野球だけは違いますがアニメとか、あとプロレスとか、そしてVtuber。アニメは当然フィクションですし、プロレスも四半世紀前から台本がある事がバレている。Vtuberなんかはメタい事言うといわゆるなりきりであって、二次元の向こうに人間がいて素の喋りをしているように思えてもあくまでそのキャラを最低限演じていないと冷められてしまうものじゃないですか。

 時々メタい事を言ってしまうVtuberもいますがあれなんかまあ最悪で(笑)言わばミッキーマウスの頭を脱いで「私は人間です!」と叫んでるようなものなんですよね。

 ただですね、時々キグルミを被ったままの状態でRPしながらも人間味というのが見れる瞬間がありまして、それは逆に最高なんですよ。その瞬間をつい最近味わう事ができまして。

 Vtuberファンの皆様なら知っているかと思いますが、つい先日Vtuberだけが参加するAPEX大会『Vtuber最協決定戦』が行われました。APEXというシューティングゲームのチーム対抗戦とでも言えばいいのでしょうか。正直僕はこういう類いのゲームに興味がないので追っていなかったのですが、この大会で1つのドラマが起こったんですよね。

 にじさんじ所属のVtuberである瀬戸美夜子さん、桜凛月さん、神田笑一さんの三人が組んでいたチーム、"NJ夜神月"が今回の主役でございます。

瀬戸美夜子(せと・みやこ)


桜凛月(さくら・りつき)


神田笑一(かんだ・しょういち)


 桜さんと神田さんはにじさんじSEEDs出身、瀬戸さんは2019年1月にデビューしたライバーさんですね。

 一にじさんじファンの自分としては桜さんはよくマイクラやってるイメージで神田さんは郡道美怜さんと"ぐんかん"というコンビで遊んでるイメージ、瀬戸さんに関してはたまに配信観に行ってるくらいでそこまで強い印象のない方なんですが。

 さっきも書いたように、VtuberってのはRPが基本なんですよ。キャラクター設定は守らなくてもそのキャラクターとして喋りますし、にじさんじは一度に何人かを同時にデビューさせるいわゆるセット売りみたいな事をするんですけど、デビューして日も経ってないのに同期で親友みたいな触れ合いをして"てぇてぇ"を演出する。

 断っておきますがそれが悪いとは微塵も思ってません。Vtuberというファン相手の商売をしている以上配信で仲良くするのは当然ですし、表面部分だけを見せてくれればそれでいいわけじゃないですか。個人的には表面上仲良くしてくれさえいれば裏で仲悪くても全然問題ないとすら思っている。

 しかし先日、瀬戸さん桜さん神田さんの3人が大会直前の練習配信で喧嘩のような事をする一幕があったんですよ。


 僕これを観て感動しちゃいまして(笑)

 事の発端は神田さんと瀬戸さんの冗談のような言い合いでした。本番の1時間前で焦りとか緊張とか、またいろんな積み重ねがあったんでしょう。瀬戸さんの失敗を励まそうとした神田さんに対して少しムキになって瀬戸さんが反論してしまい、それに対して神田さんも少し煽るような事を言ってしまったと。

 こういうやり取りはどのライバーにもよくある事なのですが、メンタル面で少し不安定になっていたのか、配信中に瀬戸さんが泣き出してしまった。それに対して神田さんも落ち込んでしまい、空気は最悪に…。桜さんが必死に明るく振る舞うのですが一向に2人は回復しない。

 ついには責任を感じた神田さんが「出るのをやめる」とまで言い出してしまい場に緊張感が走る。観ていて心が締め付けられる一幕があるわけですが、しかし同時に変な言い方になるんですが、なんとも言えない面白さも醸し出されている。

 面白いというのは笑えるという意味ではなくてですね、なんというかあの場で、3人それぞれの人間味というものが凄く出ているんですよ。

 例えば神田さんなんですが、正直あそこでやめると言い出す事自体は間違っているしダメなんですけど、男として気持ちは非常によく理解できる。

 まずこれは僕の個人的なイメージなのですが、やっぱ男って女性に比べてデリカシーないじゃないですか(笑)もちろん人それぞれではあるんですが、例えば子供の頃女の子を意図せず泣かせてしまった経験ってあると思うんですよね。

 こちらは冗談だと思ってからかって、女の子が笑ってくれるから通じてるんだと調子にのってからかいまくってたらいきなり女の子が泣き出しちゃって。そこで初めて「傷つけてしまった」という事実に気付いて落ち込んでしまう…という、男ってのはまことに阿呆な生き物なんですが(笑)その分だけ「傷つけてしまった」という思いが重くのし掛かってしまう。

 特に神田さんなんかは過去に似たような事で炎上もされていますし、自分の性格が災いしてしまう経験をこれまで何度もされていらっしゃると思うんですが、それでもその性格は直しようがないんですよね。僕も同じなので非常にわかります。

 人間、自分の性格に一生苦しめられるものなんですよ。カルマみたいなもんでどうあっても逃れられない。それが重々わかっているからこそ神田さんは瀬戸さんを泣かせてしまったという事実に傷付き、出場を辞退しようというところまで自分を追い詰めてしまったわけです。

 個人的にはさっきも書いたようにプロでありながら出場をやめると言ってしまった事に関してはもちろんダメですが、彼があそこで開き直らなかった事に関しては評価されて良いと思うんですよね。

 自分がしてしまった事を正面から受け止め、ちゃんと自己否定したからこそ「やめる」という選択に至ったわけですし、逃げではあるけどもしかしそれも思い止まった。

 相手の気持ちを慮れずに煽ってしまったり、少々短絡的なところもある方ではあると思うのですが、そういう部分が非常に人間らしくて僕は好きですね。

 同時に瀬戸さんの気持ちもよくわかるというか、僕は男なので完全に理解できていないかもしれませんが、なんというか非常に女性らしい方だと思ってるんです。

 彼女の配信を時々観させていただいているのですが、にじさんじの中でもかなり思慮深い方なんじゃないかと思ってまして。

 例えばこの配信とか好きなんですが。


 瀬戸さんって、かなりリスナーの目線に合わせて話してくれている印象で、包み込んでくれるわけではないですがちゃんと相手の気持ちを考えてくれる。だからこそ相手に考えなしの言葉を吐かれてしまった時に人よりも傷付いてしまうんじゃないかなと思うんです。

 でないとあそこで泣いてしまうほどに傷付かないと思うんですよね。神田さんが自分の感性以上の事を考えられないのと同じように、瀬戸さんも自分の感受性が普通のレベルであると心のどこかで思ってしまっている。でおそらくメンタルもそこまでお強くはないのでしょう。気持ちが張り詰めていた時に神田さんの冗談を受け止めきる事ができず、泣いてしまったわけです。

 その行動に関して悪い見方もできなくはないですが、個人的にはそうは思わないんですよね。

 人間、そこまで強くはないんですよ。正確には、強くなくて当たり前なんですよね。人は往々にして自分の感受性がすべてだと考えてしまいがちなのですが、それも間違ってはいませんが世の中には自分より感受性の高い人がいて、感受性の高い人ほど傷付いてしまいやすいという事は知っておいた方が良いとも思います。

 そして僕があの場で一番感激したのはなんと言っても桜さんですよ。彼女は本当に素晴らしいと思いますね。

 まず世の中において物腰の柔らかい方、どんな時にも明るく振る舞える方は人間として強いです。よほど人間性が成熟していないとできない行動ですし、決して空気が読めないわけではなく、むしろちゃんと読めるからこそできるわけです。

 明るく振る舞えるだけではなく、神田さんが「やめる」と言い出した後には真面目になれるところも凄いです。しかも過剰に口出しせず、どちらも強く責める事もせず、自分の気持ちを出す時は出す。

 話し合いの最中、神田さんに「このチームじゃない方が良かったって事?」と問う場面がありますが、あそこ彼女の強い気持ちが垣間見えて心震えちゃうんですよね。彼女はVtuberのプロフェッショナルとして、例え思うところがあってもここまでチームをまとめあげてきた。時には自分で自分を卑下するようにしたり、道化っぽくしてみせたりして和ませてきたわけです。

 ところがあの一瞬、彼女は「自分の言葉」で神田さんに問うた。もちろんこれまでが嘘の言葉だったというわけではありませんが、あの一瞬だけ彼女は桜凛月というキャラクターと"彼女"を同居させた。

 桜さんって元々個人勢としてやられていたそうで、SEEDsに個人勢のキャラのまま入ってきた特殊な方なんですよ。おそらく相応の苦労もあったとは思うんですがそれを尾首にも出さないじゃないですか。受肉前に何をやってきたとかいう話もほとんどしていないような気がします。本当にプロフェッショナルな方なんですよね。

 おそらく桜さんがいなければ神田さんはあのまま出場辞退していたでしょうし、もしかしたら炎上という形で広まっていたかもしれない。そういう意味でも彼女がいたからこそ大会初戦優勝という結果に繋がったんじゃないかと思います。

 大会初戦で優勝した時、一番泣いていたのは桜さんでした。「良かったじゃんこのチームで!」という言葉も胸に残りました。

 大会直前に喧嘩をした事でAPEXというゲームの大会が3人にとってゲームの枠組みを超え、そして優勝でそれぞれ感情を爆発させた。個人的には神田さんが勝った後一度大きく溜め息をついた瞬間に泣きそうになっちゃいましたね。

 あの時、神田さんは自分の事を少しだけ許せたんですよ。アニメ映画『聲の形』で最後石田将也が泣くシーンがあるじゃないですか。将也は子供の頃ヒロインの耳が聞こえない女の子をいじめていて、しかしそのいじめが表面化した事で今度は自分がいじめられるんですが、他人以上に将也はずっと自分自身を責め続けてきたんですね。

 それが最後になって、ヒロインの硝子や他の友達と本当に意思の疎通ができた時、塞いでいた心が解放されて他人の顔がちゃんと見れるようになり、声も聞こえるようになる。

 映画は将也が号泣するシーンで終わるのですが、要するにそこで将也は硝子をいじめていた自分自身を少し許せたんですよね。形は違えど神田さんも同じで、瀬戸さんを泣かせてしまった自分、やめると言ってしまった自分をみんなと協力して勝利を得たという形で許した。

 だからこそあんなに大きな溜め息を一度吐いたんだと、そう思うんです。

 その瞬間、僕はRPのその先を観たような感覚を受けました。

 大事なのは神田さんも瀬戸さんも桜さんも、みんなキグルミを脱いでいないという事なんです。Vtuberを観ていると時々こういう瞬間に出くわしまして、とても感動してしまう。

 noteでも何度か触れてるんですが雨森小夜さんの去年の新衣装配信なんかもそうだったじゃないですか。彼女はあそこで作品という形で久遠千歳さんとの友情を見せてくれた。仕事上の関係なら普通そこまでしないんすよ。

 あと舞元啓介さんが「こんな配信がしたかった…」と男泣きしたり、存在自体で言えばかえみととかもそうですよね。月ノ美兎さんと樋口楓さんが仕事上の"てぇてぇ"から本当の親友というか盟友になった事で今日のにじさんじがあると感じますし、Vtuberという二次元の存在とその中の魂の融合だと思うんです。

 Vtuberというキグルミを脱がず、人間味を垣間見せてくれる瞬間。

 僕はこれを感じるためにVtuberファンをやっているんだと、今回強く感じましたね。

 以上で終了となります。良ければ切り抜きだけでなく、アーカイブでも観てみてください。喧嘩中のコメント欄とか凄く緊張感ありますし、それぞれの方がそれぞれの思いでコメントを書いているのがわかってとても良いですよ。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。それではまた。




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